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馬車の乗り心地は悪夢のようだった。
間断なく、右に左に、上に下に常に揺さぶられ続けている。唐突に始まる浮遊感といつ叩きつけられるか分からないストレスが身構える隙もなく繰り返される。
「街にはどんな用事だい?」
バリケイが、御者席から声を掛けてくる。馬車の振動に戸惑っている素振りはない。これがどうやら平常運転らしい。
「最後に街に行ってかなりたちますから!! 買い出しと!! みんな元気にしてるかなって!!」
──ルシャも普通に話せるんだ……
そこはともかく、上手な言い抜けだ。事前打ち合わせが出来ず不安だったが、まだ情報を伏せるべき、という意識がルシャにはある。
「その割りには荷物……結構あるね」
「お金も足んないので売れるものとりあえず詰めてきました!! 街のみんなはどんな具合ですか!?」
うまい。誤魔化し、かつ、話を逸した。
「なんとかやってるってとこかな。ルシャの言うように、あれからずいぶん経つからね……村みたいにひもじくはないけど、窮屈だよ」
バリケイの口調に、苦いものが混じる。
言葉を選んではいるが、魔皇朝に良い感情はなさそうだ。




