俺は祓い屋じゃなくて普通の高校生活を望みます
開いていただきありがとうございます。良ければ最後まで読んで文句を言っていただけるとありがたいです。
アドバイスを頂けたぶん作者は禿げます。嘘です。まだ高校生なので禿げたくはありません。でも次の小説の糧にします。
「少しお前好みな話があるんだ。隣のクラスの」
「俺はまだ何も聞くと言ってないぞ」
ニタニタしながら俺に話しかけてくる赤毛のイケメン、風屋颯太。颯太とは高校に入ってからの友人のため、半年の付き合いだ。
「まぁ聞けって。隣のクラスに背の低い赤羽奏って奴がいるだろ?」
赤羽奏。確か、髪は肩にかかる位の長さで背は148cm、顔は良いらしい。所謂、ロリと言うやつだろうか。まぁ噂に聞いた話だが。
「俺は自慢じゃないが、お前以外友達がいない」
まだ颯太が行くなら分かる。こいつならイメケンで女子ウケもいいからだ。
「そんなに僻むなって。お前だって、1位の次に頭がいいんだし、運動神経は普通にいい。お前の容姿も髪を上げれば、さして問題じゃないだろ」
「さして問題がなかったら友人がお前しかいないわけがないだよう」
確かに俺は頭はいいほうだ。運動も時々ある理由で走る羽目になっているからできないことは無い。後は髪をあげればいいのかもしれないが、それは出来ないし。
それに別に颯太がいれば他の人間と関わる必要は無い。人と関わるとその分面倒事が増える。なら関わらない方が得策だろう。
「お前が赤羽を助ければいいだろ。別に俺はとめない」
「それが出来たらやってるっての。今回のはお前しか出来ないことだ」
「ただの厨二病みたいな能力を持った俺にできることなんてねぇよ」
「まぁ聞けって。この間、友達と夏休みのときにここの近くのトンネルに行ったらしいんだ」
この近くのトンネルは使っていないものも合わせると何個もある。だがそんな中でひとつだけすぐ思い浮かぶものがある。
「その場所の名前は『旧杉町トンネル』」
杉町とはここの地名のことだ。トンネル自体は山にある。旧と着くだけあり、今は使われていない。
「このトンネルは知っての通り、昔、大きな事故があったんだ。トンネルにぶつかった車は大破。ここまでは、有り得ることだと思っただろう?でもトンネルの不思議はここからだ」
「傷がつかないんだろ?」
「おっ、知ってたか。それでそのあとも何回も同じように大破した事故が1ヶ月の間に50回弱あってな。最後に事故を起こした車は跡形もなく消えたってのが都市伝説だ」
明らかにおかしいことはトンネルに傷がつかないことと、事故の回数が異常な事だ。これに補足をすると、冬では無いため路面は凍っていないこと。
「それで赤羽はどうなったんだ?」
「赤羽は学校に来ている。いないのは友人だ」
「赤羽はどうにもなってないのか?」
「いや、赤羽は・・・・・・見た方が分かる」
そういうので席を立って隣の教室を覗きに行く。すると1箇所だけ、異常に人も、人でないものも集まっている場所があった。
「なぁ、赤羽、どうなっちまったんだよ!」
「奏ちゃん!返事してよ!」
一瞬だけ見えた赤羽は生気が抜けた顔をしていた。友人たちがいくら叩いても、びくとも動かない。かろうじて瞼が動いていることと、息を吸っていることが生きている証だろう。
「こういうことだ。どうだ、何かわかったか?」
「厨二病に何を求めてる。餅は餅屋だ。医者に連れていけ」
別に命に関わるものでは無い。人で無いやつはも依代を求めてきていたのか、魂があることを確認したら直ぐに去っていった。
「俺達もトンネル、行ってみようぜ」
「あほなことを言うな。ただの人間に何が出来る」
止めたはずなのに、颯太は真面目な顔をしてこう言った。
「それなら俺一人で行く。別に人助けをするんじゃない。そこで困っているのを俺が見捨てられなかっただけだ。柊慶太、お前は来なくていいからな」
そう言ってカバンに道具を入れ、帰る準備をする。
本当に行く気のようだ。そうすれば俺が動いてくれるとでも思ったのか?
