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到着するとまず、ルシャがヘビ人間の墓標の前に立って両の手を組み、何事か祝詞を捧げた。
「それがここのお墓参りの作法?」
「はい! 近くに寄ったらやるんです!! ふつうは仲良い人だけだけど……」
──死んだら恨みっこなし!
思ったよりルシャは人の話を聞いてくれているようだった。
聞けば、この世界に命日の概念はないらしく、こうして近くに寄ったり折に触れて墓参りをする習わしらしい。手順を聞いて、野柳も拝む。
その後、ルシャの実力を見る為に組手を行うことになった。
「ルシャはその、魔神遣いってことでいいのかな?」
「は、はい! でも、その、聞いてたかもですけど、私のはハズレらしくて……」
面白いようにルシャの目は泳いだ。
「何を司っているのかね?」
「風を……」
「なるほど」
──やはりそういう認識か。
「まず素の格闘スキルが見たい。武器と魔神の力ナシで掛かってきなさい」
「! 師匠にですか!?」
ルシャが頓狂な声を上げる。
「そうだ。どこからでも良い。但し」
野柳の突きが呆けたルシャの顔を掠める。
「全力で。殺す気で来たまえ。手を抜いてると判断したら怪我では済まさん」
瞬間、す、とルシャの表情が変わった。
これが出来る時点でまず及第点と言えた。