結婚生活半年目から一年半あたり
新居は新築の一軒家を賃貸しました。引っ越しが決まってから荷物を運び入れるまでの二週間ぐらいの間、新居に行くたび真新しい畳にカビがはえています。僕はいくたびに雑巾で拭いていました。そんな僕を見て家内が言いました。「どうせまたカビがはえるんだから入居するまでほっとけばいいじゃない」。あっそうですか。じゃあそうしましょう。という事でその通りにしたら入居時にはカビがはえすぎていて、いくら拭いても落ちなくなっていました。この家には一年ぐらい住んで引っ越したんだけど、汚れの落ちない畳代はきっちり請求されました。
真新しい家の真新しいキッチン。コンロと壁の距離は近いというのに、コンロの下にも横にも汚れ防止のアルミをおかずに油物を料理しはじめました。あわてて止めて、アルミを設置するように言うと、「私は引っ越しした事なんかないんだからそんな事わかる訳ないじゃない」と怒りだします。とにかく意見されるのが厭なようです。
キッチンの隣の部屋にパソコンを置いていました。パソコンで作業する時にキッチンが騒々しかったのでふすまをしめて作業していると、「私に見られて困る事でもあるの」と怒りだしました。「別にないよ。うるさいから閉めただけだよ」と言っても怒りがおさまりません。「私が料理してる時にパソコンしてるってどういう事?」と言って怒り心頭です。怒る意味がわかりません。
ずっと実家住まいで家事全般やってこなかったので、料理や掃除といった当たり前の事が家内には大変な労働になるようです。
トイレで大を済ませた後、換気扇もまわさず、個室も閉め切っていたので僕が入る時に匂いがきつかったです(窓は隣の家の玄関近くだったので閉め切ったままです)。家内に換気扇をまわすなり戸を少し開けておくなりするよう言うと怒りだしました。換気扇をまわしておくなんてお金の無駄遣いじゃない。戸を開けっ放しにするようなだらしのない事はしたくないの。
とにかく何か注意されるのが厭なようです。
玄関先を掃除するほうきと塵取りが、門の内側に置いていたのに、隣の家の玄関先にある。盗まれた!と怒りだす。ちなみに百円均一で買ってきたような安っぽい代物。僕が「そんな事するわけないだろ。隣の家の人に聞いてみろよ」と何度言っても、「安物だからいい。でもなんでそんな事するんだろ」とずっと怒っている。
しょうがないので僕が隣の家の婆さんの所に行って「すみません、この箒と塵取りうちのだと思うんですけど」と言ったら、「ああ、それ犬が咥えてきたからそこに置いておいたの」という返事。「じゃあ持って帰りますね」と言って持って帰ってきた。
万事そんな感じ。自分に都合が悪いように解釈して一人で怒っている。
冬場、部屋でストーブにあたってテレビを見ていると隣のキッチンで料理をしていた家内が怒りだす。「私が寒いなか料理してるのに、ストーブにあたってるってどういう事よ」
家内はすでに仕事を辞めて専業主婦をしています。なんなんでしょうこの態度。
忘れ物をして仕事中に何度かお家に帰った事があるけど、家内の昼寝している率は100%でした。
家内は毎日よるの九時に寝て朝の七時前に起きる生活です。僕は夜の十二時に寝て朝六時に起きる生活です。相変わらず料理のレパートリーは少ないです。
初めての正月。別におせち料理は作らなくていいけど、一品でいいからおいしいものを作ってくれとお願いしました。
元旦、僕はいつもどおり朝の六時に起きました。寝たのは夜中の二時ぐらいだったけど今日は元日だし、二度寝するつもりはありません。しかし家内はなかなか起きてきません。昨日は除夜の鐘がなる前に寝たというのに。
ようやく起きてきたのは九時過ぎでした。僕はおもしろくありませんでしたが元日そうそう怒りたくもなかったので、我慢して料理が出てくるのを待ちました。起きてから三時間は経っているのでお腹がすいてます。それで出てきた料理がご飯にベーコンエッグだけ。
はあ?と思ったけどお腹がすいてたのでとりあえず食べました。食べ終えてから文句を言いました。一品でいいからおいしいものを入れてって言っただろ。すると、それは夜ごはんの話だと思ったという返事でした。
一年の計は元旦にありって言葉を知ってるか?と聞くと、知っていると答える。元旦というのは元日の日が昇った後、すなわち午前中の事だぞ、と言うと知らなかったという。そういう家庭で育ったのかというとそうでもない。家内の実家では元旦におせち料理が出てきていた。(去年の正月は家内の実家で過ごしたので間違いない)
正月そうそう怒られたとふくれる家内は、夜ごはんにスーパーで買ってきたおさしみセットをそのまま食卓にだしました。家内はキッチンで何かを食べ、俺はテレビを見ながらおさしみだけを食べた元日の夕食でした。
家にはクローゼットが二か所あり、そこそこ広いです。ハンガーが五十本ぐらいかけてあります。ただ僕にあてがわれたハンガーは三本だけで、上着が三枚ぐらい重ねて吊るされています。片や家内の分は、上着のみならずTシャツまでもがすべてハンガーにかかってます。その事を指摘すると、自分の分は収納箪笥がないからと反論します。そんなもの買えばいいだろうに。千円ぐらいで売ってるんだし。なんなんでしょうこの女は。
仕事が忙しい時期、僕は毎日よるの十一時すぎにおうちに帰ってました。そんな時に家内の友達が東京から遊びにきました。僕が仕事をしている夜の八時頃に電話があり、友達がどうしても僕の顔を見たいから居酒屋に来てくれというのです。本当に忙しいから顔を見せたらすぐ帰るよと言うと、それでいいからと言うので居酒屋に顔見せに行きました。で、挨拶だけしてすぐに仕事に戻ったんだけど、それから一時間後ぐらいにまた電話があり、今日は友達が泊まってるホテルに一緒に泊まるからという事でした。僕が、うん、わかった、と返事をすると、浮かれた調子で友達との話をキャッキャッキャッキャ話し始めました。仕事が忙しくてピリピリしていたので、忙しいから切るよ、と言って切りました。人が忙しく働いているんだから気をきかせばいいのに。
次の日は土曜日だったんだけど、いつも通り仕事に行きました。明日の日曜日も仕事なので今日は早く帰ろうと思い、夜の八時には家に帰りつき、九時過ぎには床に入りました。僕が寝入ってから一時間もしないぐらいにガソゴソする音で目が覚める。なんだろうと家内の所にいってみると掃除をしていました。さすがにブチ切れて、東京に帰れ!と言いました。寝入りばなを起こされたので、結局その日も寝たのは日付が変わった後でした。
トイレをウォッシュレットにしようと提案したら、掃除が面倒、と却下されました。
テレビを観ては、タレントやらニュースやらに文句ばかり言っています。どうやら天性の不平家のようです。
病院で初対面の老医師が僕を見るなり言いました。
「ご主人、甘やかしすぎですな」
僕は苦笑するしかなかったです。
引っ越す事になりました。
日曜日、僕が昼寝をしていると家内が怒りだす。私が引っ越しの荷づくりをしている時に昼寝するってどういう神経してんのよ、と。
僕が「じゃあ俺が仕事をしている時、役所で平身低頭しながらも仕事をしている時に、毎日昼寝をしているおまえの言い訳はどうなるんだ」と聞き返すと黙りこむ。




