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義雪伝  作者: 戦国さん
第一章 忍と若武者
6/22

家族だから

戦国時代って難しいですよね、なんでこのジャンルにしたのか(笑)

資料とか資料とか資料とか。

今更ながら悔やんでます(ToT)

そこで行われているのは模擬戦。

模擬戦とは実戦を擬似的に再現して行われる軍事訓練である。

ある程度の怪我人は出る訓練ではあるが、危険性はさほど高くなく、普通なら打撲や打ち身程度で終わる訓練なのだ。

まあ、訓練で死人や重傷人が毎度出ては士気も下がる上、いきなりその後戦になった場合戦えなくなるわけだ。

故に模擬戦はある程度まで本気でやるが、決して死ぬ気でやるものではない。

しかしそこで行われてる模擬戦は違った。

兵たちの目は血走り、本気でやり合い、辺りには倒れ込むあからさまに重傷であろう者達が転がっている。

もちろんその持つ獲物の刃の部分は布で被われ殺傷能力を無くした物ではあるわけだが、それ以外は死ぬ気で行われてる本来有り得ない模擬戦であった。

(もう嫌じゃ、こんな地獄絵図な軍事訓練)

義雪、宗茂両人が本気で前線でやり合っている最中、義貞は後方で両軍の負傷者の回収、それの手当てを担当していた。

義雪の備には義貞が提案し指揮する治療専門の部隊が存在する。

最低限しか持たず、その装備のほとんどが治療用の布やら薬やらである。

そして一人一人が直に城下の医者に師事し、ちゃんとした専門知識をある程度身につけているのだ。

一応彼らが迅速な措置をしている為、こんな状態でも死人だけは毎度でないわけだ。

無論それだけではなく、両備の者達自身の頑丈さ、そして何だかんだ言って急所に当たらないように回避している身体能力やしぶとさも大きな要因ではある。

「義貞様、新たに五名追加です」

「あいわかった、ここに運べ。わしが治療をする。あと、治療終わった者の中で特に重傷な者を城下の先生の所に連れていくんじゃ」

「御意」

(毎度ながらやりすぎじゃ、すこしは加減せんか。まったくきりがないわい)

処置しても処置しても増え続ける怪我人を見て、加減を知らない兄と若様に殺意すら芽生える義貞であった。


一方その頃加減を知らない兄と若様は、戦場の中心で切り結んでいた。

「やるな、獣志郎。その腕鈍ってはいないようだ」

義雪に目掛けて連続で槍を突き出す宗茂。

しかしそれを義雪はすべて回避する。

「弥七郎こそ相変わらずの槍の冴え。見事じゃ」

義雪は回避したあとすかさず短く槍を持ち直して、渾身の一撃を加えようと宗茂の懐深くに接近した。

しかしそれも、紙一重の所でかわされ大きく距離をとられてしまう。

「ふう、危ない危ない。危うく手痛い一撃を食らうところだったわ」

腹をさすりひやひやしたと語る宗茂。その顔はまだまだ余裕だ。

「少し踏み込みが甘かったか。次は逃がさん」

義雪は短く持った槍を再び普通に持ち直して構える。その顔もまだまだ余裕である。

「次があるかな?」

「笑止」

同時に飛び込む二人。二人はお互いをその射程に相手を捉えると、これでもかと言わんばかりに己が得物を無数に繰り出す。

刹那の間に交わされる攻防。

合わさる刃に飛び散る火花。

二人の猛者の放つ気迫と闘志は凄まじく、周りの兵達もそれに感化され勢いを増していった。

猛者が放つ気迫、闘志、その存在その物が兵たち男としての本能を刺激し、士気を上げているのである。

こうなってはもう、お互いに動けなくなるまで戦いは終わらない。

「弥七郎ぉぉぉぉ!!」

「獣志郎ぉぉぉぉ!!」

二人の絶叫とそれに感化された兵たちの熱気。

模擬戦は今回も激しさを増していく。

彼らが動けなくなり、大人しくなるのは今は頭上にある太陽が、殆ど沈んだ頃であった。

その場にいる全員が大の字で寝そべり、満足げに若干星が見え始めている空を眺めている。

「満足しましたか?」

義貞はその中央で並んで倒れるぼろぼろな馬鹿二人の近くに立ち、呆れた顔で見下ろす。

「無論」

「勿論」

「「満足だ」」

とても清々しいすっきりした顔で二人は答えた。

(まったく、困った馬鹿共じゃ)

