5-11
暗く、視界の悪い密林は一層不気味だった。歩き始めの内は、確認した地形を流すだけだった。分身を通して見た時と違いは雰囲気と、多少夜行性の生き物が出てきたくらいに思えた。
しかし、歩き続ける内に初めのうちはしゃいでいたルシャの口数が徐々に減り、遂に無言になった。
訝しむ内に呼吸が乱れ始めた。疲れが残っていた、ということはあり得ない。
野柳には、寧ろ適した湿度と気温だったが、砂漠で育ち、砂漠に適応したルシャにとっては不慣れな環境だった。一応軽装にしていたが、それでも急激な変化は負担になっているだろう。
──もっと配慮がいったな……。
「なんだろう……師匠、なんか……息がしんどいです……」
「休もう。他に体調に変な所は?」
「わっかんないです……なんだろう暑いんだけどただ暑いのとはちがう……」
確かにここの不快指数は普通の人間ならかなりのものだ。
「湿度のせいだろうな。蒸すとか、蒸れるって言うんだ、こういう不快さは」
水浴びでもさせてやりたいが、斥候時点も今も、川や池は見当たらない。
仕方なく、横ばいに伸びた木の幹に二人で腰を下ろす。
日の出はまだ遠く、それに加えて暗闇に時折聞こえる不気味な鳴き声が神経を逆なでした。
「なんか……なんか変です……」
「水を飲み給え。暫く休んで回復しないようなら最悪引き返す」
水筒を渡すと、ルシャはがぶがぶ飲んだ。
「沢山飲むにしてもちょっとずつ飲み給え」
一応注意を入れるが聞こえていない。表情に精彩がない。こんなルシャを見るのは初めてだった。
「どうしたもんかな……」
街──というより壁までの道は現時点で、三分の一といったところだ。
順当に考えれば出発点に戻るしかない。そこでルシャを休ませつつ計画の練り直しだ。
半ば祈るような気持ちで、ルシャの顔色を伺った時。出し抜けに腰掛けていた木が、しなり、二人に巻き付いてきた。




