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6話 求めるもの


「リア!そろそろ!アーデント地方に入るよ!目的のルサカの村はあっち!ちょうどあの山の麓辺り!」


 ソールが指を差した先は、山々が連なっていた山岳地帯であった。先ほどまでの平野が広がっていた風景とは全く異なり、どこまでも広がる森、そして、その先には、地肌が見えた山々がそびえ立っている。


 ソールが指した方向へしばらく飛行を続けると、次第に少しずつ木々が少なくなっていくのがわかった。遙か遠方には、煙のようなものが空に伸びている様子もわかった。確かに、人が住んでいるであろう事は間違いない。


「リア!あの煙の場所!あそこがルサカの村だよ!」


 遂に目的地である。ワイバーンのお陰で、特にここまでは何事もなく無事に来られた。そっと村の方に降りようとすると、村人達が、俺達の方を困惑した様子で見ているのがわかった。


「ソール、なんか歓迎されてないみたいだけど……大丈夫かな?」


「こんなワイバーンに乗って誰か来るなんて、なかなか無いからね!大丈夫だよリア!」


 そう言うと、ソールは、ワイバーンから身を乗り出して、村人の方に大きく手を振った。

おーいというかけ声と共に、小さな身体をめいっぱいに使って手を振るソール。その姿を見た村人達が、一気に安堵した表情へと変わったのがわかった。


「なんだ、ソール!いきなり変なワイバーンが降りてこようとしていたから警戒したぞ!」


「ごめんごめん!ちょっと訳ありで!」


「ソールお姉ちゃん!来てくれたの!久しぶりだね!」


 すっかり村人達に囲まれたソールは、集まってくる村人に対しても優しい笑顔を向けていた。きっと、みんなから慕われているのだろう。それもソールの人徳のなせる技に違いない。そんな事を考えていると、いつのまにか話題は俺のことについて移っていたようだった。


「それでね……!あの子、リアって言うんだけど、魔女の呪いを受けてしまったみたいで……」


「なるほど、事情はわかった。それにしても因果なものだな……」


「ええ……」


 真面目な表情を浮かべながら、1人の村人と話すソール。相手の村人はおそらくこの村の村長か何かなのだろう。明らかに他の村人達とは身なりが異なっていた。


「いいだろう、だが気をつけていくんだぞソール。いくらお前とは言え、試練の洞窟を最後までたどり着いたものは、大賢者ホルムズ様しかいないのだからな」


 大賢者ホルムズ。その名は俺でも知っている。遙か昔に英雄としてたたえられたとされる偉大な魔道士。魔法使いならば誰もが憧れるような存在である。だが、言い方こそ悪いが、どうしてこんなアーデント地方の辺境の地とも言える場所に、ホルムズゆかりの地があるのだろうか。俺は全く状況を読み込めずにいたのだ。


「ねえ、ソール。試練の洞窟って?それに大賢者ホルムズってなんなの?」


 何とか状況を理解しようと、俺はソールへと問いかけた。すると、ソールは真面目な表情を浮かべながら、俺にその答えをかえしてくれた。


「大賢者ホルムズは、元々アーデント地方、それもこの辺りで修行を積んだと言われているの。そして、これから向かう試練の洞窟。そこには、大賢者様が残したとされる、最強の魔導書が眠っていると伝えられている」


「でも、どうして?ソールは魔法使いじゃないはず?なのに、なんで魔導書を?」


「それは、あなたがいるからよリア。あなたは呪いを受けて魔法が使えないようだけど……魔法の資質は、私が今まで見てきたどの魔法使いよりも優れている……」


「どうして、ソールはそこまでわたしに……?」


「いずれわかるわ。確かなことは、今のあなたには、私の力が必要で、来たるべき近い未来、私はあなたの力が必要と言うことだけ」


「わたしの力……?」


 パーティに役立たずと言われ、追放までされた俺に、ソールが求めるほどの価値なんてあるのだろうか。そもそも一体、ソールは何者なんだろうか?そんな疑問が俺の頭の中をぐるぐると巡る。だが、今考えても仕方の無いことであるのは確かだ。このままでは、本当に役立たずである。もうそんな扱いはごめんだ。


「大丈夫リア!私を信じて!今はまだ言えないけど……来たるべき時が来たら、必ずわかることだから……」


 ソールの目は真っ直ぐに、俺の目を見つめていた。彼女が嘘や出任せを言っているようにはとうてい感じられなかった。だから俺は信じることを決めた。もしかしたら、なんとか信じるものが欲しいと心の奥底では思っていたのかもしれない。今の俺にはソールしか、いなかったのだ。


「わかった!今は何も聞かないよソール!それに、わたしもソールを信じたいから!」


「ありがとう!リア!」


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