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4-21

 モグランダーには、作戦遂行の為の追加改造があることを伝えた。


 リオーク他、ヒーロー質との激しい戦闘が予想される為、実験も兼ね新型のアタッチメントを装備するのだ、と。嘘はなかった。



 モグランダーがコアへの書き込みではなく、身体を弄ることに疑問を覚えた時には既に治療台の上で、拘束済みだった。


「私の案を実現する為にはコアへの書き込みでは都合が悪くてね……」


 手術台の傍らで、野柳が含みを持って答える。


「あとは……そうだな、君が私達に伏せていることがあるように、私達も君に伏せていることがあるということさ」


 モグランダーが瞠目した。身体を攀じるが時すでに遅く。胴に、腕に、足に周った輪は怪人の膂力を抑え込むに充分過ぎる強度を備えている。


「まぁそう慌てることはない。これからじっくり償って貰うんだ。閣下もそれで咎め立てする必要はないと仰っている。私の交渉の賜物だよ。感謝してくれたまえ。私にも、温情溢るる閣下にもね」


「何を……企んでやがる……」


 悪足掻きを続けながらモグランダーが絞り出す。


「そうだそうだそうだった! 事前説明との変更点を教えておかなきゃならなかったね! まずヒーロー共との激しい戦闘、これは変更ナシだ。しかし手順が大幅に異なる」


 わざとらしく神経を逆撫でるよう野柳はまくし立てる。

 

「なんせ此処に彼らとの強固なパイプを築き上げた人物が居るんだから! そのパイプを利用しない手はないからね! それに伴って戦闘プランにも変更がある。今回の手術もそれにまつわるものだよ!」


 一転、声をひそめる。


「まずおいたが出来ないように君の手脚を切り落とす。どこでも潜れる能力は惜しいがね。その代わりにアタッチメントを噛ませて培養した私の身体で作った新しい手脚をくっつける。少々痛むだろうが我慢してくれたまえ」


 モグランダーの顔は毛むくじゃらだが、それでも血の気が引いたのが見て取れた。


「戦闘プランはシンプルだよ。君は必死に“命乞いや自己犠牲の演技”をしてもらう。正義の味方たるリオークは手出しできなかったり躊躇したり、“演技”と知らず君を助け出そうとするだろう。お優しいことにね。そうして生まれた隙を突き私が手脚を操って彼を倒す」


 野柳の言葉に応じて、手術台の下から冗談じみたサイズの回転鋸が四つ飛び出す。


「少々痛むがこれで情報漏洩がチャラになるんだ。安いものだろう。作戦が無事終わったら私の手足が君の面倒を全てみてやる。組織の仕事はモチロン、炊事に洗濯、風呂トイレまで、全てね。君は人間態でも毛深いからな。しっかり洗ってやるとも」


 野柳が指を弾くと鋸は回転を始める。ハム音が轟き、手術台を揺らすがモグランダーは何も言わない。


 微かな苛立ちを覚える。


「青くなってる割には落ち着いてるじゃないか。殊勝なことだね」


「その内こうなるとは思ってたからな」


「ますますもって立派なことだ……“調整”に不備があったのかな」


「俺は洗脳されたままだとも。ただな、普通に、論理的に考えりゃ余程のバカでなきゃ気付く筈だぜ。こんなひでぇことばかり繰り返しやがる“組織”の“理想の未来”がロクなモンじゃねぇってことはな!!」


 微かに。野柳の胸の奥に痛みがあった。


「なるほど。私とは正反対というワケだな。私は例え“調整”などなくとも、知りさえすれば“組織”の為に身を粉にして働き“未来”を熱望した筈だからね!」


 野柳は怒声で胸の疼きをかき消した。それが引き返せる最後の瞬間だった。


「始めようか。次の手術も控えていることだしね」


 言って、隣の部屋へ視線をやる。モグランダーが釣られて首をめぐらす。


「まさか」


 平静さを取り戻しつつあったモグランダーが一転、絶望に顔を歪める。


 それで野柳は溜飲を下げた。


「お前、ほんとに悪魔に魂を売っちまったんだな」


 声には絶望と、野柳を哀れむような響きがあった。


「悪魔には売ってないなぁ! 私の魂の買い手は! “組織”だよ!!」


 回転鋸のアームが動く。


「やめろ」


 次いで。ハム音を凌ぐモグランダーの絶叫。鮮血。



 作戦は程々に上手く行った。リオークを撃破には至らなかったが、かなり追い込むことが出来た。


 その成果がさらなる作戦に繋がっていったのだ。


──何故。引き返さなかったのか。

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