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義雪伝  作者: 戦国さん
第二章 若き鷹、大空に羽ばたく
19/22

立て直しと宗就の愛娘

やっと涼しくなってきましたね(●´ω`●)

まぁ、気温的にやっとこさ真夏って感じですが(笑)


河川での立花勢と門又勢の戦いは、門又勢の大勝利で終わり、義貞達は川の下流にて合流を果たしていた。

それぞれの顔に戦意はなく、服は傷やら汚れやらで散々といった感じであった。

しかし、兵達がそんな感じで意気消沈している中で各隊の長は沈む気持ちを堪えてその場に簡易的な陣を敷いて今後の行動をどうするか決めていた。

「…小僧とその隊のお陰で幸い物資はほぼ無事じゃ。ここは適当な所に居を構え、体制を立て直すべきと思うが?…今兵達は色々と疲れておる。闇雲に攻め込むは愚策であろう」

と意見を伸べるは佐倉鎮隆、そしてそれに無言で頷く畑守明光。

しかし、一人その案に反対する者がいた。

吉岡景家と臼杵治吉である。

「義雪様の安否を確認せず、まだ山中にいるかもしれない兵達を見捨てるなど言語道断だ!確かに休息は必要かもしれぬが、ある程度捜索してからでもよかろう!!」

彼らは先の戦いにて主君を救えなかった事に自分達を深く責めていた。

無論、彼も兵達の疲労や心労を理解していないわけではない。

しかしまだ生きてるかもしれない仲間を見捨て、この場を離脱する行為を簡単に容認できるものではなかったのだ。

「……そなたらの気持ちはわかるがいつここに敵がやってくるか、わからん。長居はできんのだ」

「ならば少しの間だけでも!!」

目の前の必死な二人をどうにかしなくてはと考える鎮隆。

とりあえずこの場の仮の大将である義貞を見る。

「……兄者……あにじゃぁ……」

その瞳には一切光がない。

正直生きる屍のようである。

(あれは駄目だな。心がこの場はおろかこの世にいるかも疑わしい)

大将のあまりの抜け殻ぶりに鎮隆はただ呆れるしかなかった。

そんな時である。

そんな腐抜けた義貞の頬が豪快に叩かれたのだ。

あまりの音の大きさに一同がその方に向く。

あまりの事に全く状況が呑み込めない義貞。

叩いたのは魅鳥であった。

その表情は普段のふざけた物ではなく真剣かつ怒りに満ちている。

「…み、魅鳥?」

「左平ちんが、そんなんでどうすんの!?しろちんに任されたんじゃないの?今の皆の大将は左平ちんなんだよ?……しっかりしなよ!!」

魅鳥の瞳から涙がこぼれ落ちる。

「……こんなの、全然左平ちんらしくないよ…」

そのまま崩れ落ちる魅鳥。

姉妹の突然の行動に固まっていた萌鳥もとりあえず泣き崩れる魅鳥に近づきそれをなだめた。

左平はそんな魅鳥を見てふと我に帰った。

(わしは…わしは一体何をしておるのだ!!兄者に任されておきながらこの始末。なんたる事じゃ)

彼の目に光が蘇る。

(魅鳥……すまぬな。……ありがとう)

そして左平は各将に指示を出し始めた。

「治吉!景家!そなた達は動けそうな志願者を募り、早急に兄者を含む義雪隊の者達を救いに向かえ。…ただし探索は明日の朝まで…これ以上の探索は禁止とする」

「はっ!」

「次に佐倉殿と明光。そなた達にはわしと共に残りの手勢を率いて山中志賀の乱の時に志賀親守が使っていた屋敷にいってもらう。あそこならば門又砦から遠からず近からずの丁度良い位置であるし、雨風も多少しのげよう」

「承知!」

義貞は改めて諸将の顔を見回す。

「以上、各々準備に取りかかれ!」

「ははー!!」

各将はそれぞれ命じられた任務をこなすため行動に移る。

陣中には今も泣きじゃくる魅鳥とそれをなだめる萌鳥、そして義貞のみが残った。

「……その、なんじゃ…」

「…干し柿」

「へ?」

「干し柿たくさん……お腹いっぱい食べさせてくれれば許してあげる」

「……そうか、そいつは大変じゃのう」

頭をかきながら苦笑いする義貞。

「左平ちん。萌鳥のもよろしくね~」

「お主の分もか?やれやれ、帰ってからも当分休息できそうにないのう」

義貞は帰ってからの干し柿大量生産という重労働を思い浮かべため息を吐く。

(兄者……干し柿を一人で作るのは辛い、必ず生きて帰って手伝って貰うからな)

