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義雪伝  作者: 戦国さん
第二章 若き鷹、大空に羽ばたく
21/22

野太刀の灯と槍の獣志郎

本当に最近の気候はおかしい。

何がおかしいって暑かったり寒かったり……もー、泣けてきますよ(泣)

こいつは気をつけないと風邪引きそうだ(笑)

「良いですか、誰も手を出してはなりませんよ!」

「ぎょ、御意」

灯は部下達に手を出さぬように言い聞かせ一人前へ出る。

その得物は自らの身の丈はあるであろう野太刀だ。

灯はその大きな太刀を軽く準備運動称して振るう。

それにはその場にいる全員が目を見開いて驚いていた。

「面妖な…あの細腕のどこにあの大太刀を振るう力があるのか、実に面白いし興味深いな」

「全然面白くもないですし、興味もありません」

その可憐な見た目と反する強力に目を輝かせながら相手を見る義雪を菊奈は半ば呆れたように見ていた。

「ふふ、仕方なかろう。一武人として猛者を目の前にしたら心躍ってしまうものだ」

「しかし、もし獣志郎様に何かあったら…」

「わしが後れをとると思うか?」

義雪は菊奈の瞳をその両眼で見つめる。

その瞳は相変わらずの透き通った綺麗なもので、尚且つ力強いものである。

(……この眼は卑怯です)

正直菊奈はこの瞳に弱かった。

この力強くも美しい両眼に見つめられてはそれ以上にものを言えなくなってしまうのだ。

「………思いません」

「そうか、ならばそこで安心して見ているが良い。なに、すぐに終わらせてくる」

義雪は己も軽く腕を伸ばしたりして準備運動を済ませると、自らも前に出て槍を構える。

そして野太刀を構え睨みつける灯に正面から対峙した。

その得物は一般的な素槍で灯の太刀よりも若干長い。義雪はそれを柄の中ほどを持ち、構えた。

「待たせたな。いざ!」

「勝負!!」

先に動いたのは灯だ。中段に構えたその得物を勝負の一言と共に繰り出し義雪の喉元目掛けて突き出す。

その速さは常人では対処出来ないほどに早い。

「む、良い動きだ…しかし!!」

だが義雪はその素早い突きを少しの動作で軽々と回避してしまう。

「見事!しかしこれならばいかが致しますか!?」

それに対して灯は突いた太刀の刃を義雪がよけた方に向けそのままなぎ払う。

しかし義雪はそれすらも槍の柄の部分を巧みに使いその刃を逸らすことによってまたもや回避してしまった。

「……良い突きだ。その後のなぎ払いも申し分ない」

「……お褒めに預かり光栄です」

一旦距離を取り睨み合う二人。

息を呑む周りの菊奈を含む一同。

(…あの灯とかいう人、強い。突きもその後の払いも、達人の域だわ)

だがその菊奈が強いと感じた門又灯はというと、余裕の表情を浮かべているのではなく、寧ろ額に汗を浮かべながら焦っていた。

(ま、まさか今の突きからの横なぎ払いを対処するなんて……父上以外では初めてだわ)

彼女が先ほど繰り出した突きは一対一の戦いでは今まで破られた事がない自信の技であった。

父宗就にしか破られた事のない技。

それをこの目の前の男はいとも簡単に破って見せたのだ。

一瞬のやり取りではあったが灯は十二分に目の前の男の強さを感じていた。

(…この男、一筋縄ではいかない。どうしますか…)

「ふむ、では今度はこちらから行くとするかな」

「へ?」

これ又一瞬の出来事であった。

義雪がこちらから行くと声を発した直後、灯が中段に構えていたその太刀が豪快な音を立てて大きく払われる。

「な!?」

その速さは先ほどの灯の突きの速度をも上回るもので、太刀を払われた本人は只々驚きの声を上げるしか出来ずにいた。

しかし、義雪の行動はそれでは終わらない。

義雪は続いて開いた灯の胸元目掛けて疾風のような突きを繰り出す。

だがそこは灯も武勇を誇る侍。器用に手首を返して払われた太刀でなんとか胸元を守った。

「くっ!せるか!!」

その次の瞬間。

灯は豪快に尻餅を突きその場に仰向けに倒れ込んだ。

「え!?」

「……足元が疎かだぞ」

義雪は灯の喉元に槍の穂先を突きつける。

あまりに突然故に灯には何が起こったか直ぐには理解出来なかった。

「………一体何をしたのですか?」

「簡単な事だ。突きを囮にして足元を払った、ただそれだけだ」

「そんな!!足払いなんて全然……痛っ!」

足元に残る鈍い痛み。

目の前の男が言ってることが本当である事を物語っていた。

しかしもしそれが本当ならば自分にも見切れない程の速さでこの男は突きをする動作から足払いのをしたというのか?屈強と知られる瓢箪武者の中でもかなり強い部類に入る自分にそんな事をやってのけるとなんて、と灯は心底驚きを隠せないでいた。

