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8話 解呪ノ刻

 目の前に現れた漆黒の巨体。荒々しい鼻息を上げながら、こちらに向かって威嚇をするかのように、立ちはだかるダークドラゴンを前に、俺も思わず息をのんでしまう。今の身体で立ち向かうなど、到底不可能であろう。不甲斐ないが、ソールに頼るしかないというのが、現状である。


「リア!気をつけて!来るよ!」


 ソールは俺に向かって叫ぶと、そのままダークドラゴン相手に突っ込んでいった。今の俺に出来る事、それはソールの邪魔をしないと言うことなのである。俺には見ていることしか出来ないのだ。


 剣を抜いて、一気にダークドラゴンとの距離を詰めようとするソール。だが、ダークドラゴンの吐く炎に、ソールですらかわすのが精一杯というところであった。今までの魔獣達とは圧倒的に格が違う。


「ソール!しっぽ!」


 炎に気を取られていると、太いしっぽでなぎ払うかのような攻撃がソールに向かって飛んでいく。それをソールは何とかかわしたが、一向に攻撃を出来そうな隙は見つからない。


「くっ……」


「ソール大丈夫!?」


 何とか体勢を立て直し、再びダークドラゴンと相対したソールは、俺の方に向けて叫んだ。


「大丈夫!リアは下がってて!」


 再び、ダークドラゴンの激しい炎がソールめがけて飛んできた。


 対処こそ今は出来ているが、ソールの動きはだんだんと遅くなっている。一つはここまで1人で戦ってきた疲れ、また、洞窟の奥に進むにすれだんだんと湿気が上がっていき、地面が滑りやすくなっているというのも大きいだろう。そして何より、ダークドラゴンの吐く炎で、周囲の温度は次第に上がっていき、気付けば、高温多湿な過酷な環境へと変わっていた。こんな中戦うのでは、ソールの体力の消耗もいつも以上に激しいものになる。いずれにしても、このままではますます不利な状況になってしまう。


 どうする……何かあるか……


 せめて、せめて魔法が使えたなら……!


 目の前で自分のために命がけで戦ってくれる少女を見ていることしか出来ないなんて……


「あっ!!」


 その時、急にソールの声が洞窟内へと響いた。少し遅れて、剣が地面に落ちる音が続く。ダークドラゴンの攻撃を防ごうとしたソールの剣は、手が滑ったのだろうか、ソールの手を離れ、離れた地面へと落ちたのである。


――まずい!


 その光景を見た、俺は考えるよりも先に身体が動いていた。どう対処するかなんて、全く考えてはいなかった。それでも、偶然にも俺の方に転がってきたソールの剣を拾い、俺の足はただダークドラゴンの方へと向いていた。


――間に合え!


「来ちゃ駄目!リア!」


 ダークドラゴンも、ソールの剣が手を離れたことを理解していたのだろう。ソールのそばへと近寄り、より強力な攻撃でソールを仕留めんと、襲いかかろうとしていた。



 ソールは、近づいてきたダークドラゴンに気が付いた時、もうすでに、回避するのは難しい事を理解したのだ。リアの方に気を取られてしまい、完全に隙が出来たのだ。思わず身がすくんでしまい、動けなくなってしまったソールに、ダークドラゴンは容赦なく襲いかかる。


――やられる……!


 思わず目を瞑ってしまったソールは、すぐに身体に大量の液体がかかったことがわかった。一体これはなんなのか……自分の血なんだろうか、いやそれにしては痛みも何もない。


 おそるおそるソールは閉じていた目を開く。すると目の前には、先ほどまで自分が握っていた剣を持ち、自分とダークドラゴンの間に立ちはだかる少女の姿があったのだ。


「大丈夫?ソール!?」


「リア……!」


 笑顔で振り向いたリアは、全身を血で染めていた。剣先から滴る大量の血の滴。だが、どうやらリアのものでもなさそうである。じゃあ一体…… ソールの頭はすっかり混乱に陥っていた。



 身体が軽い……


 ソールをかばおうと、必死に剣を握り、俺は、ダークドラゴンとソールの間へと飛び込んだのだ。ダークドラゴンはそんな事などお構いもせずに、俺もろともソールを仕留めんと、太い腕とツメを振り下ろしてきた。


 だが、それはダークドラゴンにとって悪手だったのだ。


 確かに、呪いにかかったままの俺の力では、ダークドラゴンの頑丈な皮膚の上からダメージを与える事は難しかっただろう。だけど、相手の力を利用できる状況であれば話は別だ。


 相手の攻撃に合わせて、カウンターを併せるように剣を置いてくる。それくらいなら、今の俺にも出来る。


 そして、待ちわびていたダークドラゴンの血。それがやっと手に入ったのだ。俺の身体に大量にかかったダークドラゴンの血。すぐに身体が軽くなった感触、そしてからの奥から魔力が溢れてくる感覚が得られたのだ。全盛期の頃までとは言えないが、それでも、6割程度はあるだろう。こうなればこっちのもんだ。まあ、身体は少女のままだけど、細かいことはどうでもいい。


「ソール!ありがとう!後はわたしに任せて!」


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