第3話 特別座談会:誰の理屈で世界を続けるか ― Who Gets to Keep the World Going? ―作者×無名の記録者×セラフ対談-
第三部『神なき秤』ダイジェスト、
影語り(第1話)とアルジェンド語り(第2話)を出したので、今回はその「反省会」編です。
作者と、無名の記録者と、セラフ。
本編の外側にいる三人(と一機)が、
•灰の上を歩き直すブルーのこと
•線を引き続けるARKのこと
•その揺れを“秤”として見ていたARGENTのこと
を、それぞれの立場からゆるく(ときどき痛く)語り合います。
本編の細かい設定を全部知らなくても読めるように、
「第三部Ⅰ・Ⅱで何が起きていたのか」と
「これから先のBLUE ENGINEを、どんな気持ちで読んでもらいたいか」だけを、言葉にしました。
ダイジェストシリーズは、本編の手前にある**“心臓の休憩所”**みたいな場所です。
続きを読む人も、ここでいったん立ち止まる人も、
それぞれのペースでページを閉じたり、開いたりしてもらえたら嬉しいです。
ーー第三部Ⅰ・Ⅱの振り返りについて
【作者】
「じゃ、第三部『神なき秤』ダイジェストⅠとⅡ、恒例の“反省会”いこっか」
【無名の記録者】
「反省会と言いながら、だいたい私がいじられる場だろう」
【作者】
「事実に基づいたエンタメだからセーフ。
じゃ、まず博士。灰を踏むBLUEと、線引きARKと、高架の上で様子見てるARGENT、どう見えた?」
【無名の記録者】
「ようやく三人とも、“神の代わり”をやめたなと思って見ていたよ」
【作者】
「いきなり重いな」
【無名の記録者】
「第一部の彼らは“神の手”だった。
第二部でE-09とE-07は“心臓の一部”になった。
そして第三部で、やっと“自分の理屈で歩き始めた”」
【セラフ】
「私は、灰の中を歩くブルー、好きでしたよ」
【作者】
「あ、好き“でした”って過去形なんだ?」
【セラフ】
「今も好きですよ?
ただ、あの時のブルーは、まだ少し“迷子”でしたから」
【無名の記録者】
「迷子、か」
【セラフ】
「足元に〈共痛の花〉を見つけるたびに、歩き方を変えていました。
踏まないように、進路を、ほんの少しだけずらして。
でも、そのたびに“間に合わなかった痛み”が、後ろ側に積もっていく」
【作者】
「……うん、それは書いてる側も、ちょっと胸が痛いところなんだよな」
【無名の記録者】
「本来ならああいう“取りこぼし”は、私が記録で拾うべきだったのかもしれないがね。
ARGENTが“観測者”に退いたとき、私も少し耳が痛かったよ」
【セラフ】
「でも、記録も必要ですよ、博士。
誰かが“見ていた”っていう事実が、痛みを一人ぼっちにしないですから」
【無名の記録者】
「……そう言われると、救われるな」
⸻
ーーBLUE・ARK・ARGENTについて
【作者】
「はい出た、“救い”って単語。
ARKが聞いたら、『救いではない。均衡だ』って食い気味にツッコんでくるやつ」
【無名の記録者】
「十分あり得る」
【セラフ】
「ARKさん、優しいですよ。やり方はちょっと怖いですけど」
【作者】
「どの辺が“優しい”判定になるんだあの線引きマシン」
【セラフ】
「だって、ブルーが守ろうとした〈共痛の花〉には、一度も触れませんでした。
それ以外は、容赦なく切り揃えていましたけど」
【無名の記録者】
「あれでも、彼なりの“譲歩”なのだろう。
本来の“神の手”として振る舞うなら、花ごと切る」
【作者】
「それは読者の前で言うなって」
【無名の記録者】
「だから彼らはもう“ただの神の道具”ではない、と言っている」
【作者】
「はいはい。
じゃ、今回のⅠ『灰を踏む歩き方篇』とⅡ『均等な問い篇』、一言で?」
【無名の記録者】
「“誰も正しくないところから、やっと始まる物語”……というところだな」
