9
喉奥が見えた時、野柳は変身。そして、手首の先を切り離しヘビ人間の口内目掛け飛ばした。
「!?」
「捕まったのはお前の方だ蛇蝎」
「なんだと……?」
ヘビ人間の動きが止まった。
「私の身体の一部お前の腹の中に送り込んだのだよ。やろうと思えばすぐに内側からぐじゃぐじゃに引っかきまわせる」
「ハッタリを……!」
野柳は切り離された手を意識した。
途端に、ヘビ人間は呻き膝を着いた。
「信じたか?」
ヘビ人間は野柳を睨む。
「だとして、お前はお前で俺の毒受けてんだろうが!」
「受けたとも。血清を作る為にね」
ヘビは放すまいときつく巻き付いていたが、軟体の特性を活かしてスルりと抜ける。
ヘビ人間が動く気配を見せたので、死なない程度、動けない程度にまたハラワタを痛めてやる。
毒を受けて倒れたル・シャタールに歩み寄る。
「大丈夫かね? ル・シャタール」
そっと抱き抱えてみる。既にかなり毒が回っているらしく、息も絶え絶えといった様子だった。
苦し気な、しかし精いっぱいの笑みを浮かべる。
「ルシャと呼んでください」
「今言う? それ……」
呆れるべきか、感心するべきか。野柳は苦笑を浮かべた。
ルシャの口の上で、握りこぶしを作る。
「今しばらく辛抱したまえ……!」
――……色々な意味で!
握りこぶしに力を込めると、底に雫が集まっていく。野柳の体内で生成した血清だ。
一滴、二滴と、ルシャの口内に落ちていく。
しばらく続けると、徐々に呼吸が穏やかになっていく。
――効いてる。
そう確信して、砂に横たえた。
「さて」
うずくまるヘビ人間に向かい合う。
「聞きたいことがいくつかある」