「・・・・・・仕方ねぇ。勝手に行くなよ?ただのお前が行ったら本当に帰って来れなくなるぞ」
「そう言うと思ったぜ。祓い屋、柊家の力を見せてくれよ」
「祓い屋なんて大層なもんじゃない。ただの厨二病の力だ」
俺の家は先祖の時代から、祓い屋の力をそれほど使わずに生きてきた。そのせいか、俺には少しだけ祓い屋の血が濃く出てしまった。
「とりあえず俺の家にいったん行くぞ」
「なんだ?秘密兵器でも出すのか?」
「違う。玩具と薄い紙を取りに行くだけだ」
準備をして学校を出る。俺の家は学校とトンネルへに行く途中にある。
「なんでお前は祓い屋の力を隠してるんだ?」
「ひとつは単純に恥ずかしいからだ」
「祓い屋ってかっこいいじゃん。普通の人に見えないのが見えてるんだから」
「間違えて周りが見えてないものを見えるって言ったら恥ずかしいだろ」
昔何度も言い間違えたことがあった。今思えば目をつぶっていても見分けられる。だが昔は言い間違えたときは、厨二病と言っていたため、それが口癖になっていた。
「2つ目はなんだ?」
「2つ目は幽霊に見えていることがバレると、面倒なことになるからだ」
「面倒なこと?」
「奴らは自分のことを見えたり、話せたりする人間の方を好む」
俺だって別に素手で触れば祓えるわけがない。呪文を唱えたりというのもあるが、それよりもバレないようにした方が早い。
「お前の家、見えて来たんじゃないか?」
「お前俺の家来たことあったか?」
「ひょ、表札を見たんだよ」
どれだけ目がいいんだ。いや、俺の目が悪すぎるのか。まぁ、家もでかいしなぁ。所謂屋敷のようなサイズだ。
「少し外で待っててくれ。すぐ準備してくる」
颯太が首を縦に振ったのを確認して、門を開ける。
相変わらずでかい。東京ドームと比べたら小さいだろうけど、人が暮らすにはデカすぎる。
「おっ今日は帰ってくるの早いな。なんだ?サボったか?」
「単に寄り道をしてこなかっただけだよ。それよりも父さん、刀貸してくれないか?」
「刀?あぁ、父さんはもう使わないからやるよ」
そう言って歩いていく、俺の父、柊司の後ろを着いていく。
家に入るのかと思ったら、隣の倉庫に行き、扉を開けた。倉庫の中は暗く、ほこりっぽかった。当分開けていなかったんだろう。
しまってあるものには、御札が貼ってあったりして、非常に不気味だった。だが司はそんなことも気にせず奥に行き、ホコリを被った、傘でも入っていそうな袋を取り出した。それを投げてきた。
「ほれ、これが『祓い刀』だ。ところで何に使うんだ?」
舞ったホコリでの咳が収まったところで司の質問に答える。
「少し俺の周りに変なのが着いてるから、それを祓ってくるだけだよ」
「そうか。死にかけたら父さんを呼ぶんだぞー」
呼ぶ方法は幾つかある。
まずひとつはスマホ。だが大体心霊スポットでは圏外になるため使い物にならない。
2つ目は常にカバンに入っている式神を飛ばすことで、呼ぶことが出来る。一応カバンに式神と御札が入ってることを確認しておく。
前のふたつが使えないときの最終手段としては幽体離脱をする、という方法がある。でもこれは悪霊に俺の体が依代にされかねないので、やりたくはない。
まぁ、入られたとしても、祓えばいい訳だが。
「っと悪ぃな。待ったか?」
「いや、気にするな。それが秘密兵器の『祓い刀』か?」
「あぁ、そうだ」
名前を当てるなんて勘が鋭いな。俺も知らなかったのに。まぁ、別に安直な名前だから。
「よし行くか。日も暮れるし走るぞ」
「おぉ」
まだ季節は夏で、今は4時だ。まぁ、早い分にはいいが、何をそんなに急いでいるのか。
走ったら5分で着いた。
例の『旧杉町トンネル』は、看板は錆びていて、周りは森。空気はとても湿度が高く、スマホの電波も届かない。心霊スポットに来てしまったようだ。
「よし、入るぞ」
「そうだな」
躊躇せずに進む颯太に置いていかれないように手早く 刀を袋から外し、左手に持ちいつでも使えるようにする。刀の柄には呪文が書かれていて、意味的には悪霊に当たった時点で祓える的なものだ。
「雰囲気あるなぁ」
「なんでお前はそんなに躊躇なく進めるんだ?」
「お、俺はこういうの好きだからな」