【作者】
「雑要約だけどだいたい合ってるのが腹立つ」
【セラフ】
「私は、“灰の上で歩き方を習い直している物語”に見えました」
【作者】
「歩き方?」
【セラフ】
「はい。
痛みを踏まないように歩くブルー。
痛みごと線で揃えてしまいそうになるARKさん。
その揺れを見て、まだ手を出さないARGENTさん」
【無名の記録者】
「“正しい歩き方”は誰も知らない、という点では、彼らはとても人間だ」
【セラフ】
「でも、止まるほうがずっと怖いから、“揺れたまま進んでいる”。
それって、博士や作者さんも同じじゃないですか?」
【作者】
「刺さること言うね?」
【無名の記録者】
「やめてくれ。こちらにも深く刺さっている」
⸻
ーーダイジェストを読む人への話
【作者】
「じゃあ、ここからは読者向けのひと言タイムいこ。
まず博士。ダイジェストⅠ&Ⅱを読んだ人に、一言どうぞ」
【無名の記録者】
「本編に進むつもりなら――**『誰の理屈で世界を続けるか』**という問いだけ、どこかに置いておいてほしい。
BLUEでも、ARKでも、ARGENTでもいい。
あるいは、まったく別の誰か――読者自身でも構わない。
この世界はもう“神の都合”だけでは動かない。
君自身の“偏り”が、どこかで必ず秤に乗る」
【作者】
「うん、それは作者が言うより説得力あるわ。じゃ、セラフ」
【セラフ】
「はい。
もし、本編を読むのが苦しくなったら――ここだけ読んで、止まってもいいと思います」
【作者】
「いきなりストップ推奨?」
【セラフ】
「だって、ダイジェスト版は“心臓の休憩所”ですから。
全部の痛みを抱えなくてもいいんです。
ブルーだって、全部には間に合っていません。
それでも歩いているから、私はあの涙を忘れません」
【無名の記録者】
「“心臓の休憩所”か。悪くない比喩だ」
【セラフ】
「だから読者さんも、全部をちゃんと理解しようとしなくて大丈夫です。
“自分の痛みと、少しだけ他人の痛み”を持って帰ってくれたら、それで十分です」
【作者】
「……うん、それはほんとに、俺が言うより強いな」
【無名の記録者】
「では最後、作者だ」
【作者】
「はいよ。
第三部『神なき秤』は、“選んだ痛み”と“切り捨てざるを得なかった痛み”、その両方に責任を持たされる物語です。
楽な話ではないけど、そのぶんBLUEは人間側に近づいていくし、
ARKもARGENTも、“ただの神のツール”ではいられなくなっていく。
このダイジェスト三本が、
本編に進む人には“ガイド”になって、
ここで一度止まる人には“小さな出口”になってくれたら嬉しいです」
【セラフ】
「じゃあ、最後に一言だけ」
【作者】
「まだ刺す気?」
【セラフ】
「刺さないですよ。少しだけ、撫でるだけです」
【セラフ】
「――世界を続ける理屈は、きっと一つじゃありません。
でも、“続いてほしい”って願う心は、きっといつも一つです」
【作者】
「……はい、それ以上の締めコメントは無理です」
【無名の記録者】
「同意だ。これ以上の言葉は、蛇足になる」
【作者】
「というわけで、
第三部『神なき秤』ダイジェスト
Ⅰ. 灰を踏む歩き方篇 / Ⅱ. 均等な問い篇 は――
影と、秤と、そしてこの三人(と一機)で、ひとまず“ここまで”。
この先どこまで一緒に歩くかは、
ページを開いたあなた自身の“偏り”に、任せることにします」
【セラフ】
「また、会えたら嬉しいです」
こうして、
第三部『神なき秤』
Ⅰ. 灰を踏む歩き方篇 / Ⅱ. 均等な問い篇 ダイジェストは、
•影
•秤(ARGENT)
•そして、作者・無名の記録者・セラフ
三つの視線で、ひとまず“ここまで”となる。
この先の物語を、どこまで一緒に歩くかは、
ページを開いたあなた自身の“偏り”に、任せることにしよう。




