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シャタールの家にはすぐ着いた。
他の家の群れとは離れた所にぽつんと、彼女のこじんまりとした石造りの家はあった。
外観は傷んで見えたが、中に入って見ると清潔で、よく片付いていた。必要なものしかない室内は殺風景ですらあった。
壁に設えられた黄金色の五つのベルだけが異質な光を放っていた。
「どうぞ!! こんなものしか出せないんですけど!!」
出された料理は簡素だった。薄く、具の無いスープとパンの様な食べ物。異様に固く、スープで湿らせなければ噛み切ることもできない。
それでも口から物を食べることすら久しぶりに思えて、野柳にはありがたかった。
いやがらせでなければ、この食事の粗末さが、村の困窮ぶりを表していた。
パンの最後の一欠をスープで流し込む。
「重ね重ねありがとう。いくら感謝しても足りない」
「いえ!! あの変わりにと言ってはなんなんですけど! 村の人達のこと、悪く思わないで欲しいんです!!」
相変わらずの声量と、予想していなかった言葉だった。どう言ったものか迷っていると、シャタールはやや切羽詰まった顔で更に言い募った。
「ホントは親切な人達なんです!! 余所者の私にも良くしてくれたし!! ウチにまだ食べ物があるのもみんなに分けて貰ったからだし!! 今はただ……オアシスを取られて……その、追い詰められてるだけで!!!」
「信じよう」
野柳は、組織に身を置いていた時の卑劣な作戦を思う。
如何にして騙し、出し抜き、利用し尽くすか。それをずっと考えていた。
シャタールの目の切実さ、真っ直ぐな声。
裏があるなら素晴らしい役者だと思う。或いはこの娘自身騙されているか。
だが柳はそれらの思考を隅に置いて、信じたいと思った。
もう永いこと、組織の外の人間を信じるということをしていなかった。