5-2
野柳に指定されたルートを通って外に出る。
準備を終えた野柳が待っていた。
「誰にも見られなかったかね?」
口調は穏やかだが、表情に険しいものが紛れていた。
「はい!」
ルシャは元気に答えた。
「声が大きい。そろそろみんな起き出してくる頃だ。発つぞ」
そう言うと、野柳は行き先も告げず、歩きだす。
城塞から少し離れた所で、ルシャは聞く。
「砂鮫は呼ばなくて良いんですか?」
「地図で確認したんだが、徒歩で充分だったし、足腰も鍛えておきたいからね」
「徒歩で充分…!?」
あの時、魔神が指した方角にある街には覚えがある。とても歩いて行ける距離ではない筈だ。
「先にムジャロップの町に向かう。当初の予定通りに」
「で、でも!!」
野柳は歩みを止めない。ルシャが立ち止まっても、振り返ることもしない。
「予定に変更はない」
尚も歩き続ける野柳に、抗議の声をあげようとした時、
「分身と意識の共有をしてるのは説明したね」
野柳が訥々と語り始めた。
「あまり距離が離れるとリンクが途切れるんだ。予定通りムジャロップに着けばそこでまた分身を作って中継させられる。立ち寄る所で中継役の分身を作るのが重要なんだ。途切れないようにね。指揮官に化けた方も、新しく分身を作ってそれは村の監視に向う」
「それって……」
「もしルシャの魔神の探知が妨害されても、村の様子が解るということだ」
野柳は歩みを緩めない。しっかり着いていかないと、聞き逃してしまいそうな説明だ。
そして聞き逃せば、もう一度繰り返してはくれないだろう。
正直言って、野柳が何を考え、何を思っているのか、ルシャには測りきれない。
しかし、彼が深く傷ついていること。少なくともルシャや、村や、この世界のことを想っていることは信じられる……と、思う。
重い荷物を背負いながら、ルシャは野柳に、遅れず着いていく。