確かに颯太は心霊系が好きだ。この間も彼女と一緒に心霊スポットに行くと言っていた。
その彼女というのは隣のクラスの赤羽奏。行くと言っていた場所は『旧杉町トンネル』。俺は止めたが、行ったらしい。きっと彼女も乗り気だったから引けなくなったのだろう。
さて、ここでひとつの矛盾が生まれる。俺が学校で喋っていた颯太は、行っていないと言っていた。だが、心霊好きな上に、彼女だけで心霊スポットに行かせるわけが無い。
それに彼女のことは赤羽ではなく奏と呼んでいた。
そんな推理にも満たないことを考えていると、いつの間にかトンネルに入って深いところまで来ていたようだ。もう暗くてお互いの顔も見えない。
「ところでここのトンネルの主って噂を知ってるか?」
「・・・・・・聞いたことないな」
「ここのトンネルの主は大層人を食べることが好きらしい。最近ではわざわざ人里に行ってまで美味しい獲物を取ることもしているらしい。でもどうやって人を連れてきていると思う?」
チェックメイトか。でも颯太を依代にしているうちは刀で切るわけには行かない。とりあえず会話を続ける。
「簡単だ、人を依代にしているんだろう?」
「そうだってな。そしてここの主の趣味も知っているか?」
「知らないな」
「怖がる人間を見るのが好きなんだよ。でも大抵は面白がってくる。だからこの間のおなごは霊感を与えてやった。そしたらあのザマだ」
そういう事か。霊が見えるようになってあんなふうになっていたのか。俺なら取り乱しているけどな。
「そろそろ種明かしをしてもいいか?」
「種、あかし?」
焦っている演技をする。きっとそっちの方が油断するだろう。そう思ったときに、颯太の体が青く光り出した
「私はお主の友人の颯太などではない。ここのトンネルにいるあく───────うぁぁぁぁぁぁ」
出てきたところを颯太の髪が当たりそうな位置で切る。すると幽霊本体の野太い声を上げ、痛そうに成仏した。
自己紹介なんてさせるとでも思ったのだろうか。俺だって死にたくないのだ。それに刀の扱いも慣れていないというのに。
「痛ってぇなぁ。って、ど、どうして奏からお前に変わってるんだ!」
頭をぶつけて意識を取り戻した颯太。
とりあえずは生きていたらしい。もし魂が抜けていたら爺ちゃんを連れてくることになりそうだった。
でも取り憑かれていたときの記憶はないようだ。俺のさして苦労もしていないが、ここまで来た労力を返して欲しい。
「元から俺と一緒に来ておいて何を言う」
「そうだったか?それよりもその刀は祓い屋のか?」
「あぁ、だが持ってきた意味もなかったな」
言っても、記憶がないのなら伝わらないと思うので、とりあえず嘘を伝えておく。
「早く帰るぞ。怖がって頭を打つくらいなんだから、心霊スポットなんて行くなっての」
「えー、俺の調子が悪かったんじゃないか?それに慶太がいれば怖いもの無しだろ?」
次は帰って来れなくても知らないぞ。
不満が浮かんだが、唯一の友人が生きてい、町に帰れたので許してやろう。
「それじゃあまた明日な」
「おぉ、今日は付き合ってくれてサンキュー」
俺の家は颯太の家に行くときも通り道なので途中で別れた。
無事帰ってきたことを伝えようと門を開けると、司と祖父の和人が仲良く縁側に座っていた。
「ただいまー。・・・・・・なんで2人で座ってるの?」
「慶太が帰ってこなきゃ、一大事じゃからな」
「もしけいに何かあれば、父さんは母さんに殺されるんだぞ」
そうか。大変だな。まぁ、2人とも俺の心配をしてくれていたようだ。ありがたいが、少し照れる。
「あっ、それと『祓い刀』?返しておくよ」
「あぁ、それか。それは爺さんが慶太にすり込んでやろう」
そう言って、シワを作り笑顔で手招く和人。怖いが、とりあえず刀をもって爺さんのとこに行く。
ちなみに和人の1個前の代までは祓い屋をしていたらしい。
「この刀は錆びないようになっとる。これで人を切ると、幽体離脱させられたりも出来るんじゃが、まぁ、よい。すり込むっていうのはお主の体から、自由に取り出せるようにするのじゃ」
「まぁ、つまりコンパクトにするってこと。いつでも好きなときに武装できるよ」
いや、相変わらず痛そうなんだが。すり込むってどうやるんだ?
