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ルシャと野柳は組み上がったテントの前で、組み手を行っていた。
「どうしたどうした!? さっきはまだまだ休憩要らないと粋がってたよなァ!?」
「うぐぐ」
もう何度目か解らぬ程、ルシャは野柳に投げられ、あるいは地に抑えられていた。言うまでもなく、実戦なら即敗北である。
その度に、野柳に不安が過る。矢張り村に帰すべきではないか。自分一人で全てカタをつけるべきではないか。勇者と名乗りさえしなければそれでいいのではないか、と。
「まだまだ!!」
その度、この掛け声と共に仕切り直す。
ガッツがある。同じミスをするまいという向上心がある。
だが如何せんフェイントや、咄嗟のレンジの切り替えなど、わかりやすい難点が見え隠れしている。
まだ実戦では援護に徹してもらうしかない。
「あ!!! 師匠今のヒキョーですよ!!!」
「当然だ。敵をなんだと思ってる」
実戦はスポーツや格闘技ではない。
殺し合いなのだ。
そして野柳は敵の性質をこの数日で垣間見ている。
卑劣で。残忍で。目的の為には何者をも踏みにじる。敵は間違いなく、かつて己が所属した組織と同じ本質を持っている。
──それに打ち克つようこの娘を鍛え抜かねば。
その一心で野柳は心を鬼にしていた。




