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組み上がったテント内で、野柳とルシャは食事をしながら話し込んでいた。
相変わらず食物は乏しかったが、水の不安がなくなったのは大きい。
話題の中心は今後のことで、傍らには資料が開かれている。
密林の地域はそもそも存在こそ知っていたものの、ルシャが行ったことのないような遠方にあったらしい。
しかしこの世界では地形や気候は魔神の眷属のようなもので、魔神の移動に伴って生態系ごと移動することは稀ではあるが、起こり得ることらしい。
密林に位置する魔物たちは当然、乾きに位置していない。ここから先は警戒を厳にして進まなければならないが──
「斥候からは敵影なし、ということだ」
野柳はふう、と一息をつく。
「じゃあ安心して探検できますね!!」
「遊びじゃないですからね一応言っとくけど」
野柳は食い気味に釘を刺す。ルシャは、まだ余力があるらしくまだ見ぬ密林に想いを馳せてうきうきしている。
敵は見当たらないというだけで、まだ罠はあるかも知れない。現に壁の攻略方法はまだ見つかっていないのだ。明るく元気なのは良いが、油断はできない。
「あ、それたぶん、なんかの魔神の御利益だと思いますよ!! なんだろう……鍵か壁かな……!?」
「密林には鍵やら壁やらの魔神がついて回ってるのかね? 密林は初めてと言ってなかったっけか」
ルシャの言によれば、概念系の魔神は人との結びつきが強く、本体がどこに居ても供物や儀式などの条件さえ満たされれば恩恵を受けられる者が多いらしい。
「魔皇朝を裏切ると自動的に死ぬのもその類か……だとして前の要塞には何で施されてなかったのか……」
「これも多分ですけど、何かしらの魔神の御利益は受けてたと思います!! 師匠の力の前に無力だっただけで!!」
「誉めてる?」
「はい!!」
「よろしい。もっと誉めなさい」
「え、えぇ」
「冗談はさておき」
──ノッてくれてもいいじゃん……
「どの魔神かは勿論、儀式や供物やらの条件で発動する御利益とやらの内容も変わってくるわけかね?」
「はい!! 他の魔神の加護を受けてると、そことも相性があったりします!! 仲良しの魔神だと贔屓されたり、逆に仲悪かったりするとそっぽ向かれたり祟られたりとか!!」
「なるほどな……」
そうこうする内に、斥候に出した分身が戻ってきた。
「今日はデザートがあるな」
分身から受け取った果実一つ、ルシャに投げ渡す。若干の戸惑いを見せつつ、その赤と黄のまだら模様の果実を少しかじってみる。
「凄い……! これ凄いおいしいですよ!!」
ぱっと華やいだ声を上げると、今度は夢中でかじる。
それを苦笑混じりに眺めながら、野柳は自分の実を手の内でくるくる回した。




