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2


 と、口内に多量の水が注ぎ込まれた。


「!? がぼっごぼっ!! ごぼっ!! ごぼ!!!!」


 野柳の口は受け入れる準備が整っていない。


 急くように注ぎ込まれた水は気管と食道を区別せず侵入していく。


「がばっ! ごぼぼっ!! がはっ」


 野柳は盛大にむせた。


 もんどり打つ野柳を見て、水差しの手は止まった。 


「ご、ごめんなさい!!」


 水をくれたのは可愛らしい少女だった。


 ターバンから見え隠れする銀の髪は短い。


 素直そうなどんぐり眼も、形の良い鼻も、少し乾いた唇も、柳の胸に届くかどうかという背丈も。


 大人であろうと踏ん張っている少女のそれだった。


 元の世界ではエジプトでよく見られるガラベーヤに似た白い服に、僅かにのぞく褐色の肌が眩しかった。


 見惚れている内に息が幾分整った。


 死にかけの自分に貴重な水を分けてくれた。多少の不器用さなど問題ではない。


「ありがとう、助かっ」


「!! もっとどうぞ!!」


 感謝の言葉に少女の目が輝く。また口に水差しが差し込まれる。


「ちょっと待っっがぼっごぼ」


 聞こえて居ないのか水差しの角度が急だ。話してる途中だから水はやはり色々な所に入る。


「がほっご! 落ち着い、落ち着きなさごぼぼ落ち着け一旦!!!!」


 口端から鼻からみっともなく水が溢れてやっと、水差しは離れた。


 野柳は顔を拭いながら思う。


 この娘は──善意は素晴らしいが……多少不器用程度ではない。大慌ての粗忽ものだ、と。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あれガラベーヤっていうのか……勉強になります。
[良い点] 地の文がしっかりとしており、読み応えがありました。 まだまだ、世界観が掴めないですがゆっくり読んでいきます! [気になる点] 改行していないのがもったいないですね。 読み辛くなってしまって…
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