2-5
ルシャの突きが、蹴りが飛んでくる。
一目で我流と解ったが筋は良い。
何より、一手一手に熱がある。まるで野柳のかつての宿敵のように。
しかし、技と技の連携はやや怪しい。いつもタイムラグのある円月輪と合わせていたのだろう。それがない分勝手が違うのだ。夜通し筋トレに励んでいたのも影響しているかもしれない。
ルシャが必死でやっているのは解ったが、野柳にモロに当たることはない。全て躱し、あるいはいなす。
隙が生まれる度に、それを指摘するように野柳は攻撃を入れた。
後に響くことはないがそれでも痛みはある筈だ。
それも四度五度と、蓄積してくればばかにならない。
ルシャはそれに怯まない。歯を食いしばり打ってくる。
野柳はそれに胸を打たれるが、ここで手心を加える訳にはいかない。
打ち込む速度が緩くなった所で、懐に潜り込み、ルシャの服の袖を、襟を取る。足を腹部に当て、そして。
巴投げ。野柳の柔術は見よう見真似の不細工なモノだったが、身体能力、そして場数がそれを可能にした。
宙を舞うルシャ目掛けて、野柳は身体の一部を液状化して放つ。ヘビ人間にしたように。確かな殺意を込めて。