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【書籍・コミカライズ発売中】夫に殺されたはずなのに、二度目の人生がはじまりました  作者: 四折 柊


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番外編。カルロの幸せな悩み

いつもお読みくださりありがとうございます。

書籍化御礼の小話です。

結婚後のカルロ視点のお話になります。


 俺は結婚後はロゼリア様と同じ執務室で仕事をしている。これは俺から頼んだ。仕事で分からないことは彼女が教えてくれるので一緒にいると効率がいいという理由づけだが、本当はそれは建前で側にいたいだけだ。でもロゼリア様といることで俺の気分が上がれば仕事もはかどるので嘘ではない。

 今日も執務室でロゼリア様と一緒に仕事をしていた。そろそろ昼時だなと考えているとロゼリア様が声をかけてきた。


「カルロは髪を伸ばさないの?」


 その言葉に俺は目を通していた書類を机に置き首を傾げた。少し考えて口を開く。


「護衛の仕事をしている時は鬱陶しくて短くしていたが、特にこだわりがあったわけではないな。ロゼリアは長い方が好みか?」

 

 この国の貴族は男女問わず髪を伸ばしている。別に短いから駄目ということでもないが、多くの貴族たちは髪を己の美しさを示す一部として考えているようだ。さらに美しい髪を維持できることは裕福であるとも考えられる。俺は着飾ることにさほど興味がない。護衛の仕事の時は単に邪魔で短くしていたが、そのまま習慣で短くしていた。貴族になったから伸ばそうという発想はなかった。まあ、こだわりはないので伸ばしてもいいのだが。


「そういう訳ではないの。ただ伸ばしたら素敵かなと思って」


 言葉は控えめでもロゼリア様の瞳にはキラキラと期待が滲み出ている。


「う~ん。ロゼリアの希望なら少し伸ばしてみるか……」


 漆黒の髪をくしゃりとかき混ぜながら呟いた。

 長い髪か……面倒ではあるがロゼリア様が喜ぶ顔を思い浮かべて伸ばすことを決めた。すると夜にはロゼリア様が俺の髪の手入れ用のオイルなどを用意した。

 今夜からなのか? 急すぎる。まあ、いいけれど。これは相当期待されている。軽い気持ちで言ってしまったが果たして俺が髪を伸ばして似合うのだろうか?

 

 だが俺の不安は髪が伸びるとともに解消された。日々、ロゼリア様が俺をじっと見つめてくるのだ。しかもニコニコと。最初はそれを気恥ずかしいと思ったが、ロゼリア様の心を独占していると思うと気持ちが昂り……ようは浮かれた。


(伸ばしてよかった!)


 しばらく経ちそれなりに髪が伸びると後ろの髪が 鬱陶しくなり結わくことにした。その結わいた髪が「黒ツグミという鳥のしっぽみたいで可愛い」とロゼリア様が喜んでいる。結果的に妻を笑顔にできて何よりである。

 今日も執務室で一緒に仕事をしているが時折ロゼリア様は手を止めてこちらを見ている。

 俺はその熱い眼差しに気付かない振りをして書類に視線を落とす。ロゼリア様は俺の黒髪をことのほか好きでいてくれている。この国では忌み色だと忌避されている漆黒の髪を――。ロゼリア様と結婚するまでは自分でも黒色を疎んじたこともあったが、今となっては黒髪でよかったと心底思う。ロゼリア様の関心を俺に向けられるのだから。


 ロゼリア様がおもむろに立ち上がり俺の横に立つ。俺は書類から顔を上げロゼリア様を見た。


「ちょっとだけ……お願い」


 その言葉に俺は頷いた。

 ロゼリア様は手をウズウズさせて俺の頭に手を伸ばす。そのまま小さく細い指で俺の髪をゆっくりと優しく梳く。「ほうっ」という溜息を頭上に聞きながら俺は目を細め口元を綻ばせた。その気持ち良さに俺も心の中でため息を吐く。


「カルロ。邪魔してごめんなさい。でもこれは私にとって癒しなの……」


 俺は冷静に「いいよ」と返すが、内心は浮かれている。これはむしろ俺の方が癒されていると思う。

 ロゼリア様は不思議と俺の髪を梳くこと好む。最初は遠慮がちだったが、仕事で行き詰まった時や、疲れた時に気付けばこの動作をするようになった。


 そんなわけで俺は思いがけずに手に入れた至福の時を満喫している。これ以上髪を伸ばすのは手入れが面倒なのだが、ロゼリア様があまりにも嬉しそうなのでもう少し伸ばすかどうか悩み中だ――。





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