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(2)

朝日が射し込んでくる。

自分の真横から聞き慣れない寝息が聞こえる。

だらしなく開いた口元が気にはなるが、平和な寝顔である事は間違いない。

こう見るとやはりかわいい。どストライクだ。


嘘みたいな、夢のような一瞬。


運命という魔法は時間も何もかもをすっ飛ばして、二人の仲をぎっちりと縛り上げ、容易には離れられないものへと変えてしまった。


こんな事があるなんてな。

謙三はそっと彼女の柔らかい髪をなでた。

こうなった今もまだ夢の中にいるような浮遊感が拭えないが、確かに伝わる手の感触がそれを現実だと教えてくれる。


「最高。」


昨日の夜の事を思い出す。

あの後可菜美と謙三の部屋に上がり、晩酌を交わした。

たまたま酒を購入した後で良かった。

彼女は聞き上手でもあり、話し上手でもあった。

彼女のきれいにまとまった話は面白かったし、また自分が話しすぎないように適度にこちらにも話を振り、謙三のくだらない話にも不自然さを感じさせない絶妙な相槌や合いの手で、気付けばながながと話してしまってこちらが苦笑したり。

非常に心地の良いものだった。そしてそのまま何の戸惑いもなく男女の仲へと踏み込んでいった。

自分からだったのか、彼女からだったのかもよく分からない。

それほどまでに自然の成り行きであり、その時も変に興奮はなく、むしろ落ち着き払っていた。

終始流れていたのは、こんな事もあるんだなというどこか他人事めいた感情でもあり、これが自分の運命なのにどこかぴんときていない、そんな感じだった。


そんな時、ふと思い出した。

今日は宝くじの結果発表の日だ。


たまに謙三は気が向いたときに宝くじを買っていた。

別にこれで一攫千金を狙ってどうこうは思っていない。元より当てる気なんてさらさらないのだが、ちょっとした人生の楽しみというか、スパイス程度に買っている程度のものだった。

これまでで一番高額の当選で確か1万円だったと記憶している。

十分すぎる結果だ。


机の上に放り投げていた新聞を手に取る。

期待などしていない。いつも通り、あー駄目だったなとそう思えればそれでいい。

そう思いながらも神棚よろしく棚の一番上にくじを置いているのはちょっとでも天運をもらえるようにという願いが入っている部分もあり、結局は大金がもらえるならそれに越したことはないといういやらしさじみた想いがあるのだなとその度に意識させられ、なんだか情けない気持ちになる。


購入したのは10枚。

取り出して新聞に書かれた文字の羅列とそれとを見比べていく。

1枚、2枚。

当然のように外れていく。かすりもしていないと思わず笑ってしまいそうになる。

当たる訳がない。

特に今の謙三にとってその気持ちはより強かった。

運命的な女性と出会いそれを手に入れるという類まれない幸運を掴んでしまったのだ。

こんな紙切れに注がれる運など自分の体に残っているはずがないのだ。


「ん?」


6枚目。謙三の目が止まった。

この数列。似ているぞ。

しかもそれは300円や1000円なんて低額なものではない。

1等だ。

待て待て。まさか、くるのか?

慎重に数字を確認していく。

組はまず合っている。

番号も一緒のような気がする。

ゆっくりゆっくり。

番号に指を添えながら照合していく。


「…。」


残っていたのだ。

使い果たしてしまったのではない。

使い始めただけなのだ。

とんでもない自分の中に眠る幸運とやらを。


「3億…。」


俺の人生、始まったな。


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