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重い沈黙を引きずりながら村に帰ると、喧騒が聞こえる。
目を凝らすと人だかりが出来ているのが見えた。
更に近づいてみると、広場にテントが張られているのが見える。
「あれは!」
ルシャの声が跳ねた。と、野柳の手を取る。
「師匠!! 急ぎましょう!!!」
「ちょ、ちょっと!?」
そして駆け出した。
手を引かれて人だかりの中に分け入ってみれば、テントの下では料理が作られ、振る舞われていた。
「やってる!!」
「おぉ! ルシャかい」
調理の切り盛りをする恰幅の良い男性がルシャの声を聞きつける。濃い顔立ちのその男は穏やかな口調で言った。
「待ちわびた雨だからね。やっと収穫できたのも合わせて、保存食が駄目になる前にやっちまおうという話でね」
調理場の周りのテーブルには、所狭しと料理が並んでいた。
どこにあったのか、と思うような豪奢な料理を住民達は遠慮なく取っていく。
一品減る度に調理台からすぐ補充されるという有様だった。
「その人、誰だい? 見ない格好見ない顔だね」
男性の目がす、と鋭くなる。
「異世界から来た師匠です!!」
鋭くなった目が訝しむ表情に変わる。
「野柳と申します!! ルシャくんにはお世話になってます!!」
この上はヤケクソでのっかるしかなく、野柳は捨て鉢に名乗った。




