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6

 この世界にたどり着いてからのことを思い返す。


 時間経過はたいしたものではなかったが、既に随分長いこと居た気がする。


 倒れて風ざらしになっていただけだが、辛い時間は長く感じるものだろう。


 最初に会った2人の村人……。


 思えば何故言葉が理解できるのだろう。


 「ハズレの勇者」とは?


 勇者が居るということは、武力の驚異があるということだろうか?


 ……あの鐘の音……!




 疑念を感じると共に柳は飛び起きた。


 確かめないことには呑気に休んでは居られない。


 外に出てみると、足跡はうっすら残っているが辿る内に風にかき消された。


 よく目を凝らして見回すと、ル・シャタールの家の方角のずっと先に、同じような形の家が連なる集落が見える。


 となれば、と。柳はそれとは逆の方向へ足を向けた。


 日は傾いていたが、依然暑さは身を苛んだ。


 眼前には砂漠が拡がっている。


 と、生体改造で強化された柳の視界の隅に、人影が二つ映った。


 遠く離れた二人は柳が近づくのに気付く様子はない。

 明らかに二人は争っていた。


 ターバンを念入りに巻き、目元だけ露出させているのはル・シャタールだ。先程とは眼光の鋭さが違う。何より、両手に構えられた円月輪が臨戦態勢を表している。

 



 小高い岩でル・シャタールを見下ろすように対峙するのは、異形の者だった。人型の爬虫類のその者は、二足歩行のトカゲのようにも手足の有るヘビにも見える。しかし特徴的ないくつもの節のある尾は、野柳の世界のガラガヘビを思わせた。


 身体のラインは滑らかだが、両の肩に、また時折気紛れの様に、ゴツゴツとした岩のような部位が見受けられた。それが鎧なのか、地肌が変化したものか、野柳には判別がつかない。


 組織の改造人間に似ているが縫合跡がない。組織の改造人間には特別な場合を除いて必ず、体の何処かに改造手術の縫合跡で組織のシンボルマークが見つかる筈だった。


 最低一つはある筈の能力拡張の為のソケットも見当たらない。


 決定的なことには。ヘビ人間には見る者に怖気を起こさせる禍々しいオーラがあった。


 野柳は一目で直観した。こいつは、人智を越えた何かだと。


「かわいそうにな、ル・シャタール。なりそこないの魔神遣いが、こんな僻地の守護に立つとは!」


 ヘビ人間の嘲るような、見目の如く毒々しい声に、ル・シャタールは身動ぎもしない。


 相変わらず鋭い目付きでヘビ人間を睨み据えている。


 ヘビ人間は苛立たしげに舌をチロチロと出し入れして見せた。


 まんじりともせず動かぬル・シャタールに、攻め入る隙を見い出せなかった。


 苛立ってこそいたが、ヘビ人間にも付け入る隙はなかった。油断げに身体を揺すったり蠕動して見せたりするものの、筋肉と骨格から予想する限り、相手を誘い出す為のものだった。


 野柳は、出来るな、と思った。


 だがル・シャタールの我慢強さに分がある、とも。


「今からでも考え直さんか? 戻って来いよル・シャタール! 俺が掛け合ってやる。当座の面倒だって見てやろう。こんなカス村を護って何になると言うんだ、ええ?」


 これまで表情を変えなかったル・シャタールの眼尻がぴくりと動いた。


 それを見逃すヘビ人間ではなかった。


「気に触ったか!? ホントの事を言われて実際何になるんだよ、こんなちっぽけな村に拘って!」


 ル・シャタールが動いた。


「お前には解るまい」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 一話一話が短めな事もあって分かりやすくスラスラと読み進められました。 スマホで拝読しましたが、まったく苦にならない読みやすさがあったのでブクマと評価を付けさせて貰いますね! [一言] Tw…
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