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「じゃあ、ヒイラギ寝かせるか。一階の和室で良いか。何かあった時に慌てて階段上り下りするのも面倒だし」
その倉山の意見に特に反論する理由もなく、そのまま和室の押し入れにあった布団を二人に敷いてもらい、その間に私は隣のリビングでヒイラギをパジャマに着替えさせた。相変わらず着ぐるみしかなかったけれど。
「もう終わった?」
「ああ……って、その格好……」
倉山がヒイラギを見るなりその姿に驚いている。それはどこか笑いを堪えているようにも見えた。近くのサトルなんて隠さないでもう軽く笑っている。写真は見せた事あったけれど、本物を見るのは初めてだっけ? 風邪をひいていなければ、お兄ちゃんの言う事をまた無視して噛みつくだろうヒイラギも、今は大人しい。だから言われたい放題になってしまっているのが少しだけ可哀相になってきた。
「からかうのはそこまでにしてよ? 噛みつかないからって良い気になっているとその内しっぺ返しが来るよ?」
「悪かった。ついつい……体温計と氷枕か何か冷やす物持ってくるよ」
「じゃあ俺は……何か飲み物持ってくるか」
二人がその場を去った後にヒイラギを布団に寝かせ、毛布を掛けてあげるとヒイラギは何を思ったのか、私のシャツをギュッと軽く掴んだ。目が少し不安そうに見えるから、何処かへ行ってしまうんじゃないかとか思っているのかな?
「大丈夫。陽が沈むまでは何処にも行かないよ?」
本当は一日中いてあげたいけれど、倉山達との約束だから仕方ない。陽が沈むまでまだ時間はある。でもあっという間に過ぎてしまうだろう。だから大切にしないと、この時間を。
「ったく……体温計や氷枕一つ持ってくるのに何でこんなにかかるんだよ?」
「アキラだって絶対これくらいかかっていたと思うけど? オレ達はあくまで借りているだけだから、何でもかんでも把握していると思ったら大間違いだから」
「……そうか。言われれば救急箱とか出した事なかったよな」
背後から声が聞こえてきたから振り向いてみると、そこにはそれぞれ持ってくると宣言した物を持ってきた二人の姿があった。気付かなかったけれど、どうやら倉山の方が早く持って来たらしく、自分より早く戻っていると思っていたサトルに呆れているようだけど、救急箱を出した事がないって一体。
「何、お姫様。その顔。……オレは“この世界では”怪我も病気もした事がない」
「俺は知っての通り、病気がしないがたまに怪我する。でもその都度貰うからなあ……湿布も包帯も絆創膏も」
頼んでもいないのに、何も聞いていないのにまたサトルが教えてくれた。つられるように倉山も。サトルってやっぱり私の心読めるのかな。