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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

転生したら懺悔室の壁でした。

作者: 藤原 柚月

最近に謝ります。


申し訳ありません!


※この作品は、勢いで書いた作品です。

あまり深く考えずにお読みください。

 

「ここに懺悔します」


 協会内にある小さな懺悔室。

 1人の少女は胸の前で手を握り、祈るように言葉を続ける。

 その少女はプラチナブロンドの髪に大きめな藍色の瞳がとても可愛らしい。恐らく年齢は10代前半だろう。


 高貴な人が身につけてるようなドレスとアクセ。その子は貴族なのだろう。


「私は弟が大事にしている手鏡を割ってしまいました」


 どうやらその少女の懺悔は弟に対しての後悔みたいだ。

 姉弟喧嘩はよくある事だ。俺の前世も兄が1人居て、よく喧嘩したものだ。


 俺が誰だか知りたい? 俺は懺悔室の壁だ。


 よくある転生したら○○でしたみたいな。


 転生先を選べないのがとても残念だったぜ。俺は転生したらサクランボになって、美少女に食べられるという夢が一瞬で崩れ去った時のショックと言ったら……。


 くそっ、悲しいのに涙が出ない。


 誰だよ。転生したら美少女にチヤホヤされるって言ったやつ。

 だから俺は美少女に美味しく食べられたくて自殺したのに、それがこれかよ。


 まじで怒らないから言ったやつ出てこい。

 と、何回も思っても言ったやつは出てくることはない。


 そいつ、豆腐の角で頭ぶつければいいんだ。そして豆腐の悪夢でも見ればいいんだ。


 ああ、ホント悔しい。騙された。


 ん? 何かが違うって?


 ああ、転生したら壁だったからな。え、それも違う?


 俺、難しいことはわかんねぇんだわ。


 ……っと、そんなことを言ってる間に少女が懺悔の続きをはじめるみたいだぜ。


「だって……。私の弟、毎日手鏡を見つめて『俺の顔は世界一美しい』と言っているんですもの。朝、昼、晩、同じ時間に同じ言葉を。私、恐怖でしかなくて……」


 ああ、うん。それは恐怖だわ。手鏡を割ったの正解。


「だから私……私、『手鏡よりも私を見て! 私の方が美しいでしょ』と言ったらキモイと言われて……」


 ん?

 弟くんはかなりクセの強い人かと思ったら君もなかなかクセが強くないか。

 聞いてるこっちが怖くなってきたんだけど、おい神父。黙って聞いてないでツッコミを入れてくれ。


 俺は口がないから話せないし、聞くことしか出来ないんだ。


 壁なのに、聞くことは出来るなんて不思議だよな。


 神父は黙って頷くばかり。懺悔室は罪の告白するところだけど、気になったことはツッコんで……いや、気にならなかったのかも。


「手鏡に嫉妬してしまって割ってしまったんです。そんな私をどうか許してください」


 いや待て。手鏡に嫉妬ってどういう状況!?


 嫉妬するところあったのか!?


「本当なら、弟を毒殺するところだったのですが、手鏡で我慢しました。そんな私を褒めてください」


 いや、ここは懺悔室!

 褒めてもらうところじゃない!

 しかも弟を毒殺って、手鏡の話なのに問題を大きくしてるじゃねぇか。


 どうやらこの姉弟はナルシストらしい。しかも姉はメンヘラかよ。


 まぁでも、神父さんよぉ。

 毒殺してないんだから許してもいいんじゃねぇの?


 今まで黙っていた神父が口を開いた。


「いいえ、許しません。手鏡を割るのは自分が死んだと同じ! 代わりに弟さんを殺してくれば許しましょう」


 いや、何様だよ。


 手鏡ってこの世界では自分の命よりも大切なのか!?


 俺、転生してからずっと懺悔室の壁だからこの世界のことわかんねぇんだよ。


 しかも弟を殺すように促してるよ。お前、本当に神父かよ!

 神父の皮を被った悪魔なんじゃねぇの。


「いいえ、私は悪魔ではありません」


 俺の声聞こえたの!?


「魔王です」


 魔王!?

 いや、うん。いつも来る神父さんとは違うと思ってたけどね!!


 なんで魔王が神父やってんだよ!!


