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兎に角ルシャの意欲は充分だ。これを逃がすテはない。
ルシャに半ば急かされるようにして、野柳は外に出た。
まずはルシャの実力を知る必要がある。昨日、ヘビと闘った場所で組手をする心づもりだった。
歩きながら、気になっていたことを尋ねてみる。
「つかぬことを聞くんだが……」
「?」
野柳をして、心の準備の要る質問だった。
「朝起きたら体が綺麗になっていたんだが……拭いてくれたりした?」
「? なんでですか!?」
ルシャはきょとんとしている。
「いや、水浴びもした覚えもないのに汗臭くなってないから……」
それを聞いて腑に落ちたらしい。
「ああ! 師匠の世界には砂布団、ないんですか!?」
「あれ、砂布団って言うのか」
「汚れとか汗とか! あれが吸い取ってくれるんですよ! 砂は定期で変えなきゃですけど!」
「なるほど!!」
どういう仕組みなのかは気になったが、謎が一つ解けた。
他にも気になることは無数にあるが、一番の気がかりではあった。少なくとも年頃の娘に身体を拭かせるようなことになっていなくて良かった。
「家の中に砂が入って来てないのも、何かカラクリがあるのかい?」
「あ! 言われてみればいつも掃除する前から家の中であまり砂は見ない気がします!!」
「……」
道中ではその他、ヘビ人間が語っていたことに間違いのないことを確認した。
目的地についてみると昨日に比べて、風は優しい。そよ風と言っていいくらいだ。これで、野柳は一つ確信を得た。