行事の前に
朝目覚めるとカーテンの隙間から光が差していた。
菖蒲は携帯の時刻を確認した。
「まだ6時か。」
モーニングティを入れ、パンを焼いた。
今日は学校全体でお花見という行事がある。
校庭に咲く桜と花壇を囲みみんなで交流をはかる。
クラスの垣根を越えて交流出来るようと作られた行事らしいが、緑ヶ丘学園ではほとんどが顔見知り。
「授業が嫌なだけなんじゃ?」
菖蒲は呟いて、そして呆れたように笑った。
そんなこと考えても意味ないや。
「さて。何着て行こうかな。」
その時着信音が鳴った。
「もしもし?大神くん、どうしたの?」
『おはようございます。加護さん、今大丈夫ですか?』
「はい、一人ですよ。大神くんは?」
『こちらも1人です』
「そう。で、どうしたの?麓。」
『なにか不穏な予感がしたのです。菖蒲はどうです?』
「…朝は特に…。なにかあった?」
『いえ、菖蒲がなにもないと言うならそうなのでしょう。ところで今日は何着ていく?』
「麓……本当の要件はそれね…?」
『バレました?この間買った水色のワンピースにして下さいね。はやりそういった楽しみも必要です。』
「なにそれ。わかったわ。」
『では頼みました。また』
麓との電話を切り、菖蒲は水色のワンピースに色のカーディガンを羽織った。
そして部屋を出て隣の部屋のドアをノックした。
「はあい。」
中から琥珀が出てきた。
「あれ?菖蒲ちゃん、どうしたの?」
「おはよう琥珀ちゃん。今日のお花見、行くでしょう?」
菖蒲は琥珀に手招きされて部屋に入った。
「それがねー。」
琥珀は指差した。
その先には布団から大きくはみ出し、片足がベッドから落ちた遥の姿。
「あら。遥ちゃん、また寝坊?」
「そう。起きないかもと思ってさ。」
「遥ちゃんを起こすには…あれ………しかないね。」
「ごめんねー菖蒲ちゃん。私は着替えるわ。」
「了解。」
琥珀は洗面所へ消え、菖蒲は台所へ向かった。
「おっおっおいっ!まずいんじゃねーか?」
牙は小さな声で言った。
「大丈夫!俺に任せるべし。」
のぼるが牙へ向けウィンクをした。
二人は廊下を人目を避けながらコソコソと歩く。
男女寮の間にある通路は鍵が掛かっている。
「これをこうやって。ちょいちょーいとな。」
これを2秒。
カチリ
「げ。開いた!」
シッとのぼるは指を立てた。
そしてニヤッと笑う。
二人は女子寮への進入して行った。