刀を持っていない手で、俺の手をもつ。そしていきなり呪文を唱えだした。
「そんなに警戒しなくても大丈夫だって。この呪文を唱えながら、刃ごと手に差し込むと、祓い屋の血を継いでればいつでも取り出せるようになるから」
父さんが説明来終わったときには和人は俺の手に刀を入れていた。
本当にスルスルと入っていく。痛くはなく、見た目としてはスライムが物を吸い込むときのようだった。
そして、1分ぐらいで、柄まで全て入った。そしたら、黒いインクで刀の形をした紋章がでてきた。
「よし、完成じゃ!引き出し方は、手の平にある紋章を触りながら刀に名前を言えば出てくるぞ」
「名前は今すぐじゃなくていいから、つけとくんだよ?名前を決めたら、紋章を触りながら名前をいえばいいから」
「分かった。ありがとう、父さんと爺さん」
とりあえず司と和人に礼をいい、自分の部屋に行く。
相変わらず簡素な部屋だ。置いてあるものは着替えとものを置く棚とベットだけ。天井には気分的な問題で貼った御札。
「それにしてもついに俺も祓ってしまった」
今までは追われても逃げていた。御札を書いたり、呪文を覚えたりしても、結局は逃げてきた。これはいい機会だったかもしれない。
まぁ、別に祓い屋をする気はないんだがな。でも、もしものためときが考えられるので、刀につける名前は考えることにしよう。
「名前って言ってもなぁ。ペットでもないし」
そもそも刀に性別なんてあるのか?人っぽい名前をつければいいのか?
目を閉じて、一旦落ち着こうとしたら、そのまま寝てしまい、変な夢を見ることになった。
◇◇◇◇◇◇◇
「君が新しい持ち主?」
背の低い、幼稚園児のような男の子が暗闇の中に1人立っていた。髪はボサボサで、顔は真っ白。
「僕の名前は・・・・・・なくなっちゃった」
無くし物をしたように話す、幼児。
一見可愛かったが、そこに立っているだけで存在感があり、とてもただの幼児だとは思えない。
ここでひとつの仮説が思いついた。この幼児は俺の体に入っている刀の擬人化では無いだろうか。でも言葉を発せないため、確認する術がない。
「僕はみんなに使っては置いていかれてしまう。その度に名前が分かんなくなって。誰も僕と話してくれない。僕はこれだけ呼び掛けてるのに」
きっと俺の祖先も同じような体験をしたのだろう。そして話せずに死んでしまった。だから刀の幼児はこれだけ悲しそうな顔をしているのだろう。
俺は話したいと思った。純粋に話してみたいということと、話して名前をつけてあげれば悔いが残らないと思ったからだ。
「今回は黒髪の少年か。手は思っていたより小さかった気がする。背は高かったからきっと僕を引きづることはないかな」
思いついたことがある。この状態で幽体離脱したら会いに行けるのでは無いだろうか。
幽体離脱をするには体の力を抜いて、魂だけを宙に浮かせればいい。だが、もう今は浮いているような感覚なので上手くいくかは分からない。
とりあえず脱力をする。後は目の前にいる幼児のところに移動出来れば完璧だ。宙に浮く感覚で前に1歩踏み出す。
「動けた!」
「・・・・・・え?さっきまで見てた少年がなんで僕の世界にいるの?」
驚いて目を丸くしている。これまでにない経験をしたからだろう。俺も名前をつけていたら、夢の中で幽体離脱をしようなんて考えない。
だが、次この夢を見られるとは限らないため、試すだけ試したら出来た。
「俺の名前は柊慶太って言います。君の名前はなんですか?」
「僕は作られてから500年ぐらい経ったこの刀だよ。でも名前はないんだ・・・・・・ねぇ、僕に名前をつけてよ」
会話をするのが楽しいのだろう。目を輝かせながらこっちを見てくる。
というか、500歳ってどんな気分なんだろうか。
「どんな名前がいいですか?君は男の子っぽいのですか?それとも女の子っぽいのですか?」
「慶太がつけてくれるのならなんでもいいよ!でも、できるならかっこいい方がいいかなぁ♪」
とても期待をされているようだ。どんどんと500歳が5歳に見えてくる。どんどん言葉が跳ねていく。
かっこいい名前かぁ。刀身の色は刀だから白っぽい銀色だったし。顔は擬人化した顔も白い。白銀でプラチナだと厨二病っぽいし、何にするかなぁ。
あっ思いついた!
