変人の集い。
牙が寮に帰り部屋を開けると、そこにはのぼるがいた。
「あ、おかえりー。」
笑顔で出迎えるのぼる。
「なっ。」
俺の方が先に出たのになんでこいつが先に帰ってんだ???
奇妙だこいつ。なんか信用できねー。へらへらしやがって。
「警戒してる?」
のぼるはまっすぐと牙を見た。
「俺は警戒してるよ。この学園はなにか変だ。」
のぼるは周りを見渡している。
「……。」
牙はなにも言わない。この学園が奇妙なのはわかっていた。
ここの生徒は変わったやつが多い。
そして隔離されている。この緑ヶ丘学園は外から詮索することは出来ない。場所がはっきりしない。
在籍するもののみが辿り着ける場所。
けれど有名な場所。
「お前、なんでここにきた?」
牙はのぼるに問いかけた。
「来たわけぢゃないんよ。出れなかったんよ。」
「はぁ?」
「俺は親からこの学園の存在を聞いてた。ぼんやりとな。んで、数日前になぜかここの敷地にたどり着いてたわけ。見渡す限り建物は此処だけ。だから鍵開けて窓から入ってみたんよ。そのあといろいろほっつき歩いてたら校長室らしきとこにたどり着いて転入が決まってたわけ。」
のぼるは両手のひらを上に向け、困った顔をした。
「……」
牙をのぼる見たまま突っ立っていた。
そして時計を見た。
「22時になる!」
牙がそういうのと同時に地面が小刻みに揺れ始めた。
「な?なんだ?」
のぼるは周りを見渡す。
「こい!」
牙はのぼるの手を引いて隣の部屋に駆け込んだ。
「牙、そちらさんは?」
部屋の主が声をかけた。やけに冷静だ。
「こいつは今日からルームメイト。のぼるだ。
んで、こっちは大神麓。俺の知り合いだ。」
牙は部屋の真ん中に座った。
「のぼる、お座りなさい。時期におさまります。」
麓は生徒会長であり、初等部の頃からこの学園に通っている。
2年A組に在籍している。
のぼるはひとまず座った。
麓はコーヒーを三人分運んできてそれぞれの前に起き、一口飲んだ。
「驚かれたでしょう。この揺れは研究室か魔女の部屋からだと思われますよ。」
「……えっと…?」
のぼるの頭上には疑問符が浮かぶ。
「我が学園はなにをするにも自由。なにをしても許される。研究室や魔女の部屋では様々な実験が施されています。そしてその二つの派閥はそれぞれ対立している。」
麓はもう一口コーヒーを飲んだ。
「研究室では2年B組に在籍している桐島瑞樹さんが、それはそれはよくわからない研究をされているらしいのですが、決まって22時に奇妙なことが起こるのですよ。それは彼女が転入し、研究室を作った年から始まったこと。恐らく魔女の部屋ではなく研究室によるもとだと僕は考えます。」
牙は黙って聞いていた。牙も同様に、転入してきた際に、昔馴染みであった麓に聞いた内容だ。
「そして魔女の部屋。ここは山本レモンという幼き少女が作った部屋。彼女はまだ初等部3年で詳しいことは分かっていないのです。しかし今の所不穏な動きは見られていないでしょう。」
のぼるはもはや理解するのを諦めた。とにかく変人の巣、ということで理解した方が良さそうだと判断したのだ。
「さて、そろそろおさまりましたね。」
麓は揺れの止まったことを確認し、彼らに言った。
「まぁこれからも奇妙なことは起こります。いちいち全力で対処しないと、死ぬかもしれませんね。」