夜に負ける
掲載日:2026/04/07
深夜、家の者すべてが眠りについたあとに、私はこっそりと一階へ降りて夜食を作って食べる。
別に日中食べる暇がないとか、そういうわけではなくて、深夜に食べるご飯が好きだった。
ほんの少し罪悪感と背徳感を覚えながら食べるご飯は、いつもと違う魅力がある。
こんなことをしだしたのは少し前からだ。
きっかけは覚えていないが、なくなったのがばれないように少しずつ食べている。
音がしたら隠れてやり過ごす。
本当にそんなことをする意味もないのだが、やってしまう。
ある夜、冷蔵庫の扉を閉めたとき、背後から声がした。
「……誰?」
振り返ると、階段の途中に人影が立っていた。
この家の住人だろう。
私はしばらく黙っていたが、やがて肩をすくめた。
見つかったのなら仕方がない。
皿に残った最後の一口を口に運び、ゆっくり飲み込む。
それから小さく呟いた。
「……また別の家に行くか」




