2-15
止め処なく、血が溢れ野柳へと降り注ぐ。
城雲の身体が手足から順に、硬質化を始める。金属ような光沢はなく朽木のような脆い色で、見る間呻きと共に砕け散っていく。
元の世界で悪事を働いていた時、幾度も人の死を見て来た。
加工された野柳の心は無感情に、あるいは嗜虐的な喜びをもってそれを眺めていた。
「あぁ……あああああ……!」
正気の心で、目の当たりにするのは初めてのことだった。
組織の怪人には、保険がある。条件付きだが、深刻なダメージを負っても、手順を踏めば記憶と能力をそのままに復活することができる。
頭では解っている。それでも、制止することもかなわず、再会したばかりの友が下した決断に、野柳は動揺を留められない。
「なんで……なんで、何でだ……!」
手をこまねいている間に、血の噴出も、身体の崩落も終わっていた。
顔に身体に降り注いだ血を払うこともせず、野柳は城雲の崩れた身体、その縫合跡のあったあたりを探る。
ほどなく、手のひらに収まる程度の、ソケットのついたカプセルが出てきた。
保険。怪人のコアであり、拡張ソフトでもある。
これを用いれば復活することも、他の怪人が能力を使うことも出来る。
忸怩たる思いで握り締める。
──ルシャを待たせ過ぎたな。
強引に思考を切り替え、その場を後にする。
開かずの扉と化していた大岩は、テコが備えられ、こちら側からなら用意に開けることが出来た。
覚束ない足取りで入口に戻る。
「あ、師匠! 師匠……!」
頷きで応えるが、血に濡れた姿に、ルシャの声色が変わる。
外は、雨脚が強くなっていた。
心配げなルシャの目線に答えずふらふらと、洞から出る。
無性に濡れたかった。
降りしきる雨が、血を洗い流してくれる。
「師匠、何が……?」
カプセルコアを示す。
「確かに古馴染みだったが、少々モメてね……今度はこちらに引き籠もってしまった」
厳密には違うが、ルシャに通じるよう説明するのは難しい。
「彼には彼の苦しみがある……責められんよ。こんな状態でも助けにはなってくれる」
そうだ。責めるべきではない。
それでも。