「白刃ってのはどうだ?俺の知ってる意味だと確か、鞘から抜いた刃、みたいな意味があった気がする」
多分真剣白刃取りもそこから来ているのだろう。気に入ってもらえるだろうか。刀には鞘がないからだめ、とか言われるのだろうか。
「うん、いいよ!」
幼児改めて、白刃がそういうと、白刃の体が光出した。
一瞬、成仏してしまったのかと思ったが、歯切れ悪くそこで俺も動けなくなった。
◇◇◇◇◇◇◇
目が覚めて時計をみたら5時だった。いつもよりも早いが布団から起きる。多分2度寝をしたら絶対寝過ごす自信がある。
寝ながら手のひらを見る。
「・・・・・・なんか消えてね?」
左手を見てもない。白刃が消えた。少し焦る。本当に成仏をして、刀ごと無くなったのだろうか。
『慶太は起きるの早いんだな』
俺が立ち上がったら壁の方から声がした。すぐ後ろを向くと、最早存在感が、人間の白刃が立っていた。
「なんで幽霊になってるんですか?」
『慶太と話すならこっちの方がいいと思ったんだけど・・・・・・嫌だった?ちゃんと刀にもなれるよ、ほらっ!』
そういった白刃は俺の知ってる、白銀の刀の形に戻った。
「いや、普通の形に戻っていいですよ。俺もそっちの方がいいですし」
『そっか!』
そんなにポンポン変化して疲れないのだろうか。気になったが本人は余裕そうなので気にしないことにする。
「でも普通の霊よりも存在感があるのはなんでですか?」
『僕は霊じゃなくて、神だよ!失礼しちゃうなぁ』
神だったらしい。神が刀に入っているのか。
「なんで刀に入ってるんですか?」
『そうした方が人間は好むって聞いたから。それに僕が直々に手を下すと他の神に怒られちゃうから・・・・・・もしかして嫌なの?』
いや、神様を持ってると思うと、手汗とか、手汗とか、手汗とかが申し訳ないというか。
「少し申し訳ないというか、恥ずかしいというか」
『慶太の手はいい匂いするからいいよ!』
そうなのか?俺っていい匂いしてる?
