銀狐お嬢様の専属メイド視点
馬車に乗るわたくしの目の前で我がお嬢様が、先程からブツブツ何事か仰られております。
昨夜、永らく監視させていた騎士団所属の配下から、キファント様の近頃の動向をお聴きになられた後、いきなりアーティの別荘へ向かうなどと申されて、準備が大変でごさいましたが、只今無事アーティへ向かう馬車の中でございます。
「許さないわ。私がずぅーっと好きでいた方を。物心ついた時から好きだった愛おしい方をぽっと出の人間に取られるなんて許さないわ」
「お嬢様、笑顔でございます。そんなお顔のお嬢様に、殿方は微笑んではいただけませんよ」
「別にいいわよ。ここに殿方はいないし、キファント様以外は要らないわ!
それに、人間よ! 人間なのよ! エレファントの中でも一際強い! あの由緒正しいファーマン一族のキファント様が、人間なんぞにうつつを抜かすなどあってはならないことです!」
「そうですね。お嬢様の仰る通りでございます。が、それでこれからどの様にされるのですか?
お嬢様はキファント様から、異性としては見られておりませんよ。手のかかる妹の様に思われていると思いますが」
わたくしのお嬢様は、銀狐の旦那様と虎の奥様の間に産まれた。見た目は狐で心は虎のお嬢様です。
お嬢様は見た目もとても良く、凹凸もきちんとあり、旦那様と同じ銀狐であるので黒髪に白の差し色が混合し、とても綺麗な銀色に見える髪と瞳も同じく黒に差し色の銀で神秘的な見た目なのに、性格が勿体ない事でございます。
もう少し年齢を重ねて落ち着かれると最高のお姫様になられる事まちがいなしなのですが。
旦那様は獣人国の宰相をされており、キファント様のお父様は国の軍事を司る軍総司令官、お兄様が国軍団長を次男様が近衛隊長をされています。皆様それを実力で勝ち取っております。
エレファント一族は個々でも強く群れでも、団結できる有能な獣だと思います。お嬢様は、銀狐と虎で両方とも群れない孤高の気高い気質の方なので、お嬢様はお好きでもキファント様とは気質的に相容れない様におもうのですが。
キファント様は幼い頃からその見た目と優しそうな気質からとてもオモテになっておりましたが、グイグイ迫る女性達には逃げ惑い隠れている所をわたくし良く拝見しておりました。
結果、女性達からは離れて安全なお兄様達と日夜鍛錬しておりました。エレファント一族は人気がありますから、皆様見目も宜しいので苦労なさっておいでの様でした。
わたくしの目から見て、キファント様にはお嬢様は足りない部分が多く有る様におもいます。
目の前でイライラをぶつけているお嬢様。お綺麗ですが、中身がカスカスですね。もう少しお勉強や人間観察等されて、自分に良い言葉を使うばかりの方々ではなく客観的な考えも必要な事を理解できれば宜しいのに。
アーティでお嬢様の永年の恋心がどの様になるのか楽しみでございますね。キファント様が気になっておられる恋敵の人間も、どの様な方なのか是非是非拝見したいですね。
わたくし、全てにおいて中立、客観的に生きて行くことを心掛けております。
わたくしはラーテルの獣人でございます。小型ですが最強の防御力、毒にも耐性があり、粘り強く必殺技も持っております。どうぞお見知りおきを、お願いいたします。
明日は更新できないかもしれません。