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ある晴れた日、秋の放課後。突然だけど……またしても、ミニマムになっていました。誰がって。私の一応恋人が。彼の古い友人である倉山とサトルの手によって、また小さくなっている事が確認され、私の元にやって来たという流れ。前回と違ったのは、あれだけ警戒心を見せていたサトルに大人しく抱っこをされていると言う位。珍しい事もあるんだな。
「やっぱりあの一回きりじゃなかったんだね……予め聞かされていたから予想通りと言えば予想通りだけど」
「ああ、だけど今回は岩代、お前は関わらなくて良い。こっちでなんとかするから。とりあえず報告だけ」
これは予想していなかった。“また頼む”と言われる覚悟は出来ていたのに、言われなくて拍子抜けした。別に私の家族の事を気にしてくれているなら、もう今更感満載なんだけどな。
「私なら別に良いけれど。ヒイラギのお世話くらいもうやっているし」
「いや……理由はそれじゃないんだ」
「?」
「…………くしゅっ!」
その疑問はサトルが抱えていたヒイラギによって解決された。くしゃみをしたヒイラギの鼻からは液体が垂れていたから。ああ、そう言う事か。ヒイラギ、風邪をひいて……って、え?
「また鼻垂らして……ほら、チーンして?」
何処からともなくティッシュを取りだしたサトルの手際良さによって、液体はすぐになくなった。サトルがヒイラギの鼻を噛んであげているなんて……し、信じられない! でもだから大人しいのか。
「小さくなる前から風邪気味だったっぽいけど。体調までは流石に記憶みたいに変化はないようだな……」
大きな金色の瞳を潤ませ、顔を赤らめるヒイラギを見るのは元のサイズの時でも見た事がない。それよりも風邪をひいていた事の方に衝撃を覚えた。だって昨日会った時は全然平気そうな感じだったのに。
「昨日仕事で温度差の激しい場所に行き来したんだろ? ったく、体調管理くらいしっかりしろって言うの……そう言う訳だからだから岩代、お前に風邪はうつしたくないんだ。だからこれは俺達だけで何とかする。幸い今は弱っているからか、警戒心も薄れているみたいだし」
そう言う訳なら仕方ない。倉山達に任せよう……って、素直に引くとでも思った?