「副業です。魔王だけじゃ生活に困るんですよ。魔王は大したお金になりませんしね」


 いきなり生々しいこと聞いたぞ。魔王って職業なのか。


 なにこの世界、俺こんな世界嫌だわ。


 少女は魔王と聞いた途端に怯えた表情になる。


 そういう反応するわな。魔王って言ったら悪魔の王様だからな。


 少女の肩が小刻みに震え出した。


「…………わ」


 震えながら出す彼女の声はとても小さく聞き取れなかった。

 魔王が聞き返すと少女は目を輝かせた。


「素晴らしいですわ!! 私、極悪非道になるのが夢でしたの! お近くで勉強してもよろしいですか?」


 極悪非道になるのが夢って、どんな夢だよ。もっと可愛らしい夢あるだろ?

 幸せになるとか、王子様と結婚するとか。それなのにとんでもねぇ夢持ったなぁ。


「う、うむ。なるほど、私は女性でも手加減しませんよ?」

「はい、大丈夫です!」


 それはいろいろとまずいだろ。考え直せよ、今ならまだ間に合うからさ。良い子だから。お兄さんがお菓子あげるから!


 しかも魔王様よ……。

 あんたもあんたでなに満更でもない顔してんの!?


 この子、貴族だろ。

 メイドとかお供に連れてきたはずだろ。なんで居ねぇの?


「私……。手鏡を割った罪で国から追放されてしまって、どうしたものかと悩んだ末に懺悔することに決めたんです」


 手鏡を割って国外追放!?

 この世界の手鏡の価値ってどうなってんの!!?


 俺、嫌だよ。全員がナルシストなの! 恐怖だよ!


 自分大好き発言を連発されるの、精神的にキツいぞ。


「そうでしたか。大変でしたね」


 待て、なんで涙ぐんでんだ?


 今の言葉で泣く要素あったのか!?


 どうしよう。めっちゃシリアスな場面になってんだけど。


「では、そのお礼に弟を毒殺しないといけませんね」

「はい。でも大丈夫ですよ。追放される前に弟が大好きなお菓子に毒を混ぜといたんです。今頃は死んでいるかと」


 ニコッと笑う彼女はとても可愛い。なのに、なんつー会話してんだ。


 しかも毒殺はやめたんじゃなかったの!?


 やばいよ、人殺したよ。笑顔で人殺したよ。しかも魔王とはいえ、神父なのになに殺人を促してんの!?


「私をキモイと言った罪は大きいです」


 どんだけ根に持ってんの!?

 弟さん、悪気は無かったと思うよ。


 そんな些細なことで人殺したら、なにも出来なくなるし、なにも言えなくなるよ!

 だから許してあげて。


 というか、その子今王国に仕えてる騎士団が探してそうだな。


「では、次は。王国を滅ぼしに行きましょう。私よりもお金を持ってるなんて許せませんでしたし。もう、貧乏魔王なんて誰にも言わせません!」


 いや、どんな理由で滅ぼしに行くんだよ。


 しかも、貧乏魔王なんて言われてたの!?

 だから副業してたのか!?


 やばくないか。誰かこの2人を止めてくれ!


 ああ、そうだ!


 転生したということはスキルかなにか持ってるはず!!

 スキルなしとか言うなよ。俺、泣くよ。




 ピロピロリン~、ピロピロリン~。




 ん?なんだ、このBGMみたいなメロディ。着メロみたいだな。

 突然、脳内……いや、そもそも脳がないんだけど、どこからか声が聞こえた。

 どうやらこの2人には聞こえないらしい。


 〈スキル、《ツッコミ》レベルが10になりました〉


 …………。


 一瞬、誰かに五感を奪われた気がした。


 ツッコミレベルってなに!?


 俺が求めていたスキルとは違うぞ。

 もっとあるだろ。人の言葉を話せるとか、チートみたいなスキルとか。


 俺が思ってた転生とは大分違うぞ!!?


 この世界ってなんなんだよぉぉ!



 その後、王国は滅びたとか滅びてないとか。


 それは定かでは無いが、今日も俺は罪人の懺悔を聞いている。



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素晴らしい……! 求めていたような作品でした!! 手鏡ひとつでここまでお話が膨らみ、しかも多方面からギャグを入れてきてひとつの短編を成立させている……! 素晴らしい手腕だと思いました! ご紹介いただき…
[良い点] ツイッターから飛んできました! 最初から最後までバカバカしくてしょうもなくて良かったです! 最後あたりの主人公はまともだなと思ってましたが、冒頭へ振り返ると異世界の住人と同レベルかもしれ…
[良い点] ぶっ飛んだ倫理観と展開に笑いました。 さくらんぼのところとか手鏡に下りとか。 [一言] 面白かったです
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