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なんて言ったんだ、こいつは?

そう思ったが、奴の言葉ははっきりと耳に残っていた。


これは小説?

だとすれば、俺はただの登場人物?


「察しがいいじゃない。って言ってもそう君が思うようにしているのも僕がそう書いてるだけなんだけどね。」


嘲笑混じりに声が語りかける。

可菜美、3億円。

奴はそれを夢だと言った。

俺はそれを現実だと言った。

これが小説ならそれは間違っていないのかもしれない。

いくら俺が現実に感じようが、これが奴の作った虚構に過ぎないのであれば、これは唯の夢幻と同じだ。


「君、今の段階で小学校の記憶とかある?」


頭を巡らせる。

今の俺は大学生。

生きて人生を駆け抜けてきたなら、あるはずの記憶。

なのに…。


「何も…思い出せない。」


いや、違う。


「思い出せないじゃなくて、思い出にないだろ。」


忘れているなんてものではない。

そっくりそのままないのだ。

ぽっかりとその部分だけ消失したかのように。


「まあ今書き足してあげてもいいんだけど、面倒だし、いらないよね?」


軽い調子でそう言われてももう腹も立たない。

それも奴の制御通りなのか。

あんなにさっきまでは不満やらで一杯だったはずなのに、そんな感情すら消え失せている。


「こういう作者と登場人物が直に喋るような感じ。やってみたかったんだよね。」


なんだったんだ一体。

可菜美と出会った時に運命を感じ、最高の幸せを手に入れたと喜んだ。

3億円という大金を得て、恐ろしい程の充足感に満ち溢れた。

自分で生きていると思っていたのに。

俺は、一切自分で生きていなかった。


「斬新な設定のつもりか。使い古されてるんじゃないか、こういうパターンって。」


「知らないよ。やってみたかっただけなんだから。」


なんともシンプルな意見だ。


「ただねー…。」


声のトーンが少し落ちた。どこか腑に落ちていないといったような声色。


「なんかうまくいってない気がするんだよね。」


「そんな訳ないだろ。お前の物語なんだから、俺との会話に不自由があるわけないだろ。」


「それがそうじゃないんだ。君初めいろいろ聞いてきたでしょ。確かに設定上、君が自分の置かれた身について僕にいろいろと尋ねるっていうのは自然な流れだし、僕だってそう書いたつもりなんだ。でも、君めちゃくちゃくうるさかったじゃん。」


「悪かったな。っていうかお前のせいだろそれは。」


「違うんだよ。だって君が意味意味うるさく言ってた時、本当にいらついたんだから。」


思い返せば、確かにだいぶ鬱陶しがっていた。

それに、こんな事も言っていたな。

”もっとましなのにすりゃ良かったかな。”


「僕の物語のくせに、作者の僕を本気でいらつかせるなんておかしいよ。」


「そんな事俺に言われても困る。」


「まあそうなんだけどさ…なんでだろ。」







そりゃそうだろ。



「え?」「何?」



所詮お前ら二人とも、俺の手の中の駒にすぎないんだ。



「誰だ?」「どういう事?」



面倒だ。終わりにしよう。



「終わり?」「終わり?」




私はキーボードを打つ手を止めた。

この物語が、これ以上続かないように。

もっといい物語を書かなければ。

そしてそのまま、私は立ち上げた文書プログラムをゴミ箱へと投げ捨てた。


読了ありがとうございました。

結構禁じ手なオチかなと思ったんですが、書き上げてみたら今の自分の心境がもろに出た感じになって、やっぱり今書くべきものを書いたんだなーって感じです。


自分なんかは作中で平気で登場人物にひどい事をしたりとあまり出てくる人物に感情移入しないタイプなんで、彼らだっていろいろ思ってることあるかなってのと、ラストはホンマにただただ自分の現状という笑


まあ、こんなんもありでしょ。

嫌いな人多い気するけど笑

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