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5-16

 外の風景を楽しむような余裕はない。身体の中身をかくはんされる感覚に耐えながら、たまに雑談の相槌を打つ。


 無限に続くかと思われた時間だったが、不意に速度が緩み、振動が静まった。


「師匠、もう着きますよ!!」


 気づかわしげにルシャが野柳の顔をのぞき込む。


 目線を上げて外を見ると、昨日分身を通して見た石壁が遠くに見えてきていた。


 出発前に食べたものが、だいぶせり上がって来ていたがなんとか堪え切れそうだ。


 と、馬車が停止した。


 到着した石壁の表面には一見、くぐれそうな所や、可動する仕掛けは見て取れない。


 しかし、馬車を降りたバリケイが手をかざした途端、積み上がった石が、急激に組み変わり、馬車が悠々通れる門を形作った。


 ルシャは、頭の布を巻き直し、口元まで襟を引き出した。面が割れているのだ。


 門をくぐった先の風景は清冽だった。村で見たのと同じ石造りの家々。しかし村のものとは違い、古びた感じの汚れもヒビも入っていない。新品のような白。


 そして、あちこちにそそり立つ南国を思わせるヤシに似た木。通りには、活気のある喧騒。飢えた浮浪者など見当たらない。亜熱帯の気候も相まって、リゾート地と錯覚しそうになる。


「トロピカってるな……」


「どういう意味ですか!?」


「流してくれ……」

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