自分で嗅いでみたが、そんなこと無かった。でも神様も気にしていないようなので俺も気にしない。
「神様は普通の人には見てるんですか?」
『僕の名前は神様じゃなかて白刃だよ?あと僕は存在が濃いだけで、見える人と見えない人がいるよ。幽霊にも見えないのもいるかも』
「幽霊にも、ですか?」
『僕が見えるのは霊感に関わらないからね。僕が見えるか見えないかを選べるから』
さすが白刃。色々と能力があるようだ。他にもあるのかもしれないが、俺も学校に行く準備をしなくては。
白刃と倉庫に眠っていた間の話を聞いたりしながらご飯を食べたり、着替えたりした。
ちなみに俺の家族は全員、白刃が見えるようにしてくれていた。母、由紀は見えない系の人間のため、浮いている白刃をみて、腰を抜かしていた。
「じゃあ行ってくるよ」
そう挨拶をして、家を出る。
『学校は遠いの?』
「5分くらいで着きますよ」
『その敬語もやめようよー、見た目は慶太の方がでかいんだし』
自分が幼児サイズなことはわかっていたらしい。俺も言いずらかったし、神様もそういうので敬語をやめる。
「これが学校。ここからは俺は話し相手になれないな」
『そっかー。まぁ、見えない僕と話してたらおかしいもんね』
「ごめんな。飛んでる分には構わないから」
屋根は塗装のハゲていて、校舎自体もなかなかにボロボロだ。お陰様で、普通の学校にもいる霊が、倍増している。神様の話し相手も、そのうちできることだろう。
『僕、ちょっと学校見てくるよー』
予想は的中して、校舎に入ったら白刃はどこかへ行ってしまった。まぁ、刀が必要になることなんてそう毎日あるわけが無い。
2年A組、つまり俺の隣にある教室を見ると、颯太に謝っている赤羽がいた。
きっと怖くなって颯太を置いて逃げ出したことを気にしていたのだろう。まぁ、颯太は記憶がないので頭にクエスチョンマークを浮かべているわけだが。
とりあえずこれで、トンネルに行く人も減ることだろう。
「一件落着ってことでいいよな?」
人助けが成功して良かった。もう霊を祓うのは御免だけどな。
B組の教室に入ったらこんな噂が耳に入ってきた。
「昨日の4時ぐらいに刀を持った厨二病みたいな高校生があるってたらしいよ!」
「えー、幽霊かなぁ。その刀で人を切ったりして」
「いや、ただの厨二病でしょー」
「それなー」
そう言ってクラスの女子たちが笑っていた。
もう使わない。心霊スポットだろうが、スピリチュアルスポットだろうが好き勝手に行ってくるといい。厨二病はもう助けないからな。
『おーい、慶太。この学校、悪霊がいるぞー』
「おっす、慶太!今朝聞いたうさわなんだが、この学校、少しおかしいらしいんだよ」
この学校がおかしいのは元からだろうに。悪霊は知らん。取り憑かれるやつが悪いんだ。
『もしかしてきみ、慶太の友達?』
「え?なんで浮いてるの?俺は友達だけど」
『僕は昨日の刀だよー。名前は白刃』
「今流行りの擬人化ってやつ?じゃあ白刃、この学校の不思議を解決して貰える?」
なんでこいつらは意気投合してるんだ?地味に楽しそうだし。
「颯太、白刃は神様だぞ」
「え?神様ってあれか?サンタクロースみたいな、白髭のおじいさんのことか?」
『そんな感じの神もいたりするけど、大体は僕みたいに幼児体型だよ』
神様に威厳は必要ないのだろうか。白刃のように外に出てくる神様も珍しいのかもしれない。そしたら、若い方が嬉しいだろう。
「それで慶太。お前におすすめの話がある。この学校には変なことが起こるっているらしい」
『もしかして、悪霊が関係したりする?』
「そう!この学校にある屋上の庭に植物を植えると育たないんだって」
颯太は神に対する敬意とかがないのだろうか。まぁ、本人も気にしていないのでいいとしよう。
『きっと屋上で殺されちゃったんだよ!見に行こっか』
「もしかしたら飛び降りたのかもしれないぞ」
『でもそれなら悪霊に』
なんで神様も乗り気なんだ?もういいや。諦めよう。それよりもそろそろ止めないと収拾がつかなくなる。
「それって鳥とかが種を取りに来てるんじゃないのか?」
「・・・・・・夢がないぞ」
『見なきゃ分かんないじゃん!被害が出てから遅いんだよ!?早く行くよー』
もうダメだこりゃ。
この小説を読んでいただきありがとうございます(((o(*゜▽゜*)o)))。
作者は今路頭に迷っています。誰か助けてください。
改善点とかを教えていただけると作者は舞います₍₍ (ง ˙ω˙)ว ⁾⁾。
それでは結びになりますが、最後まで読んでいただきありがとうございました。