義貞はため息を吐くと、指一本動かせない二人の馬鹿をとりあえず治療する。

義貞はその後、歩くこともままならない兄を担いで帰ったという。

そして帰った満身創痍の義雪と疲れ果てた義貞を見た菊奈は何事かと、目を見開き驚いたのだった。


そして夜。

辺りは真っ暗で寝静まっている。

そんな中、昼間の訓練で動けない義雪の上に覆い被さる影があった。

「菊奈か」

「…」

窓から射す月明かりがお互いの顔を照らす。

義雪はその真っ直ぐな瞳で菊奈を見つめ、菊奈は無機質な瞳で義雪を見つめる。

「何か用か?」

「痛みは無い、すぐ終わる」

「術にでもかけるつもりか?」

「…」

義雪の言葉に苦しそうな顔を浮かべる菊奈。

彼女は迷っていた。

妹たちは救いたい。しかし、義雪を術を施し道雪の首を取らせる事はそれ即ち義雪の死を意味する事になる。

けして長くはないが共に日々を過ごした事により義雪達に情が生まれていたのだ。

更に義雪に至ってはもっと強い感情、愛情という感情が芽生えていた。

「好きにせえ」

「!」

悩み苦しむ菊奈に暖かい笑みを浮かべる義雪。

「わしはこの通り今はなんも出来んし、何より」

「何より?」

「わしは家族を信じる」

「…」

「お前とはあまり長いとは言えないが共に釜の飯を食べ、寝床を共にした。もう立派な家族だとわしは思っとる」

まだあまり動かない腕を震わせながら動かし、その手を菊奈の頭に乗せ、ぎこちなく撫でる。

「だから菊奈がわしに術をかけ、何かやらそうとし、例えそれで死ぬ事となっても、わしは後悔はせん。家族の為に死ねるならば本望だ」

義雪はにかっと菊奈に笑いかけた。

「…」

静寂が二人を包み、少しの間の沈黙が訪れる。

そんな中、突如、菊奈は義雪の胸に顔を埋めた。

「泣いておるのか?」

「…」

「やれやれ、着物が濡れて涼しい限りだな」

義雪は優しくその頭を撫でた。そして再び沈黙の時が流れる。

そして、菊奈は口を開いた。

「あなたは優しい、そして残酷」

「…」

「私はあなたを殺せない」

「そうか」

「それでも私は妹たちを見捨てる事はできない」

「ならばどうする?」

「出来るかわからないけど、自分でなんとか助け出す」

「ならば手伝おう」

「!」

「驚くことでもあるまい、家族だろ?」

「…ありがとう」

「おう、まかせ…」

義雪は突然激しい眠気に襲われる。

「な…にをした?」

「『家族』だから」

歪む視界、薄れゆく意識。

「あなたを巻き込むことは出来ない」

(この…阿呆が)

義雪は、そのまま深い眠りに落ちる。

その時無機質だった菊奈の瞳は何時もの無表情ながらも年頃の娘の優しい瞳となっていた。


翌朝、義雪が目を覚ますとそこには菊奈の姿はなく、ただ一つ畳まれた彼女の布団の上に置き手紙があった。

内容は、自分が居なくなる事によりかける迷惑の事と、迎恵と約束していた山菜採りにいけない事への謝罪そして、菊奈に命令を出したのが志賀親守だと言うこと、そして妹たちを人質に取られてる事が書かれていた。

そして最後に『本当の家族のようだった。暖かかった。ありがとう』と一筆したためてあった。

「あの阿呆め!」

義雪は怒りのあまり手紙を握りしめ唇を噛む。

「…兄者」

それを義貞は複雑な顔で見ている。

「家族だから苦楽は共に過ごし、家族だからこそ共に乗り越えるのではないのか!あの…戯けが!!」

まだ回復していない体で床を殴る義雪。

その気持ちがわかる義貞は何も言えずにいた。

そして突然義雪は立ち上がり、具足を付け始めた。

「左平、お前は志賀殿の件を殿に伝えてくれ」

「心得た、しかし兄者は?」

「わしはこれから菊奈を追う」

「なんと!?正気か?菊奈が向かったのは恐らく的中ぞ」

まだ満足に動かない体の義雪を必死に止める義貞。

「家出娘を迎えに行くのは家長たるわしの務めだ。後はよろしく頼んだぞ!」

「ちょっ、兄者!」

義貞の制止を振り切り義雪は具足に身を包み愛槍を携えて飛び出してしまった。

「くっ、ええい!とにかく殿に報告せねば!兄者、早まった真似はするんじゃないぞ」

義貞も急いで着替え、城に向かうのであった。


前回外伝書こうかどうかと悩んでましたが結論、模擬戦内容出しつつ、話進めたらいいのでは?と考えついた限りです。

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