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「師匠、それ、は……?」
ヒーローショーの見物料、という誤魔化しはきくまい。
ルシャの聡さや、後で村人に聞けばすぐ解ることだ。何より良い機会だと思った。
「良いデモンストレーションになったようだ。オアシスを取り戻すと言ったら自主的に分けてくれたよ」
「お芝居って……」
「言ってない。その方がすんなりいく。不誠実とは思うがね」
ルシャが言葉を探している。
「君に言っていなかったことがある。私は、元の世界では操られ、ある組織に奉仕していた。悪の組織だ」
「悪の、組織……」
「悪質性は魔皇朝とそう変わらないと思ってくれていい。人々を踏み躙りながら世界を手に入れようとする組織だった。そこで私は、許されないことを沢山してきてね」
出来る限り、淡々と話す。露悪的になっても、感傷的になってもいけない。どちらに振れることも、自分に許さない。
「騙りなんかは序の口でね。破壊工作、人攫い、拷問……はこの間見せたね。心の位置をズラされてはいたが、しっかり自我はあった。これで世の中良くなるんなら、と喜んでやっていたよ」
ルシャは言葉をなくしてしまった。ただただ、野柳を見つめている。
具体的な事例には触れていないにも関わらず、走馬灯のようにあの頃の記憶が蘇る。野柳を責める目。野柳を恐れる目。怒りに燃え野柳を追う、目。
それでも平静を保つ。
「ここに送られる直前、正気に戻った時には……取り戻した正気をそのまま放り出したかったよ。でも償うチャンスを貰った」
「なら……!」
「だから必ず魔皇朝は倒す。どんな手段を使っても絶対にだ。前の組織で学んだ手段も、使えるものは全て使う。私の良心の許す限りね」
ルシャは、出しかけた言葉を引っ込めた。
幸か不幸か野柳の決意が伝わったのだ。幸か、不幸か。
「だが気に入らなければそれで構わない。いつでも私を切ってくれていいし、殺した方が良いと思えばそうしてくれ。ルシャの能力ならそれが出来る。今から方法を説明する。よく聞いてくれ」
それを聞いた途端、ルシャはすぐに耳を塞ぎ、目を瞑った。見ない、聞かない、調べないの姿勢だ。
野柳も性急過ぎたが、ルシャも甘い。しかし、野柳は我知らず、薄く笑っていた。今はその甘さ、優しさが嬉しかった。
しかし、そのままにはしておけない。人の心を操る魔神遣いがいればまた洗脳し、前の世界での二の轍を踏む可能性もある。
書面にして、いざという時に備える必要がある。




