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2-10


 翌朝は吹き付ける砂と日差しが厳しかった。


 野柳は以前の世界で作戦遂行中でも、朝昼晩の食事を欠かしたことがなかったから、朝が来ても食事を取らないのは少々堪えた。


 しかしルシャが食事を求めない以上我慢するしかない。


「師匠、大丈夫ですか!?」


 先を行くルシャが、心配そうに言う。


「ああ……。風が強いな」


 敢えてズラして答えた。これも嘘ではない

 まだ余裕はあるが、このまま乾燥すれば充分な戦闘は出来なくなっていくだろう。


「魔神の力で、風を抑えられるか試してみます!!」


「ありがたい……が、試すだけで良い。耐えられる範疇だ。無駄な体力消費は避けなさい」


 ルシャが頷くと風が凪いだ。


 暫く歩く内にまた元のように強い風が吹き始める。


「できる事は……できるみたいです!」


 やはり大掛かりなことは少なからず消耗するらしい。ルシャの痩せ我慢が察せられた。緊急時に使うに留めるべきだろう。



 村の有様は酷いものだった。片付けられる気配もなく堆積したゴミ。枯れ朽ちた井戸。半壊した石造りの家から警戒するような視線が二人に投げかけられている。死んでいるのか行き倒れているのか判断の付かない人。駆け寄って無事を確かめたいが、押し留めた。水も薬も食物も、何の持ち合わせもない。


 今は、「ハズレの勇者」と会い、その後にオアシスを解放しなければ。


 ふと、ルシャが目で問い掛けてくる。


 ……確かに、気候を操れるということは、今、この村に雨の恵みをもたらすこともできるだろう。


 「ハズレの勇者」が味方とは限らない。村の状態を見ればオアシス解放は急務だ。ここで体力を使わせて良いものだろうか。


 ここでその場しのぎをして、簡単にオアシス解放が出来るものなのか?


──いや。


「君自身で決めなさい」


 勇者はルシャだ。野柳はサポートに過ぎない。重大な決断はルシャがすべきだし、それにも慣れなくてはいけない。その責任を取ることにも。


 途端に、野柳の雫が頬を濡らした。一滴、二滴と続け様に地を打ったかと思うと。


 あっという間に本降りになった。


 二人に投げられていた視線は天に向かい、死んだかに見えていた行き倒れはよろよろと動き出す。


 呆気に取られていた人々は、桶や壺を担ぎだし、水の確保を急ぐ。


 ルシャは、若干の疲れが表情に見えたが。


 それを上回って喜びが満面の笑顔に溢れていた。


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