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野柳はランプの灯で村の者に用意してもらった資料を読んでいた。
魔神の伝承と歴史に関するもの、この近辺の動植物に関するものである。手で写し、製本された素朴な本だった。話し言葉が理解出来たように、書き文字も難なく読み取れた。目を通した感じ、価値観の著しい乖離はない。野柳の良いとすることはこの世界においても良いとされている。
魔神の神話はそのまま歴史と地続きで、どこまでが実際の史実で、どこまでが創作なのか見極めることは困難だった。今日のように姿を現すことは稀ながら、時折あり、信仰されたり、畏れられたりしている。
その種類は多岐に渡り、森羅万象あらゆるものにそれぞれ司る魔神がいるとされている。
魔神が生まれたことで発生した事象も、人の発明に伴って生まれた魔神も、伝承には出てくる。
魔獣が試練などを経て魔神となることもあるそうだ。そうなると、魔神と魔獣の違いはどこにあるのか疑問だが、一旦捨て置く。
数多の魔神が居て、人間社会に干渉するのはその中の極一部ということだった。
それぞれの気性で友好的だったり敵対的だったり、何を考えているのか全く解らないものもいる、ということがざっと読んで解った。
用意してくれたのは資料だけではない。旅の食料と衣類もだ。野柳に突っ掛って来ていた男まで、余っているからと供出してくれた。最初に見捨てようとした罪滅ぼしなのかもしれない。
ページを捲る手をふと安め、寝台に眠るルシャを見る。
ランプの灯りに照らされたルシャは、息を飲む程美しい。
どんな夢を見ているのか、普段の無邪気な顔とも、戦闘時の張り詰めた表情とも違う、切なく、大人びた表情を見せている。
村人に投げかけられた言葉が脳裏を駆ける。
確かに変な気を起こしてしまいそうな色気がある。
しかし野柳にはその心配はない。改造手術の際に生殖機能を完全に除かれたからだ。
「ん、うぅ」
見惚れていると、ルシャが寝返りを打った。野柳はまた資料に目を落とす。




