3-5
青年の言葉に従って、野柳は目につく料理を摘んで器に入れていく。
その途中であっても、住民達は気安く話しかけてきてくれた。
「これ食べるンならこっちと合わせて食べなきゃダメだよ」
と言って料理を器に放り込まれたり。
「気がきかねぇな。誰も飲みモン渡さねぇのか」
と言ってコップを手渡してきたり。
その他色々。
不快感は無かった。
器に料理が食べ物が溜まって来たので、石造りのベンチに腰を下ろす。
──縁日みたいだな。
和やかな喧騒は幼い頃の……幸せな記憶を思い起こさせ、野柳を感傷的な気分にさせた。
こんな自分に幸福な時間があったことさえ、いたたまれなく思える。
コップをぐっと握り、その気分ごと、水で流し込む。
料理を摘みながら、広場の様子を観察してみる。
テントは、いくつかブロック分けがなされており、端々に設けられた雨樋が壺に繋がり雨水を貯めていた。
どう見分けているのか、満杯になった壺は火にかけられ煮沸されている。
料理人たちは、主食にあたるものの調理は終わったようで、小粒なデザートらしいものをせっせと作っている。
好ましい賑わいではあった。しかし。
──無理をしている。
子どもらは、無邪気にはしゃいでいる。大人たちは、子どもらを不安がらせぬよう、無理をしている。
作り笑いができないものは酒を飲んでいる。器の中身を空にするころにはそう確信していた。




