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皇太子の捜し人

 ピリピリとした雰囲気の生徒会室で俺は目の前に立つ男を睨みつける。苛立っているのがコイツにも解っているのか脂汗が酷い。


「で?神子様と仲の良い男は見つかったのか?」


「殿下、それがまだ……」


「たかが人間一人見つけるだけで何故こんなにも時間がかかっている!?」


 思わず怒鳴りつけると相手はヒッと怯えだした。もう一度捜しに行けと命じるとすぐさま部屋を飛び出した。革張りの椅子に背を預け深く息を吐き出す。


「中々見つかりませんね……」


 俺に話しかける護衛も疲れているのか声に何時ものハリがない。俺は再度生徒の書類を見つめ、首を傾げる。


 可笑しい、どうして捕まえられない?捜索を始めたのは数日前からで普通なら直ぐに連れて来られる。だが何故か何時も行き違いになるらしく、俺も本人を見かけた事がない。


 若しかして授業にすら出てないのかと思い教師陣に訊くと授業にはきちんと出ているらしい。それに今まで特に問題を起こさず成績も優秀な方だと言う。


 獣人である教師が人間をそこまで評価するなら面倒な奴ではないとは想像出来る。しかし雲隠れみたいに姿を捉えられないとなれば話は別だ。


 放送で呼び出す事も出来るが神子様の事は極秘扱いだ。彼女の存在は生徒会と各種族の王族しか知らされていない。人間なんかが知るはずがないが心配は尽きない。


 しかも神子様と一緒に居る男子生徒は神子様の想い人だと思われる。彼女と仲睦まじいという報告が上がっているからだ。


 その事実に目眩がする。そもそも神子様を見つけられたのは留学で来ている竜族の王子のお陰だ。彼がベルティナ様を神子だと断言し、保護に向かったのだ。


 神子様はこの世界で特別な人間だ。傷をつける事も殺す事も許されない。俺は竜族の王子が保護してる間に彼女の待遇を変える事にした。


 魔剣勝負には選ばせず教育も貴族令嬢と同様のものを行うよう教師陣に指示した。ところが。


 本人に会うと破格の待遇をしてもらわなくて良いと申し出された。今まで大変な思いをして来ただろうに。不思議に思って訊いてみると友達と離れ離れになるのが嫌らしい。


 神子様の立っての願いという事もあって教育はそのままに。ただまだ問題があった。


 竜族の王子がこの国にやって来たのは嫁探しも含まれている。歴代の神子様は全員竜族に嫁いでおり、ベルティナ様もそうしなければならない。


 事情を話すと彼女は一も二もなく言い放った。


「私は好きな人としか結婚したくありません!」


 早い話が竜族の王子は振られた。しかも高らかと宣言されて。その時の空気は氷点下まで下がり誰も口を開かなかった。


 流石に神子様でも竜族に逆らえば殺されるんじゃ……と危惧したが意外にも王子はあっさりと受け入れ、しかも惚れさせると言ったのだ。


 王子のメンタルが鋼で助かったが、次に問題となったのは神子様の友人というアディだった。


 先の報告にもあった様にアディと神子様は側から見れば恋人同士の様に見えた。まずい、とても。


 竜族の王子に目を付けられれば神子様の友人とは言えただで済まされる保証はない。その危険を無くすため、彼に話を訊く事にした。


 神子様をただの友人として接しているなら本人に弁解してもらえば良い。もし恋心を抱いているなら神子様に近づけない様にすれば最悪の事態は避けられる。


 だからこうしてアディ本人を捜しているというのに……!!授業終わりに待ち伏せしても見当たらない。校内中を部下と共に駆けても何処にも居ない。


 段々と幽霊を相手にしている気分になり、それは怒りへと変わっていった。だいたい相手は人間だ。獣人である俺達が見つけられないはずがないんだ。


 それにアディのクラスメイト達は彼を毎日教室で見掛けているという。だが目を離すといつのまにか姿が消えているらしい。


 神出鬼没か……!と突っ込みたくなるがこれ以上の時間は掛けられない。王子以外の竜族がイライラを頂点に達しそうだから。


 早く彼を見つけなればと焦るあまり、俺はある人物達に協力を申し出る事にした。


 この世界の魔を操る、魔族の長である魔王に。

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