「さて、勝負ありとお見受けするが…」

「殺せ」

灯に覚悟は出来ていた。

若い身空で死ぬのに未練がないと言えば嘘になるが、最後にこのような猛者と戦えて死ねるのだ、別段不思議と悲観的な気分ではなかった。

(……短い人生でしたが、なかなか充実した物でありました。父上、先逝く娘の不孝お許しください)

静かに瞳を閉じる灯。真っ暗な視界で只その身が貫かれるのを待った。

「待ってください!!」

灯の耳に突然少女の制止の声が聞こえてくる。

灯はその声に目をあけた。するとそこには先ほど義雪達と共にいた村娘が義雪と灯の間に割って灯を庇っていた。

「お願いします!どうか灯様を殺さねえでください!」

彼女は地面に頭を擦り付けながら義雪に灯の助命を願う。

「灯様はいつも私達を気遣ってくれるとても良いお方なんです。あだしはどうなっても構いません!灯様をどうかお救いください!!!」

彼女は必死に義雪の足に縋り付いた。

「な…下がりなさい!死にたいのですか!?」

「下がりません!!灯様はこんな所で死んで良いお方ではございません!!」

「……っ!」

少女は表情こそ恐怖に歪み瞳には涙すら浮かべていたが、その声からどう説得しようとも揺るがない信念のようなものを感じさせた。

灯は今の彼女に何を言おうとも動かすことは出来ない事を理解した。

「義雪殿、彼女は関係ない!どうか見逃してやってくれ!!」

「……」

尚も表情を崩さず只無言で槍を構えたままの義雪。

(もう駄目か!!)

灯は少女一人守れない今の自分の無力さを嘆いた。

と、その時である。急に義雪は槍を引き、それを地面に突き刺した後、地面に平伏す少女と灯に両の手を差し出したのだ。

「!?」

少女も灯もその行動に困惑する。

「手を貸そう、先ずは立ち上がれ」

何が何だかわからない状況であったがとりあえず義雪の手を取り立ち上がる灯と少女。

「………何の真似です?」

「何の真似も何も、その娘とそなたの願いを聞いたまでだが?」

「は?」

「武士として領民を傷つけ殺すことは出来んし、更にわし個人はそなたのような女子でしかも将来有望な武士を殺す事は望まん。…故に両方救う事にしたのだが……何か不服か?」

本当に何を聞いているんだと云わんばかりに疑問符を浮かべながら灯を見る義雪。

その義雪に見られている灯はというとこ奴は何を考えているんだと同じく疑問符を浮かべていた。

「…もし、私が義雪殿に手を取ると見せかけて娘ごと切りかかったらどうするつもりだったのですか?」

「その時は……困る」

「へ?」

「ふむ、困るな。あの時に切りかかられていたら多分だが、避けれなかっただろうな」

「……は?」

灯は義雪のそのあまりの返答に口を開けながら呆ける。

「まぁ……なんとなくな、そなたはその様な義に反する事はせんだろうと思ったのが一番の理由だな」

「…なんと」

そのまま固まる灯。そして、

「ぷっ、ふふははははは!!」

彼女は腹を抱えて大爆笑した。それはもう、近くにいる二人がその乱れざまに呆気にとられるぐらいに。

そして、一通り笑い終えると、灯は義雪に再び話しかけた。

「……義雪殿は人が良いというか、なんというか……面白いですね。暴漢かと思いましたが、どうやらこちらの勘違いみたいですし」

「ふむ、そうか?まぁ、誤解が解けて何よりだ」

「勘違いして本当に申し訳ない。……しかし、困りました。私は貴殿が気に入ってしまいましたが……私達は敵同士でございます。貴殿を殺すか、捕らえなければなりません」

お互いの立場に苦悶の顔を浮かべる灯。

「それならば、わしに一つ良い案がある」

「む?それは誠にございますか!?」

「ああ、それというのはだな……っと、そこの娘、そなたも協力してほしい」

義雪と灯と少女は周りに聞こえないように小声でひそひそとそれについて話し合った。

そしてその話が終わった後、立身勢には件の少女が、門又勢には灯と縄でその身を縛られた義雪が現れたのだった。

今回は一騎打ち回でしたね(●´ω`●)

ほんとまだまだアクションシーンは不安がいっぱいですよ。


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