そして、義貞も旧志賀の屋敷への移動準備に取りかかった。


一方その頃、門又勢は戦いのあった河川近くにそのまま仮陣営を置いていた。

勝利し、戦勝雰囲気で盛り上がっているはずの、陣中の空気は重々しく、その中央で腕を組み堂々と座る門又勢の大将門又陣九郎宗就は眉間に皺を寄せ不満足といった感じであった。

何故ならこの勝利があまり実りのある勝利ではなかったからである。

まず第一に総大将の捕縛、もしくは討ち取ることに失敗してる事。

そして第二に敵勢の兵士の殆どに逃げられている事。

確かに勝利した宗就であったが、以上の戦果からあまり上機嫌にはなれないでいた。

必然的に重く悪い空気になる門又陣内。

そんな状況に耐えられなくなったのか一人、宗就の配下の侍が門又に話しかける。

「お館様。戦果がよろしくないのはわかりますが、そう不機嫌な顔をされては周りの者が居ずろうごさいます。ささ、先ずは水でも飲んで気持ちを落ち着けなさりませ」

そう言って配下の侍は宗就に一杯の水を差し出す。

宗就はそれを不機嫌ではあったが丁寧に受け取り、差し出した配下の侍に一言お礼の挨拶をした。

「すまぬな…気を使わせた」

「いえ…それより今後いかがいたしますか?」

「とりあえずもう少し周りを敵がいないか探索し、その後砦に一旦引き返し休むとしよう。敵も体制を立て直すまでは、すぐに攻めて来ぬだろうしな」

(しかし、決定打を与えていない以上次の策を打たねば…周りに援軍を求めれない我が方に不利か)

宗就は顎に手を当て深く考える。

同じ策はもう使えない、しかし、新たな策を要するには金も時間も恐らく足りない。

ならばどうするべきか?宗就の頭の中で幾つもの考えが交差した。

そんな折り、ふと周りを見た宗就は将の一人で自分の愛娘である灯が陣中にいないことに気づいた。

「……だれか、灯がどこに行ったか知らぬか?」

「灯様ですか?灯様でしたら残党狩りに参加されています。なんでも部下ばかりに危険な任は任せられないとの事で…」

(………あの阿呆め)

宗就は娘の行動に頭を抱えた。

宗就の娘門又灯は自慢の娘であった。

髪は美しく、顔立ちも整っており、文は……まあともかく武の才はそこら辺の同世代の者に負けないぐらい達者であった。

その腕は宗就の中ではかの有名な雷神立花道雪の娘、立花千代にも負けないと自負しているぐらいである。

しかも正義感に溢れ、道徳を重んじ、部下にも分け隔てなく接する様はもはや親馬鹿でなくとも感嘆してしまうだろう。

しかしそんな目にねじ込まれても痛くないような愛娘の灯に宗就が厄介に思う面があった。

融通が効かない上、何でも自分が矢面に立とうとするのだ。

先の立花勢との戦でも我先にと宗就や重臣達の制止を振り切って突っ込み彼らを冷や冷やさせた。

そして今回も敵の残党狩りという安全ではない任に行ってしまったというのだ。

宗就は胃までも痛み出してきた。

「と、殿大丈夫でございますか?」

「……あ、ああ、心配はない。それよりも誰かあの馬鹿娘を連れ戻してくれんか?駄々をこねて言うことを聞かぬようなら縛ってでも頼む」

「は、はぁ。かしこまりました」

(こんな事で配下の手を煩わせるのも気が引けるが…あ奴の身に何かあっては大変じゃからな。……何事もなく帰ってくれば良いが…)

宗就は嫌な胸騒ぎを感じるも、只々娘の無事を祈るばかりしか出来ないでいた。


そして、その父を心配させている愛娘はというとーー

「立身獣志郎義雪殿とお見受けする!いざ尋常に勝負!!」

幸か不幸か。いや、この場合は灯にとっては幸運、宗就にとっては不幸であろう。

敵の総大将立身義雪と遭遇し、更に刃を向けて戦いを始めようとしていた。

今回義貞回でしたねぇ(●´ω`●)

次回はちゃんと主人公活躍しますよ(^_^)b


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