三度の死、四度目の転生
神様は皆に平等、とか言ったのは誰だろうか。少なくとも神様は僕に優しくない気がする。そう思う原因の一つは、僕が三度くらい輪廻転生しているから。
一度目は初めて生を受けたけど時代が飛鳥とかすんごい大昔でなぜか忌子とか言われ山の神様の生贄として捨てられた。その後自称妖怪と名乗る獣に拾われ寿命が尽きるまで時を過ごした。(思えば妖怪が視えるとかこの時点で変だって気付くべきだった)
二度目は現代に生まれこの時は生まれたその時から妖怪や幽霊が視えていた。なんなら霊力の気配で他人の感情が少しばかり理解出来た。前世の記憶を持っていた僕は他人との関わりを避けた。
そして森で遊んでいたら妖怪に襲われそうになり、通りかかった鬼が助けてくれた。その後なんやかんやあって鬼の嫁となった僕は無防備だった所為で鬼を恨む妖に殺された。
三度目はどう考えても一度目と二度目に生を受けた世界じゃないと気付く。だって僕の知ってる人間には犬や猫の様な耳や尻尾は生えてない。
彼らは獣人と呼ばれる種族らしく人間と似ているけど本物の動物の方が近い。で、その獣人の最高位種族と謳われる竜族の番に選ばれた。その瞬間に絶望の淵に突き落とされた。
この世界は獣人を始めエルフ、妖精、オーガ、魔族、ヴァンパイアと凡ゆる生物が存在する。その中でも人間は最弱の生き物とされた。寿命も他種族より長くない、力の差も歴然。当初は人間という生き物は獣人達から庇護される存在だったらしい。
けれど人間達が幾つもの反乱を起こし(理由は色々)、ついに竜族の怒りを買ったらしい。彼らはこの世界の最高位種族。誰も逆らえる筈もなく人間は保護対象から外された。それ以降人間という種族は他種族から差別を受けている。
此処で話を戻すけど他種族から嫌われている人間が竜の番だなんて何の嫌がらせだ。だが抵抗したところで庇ってくれる奴なんていない。渋々竜の国に行き番となる竜と対面した。初めて知ったけど相手は王太子で未来の竜王様だった。むり、つんだ。
余程死んだ顔をしていたのか対面した時めちゃくちゃ気遣われた。因みに王太子はとても優しい竜だった。人間である僕を忌み嫌う事なく常に心に寄り添ってくれる。ただ他の竜族は気に入らなかったみたいで最終的に婚礼を挙げる前に僕は死んでしまった。
で、四度目の転生。記憶を受け継いでいるのも何かの天啓かと思ったが、今はそうは思わない。神様は僕が嫌いだから不幸にしたいだけなんだろう。
そして決めた。どうせ今世も碌な人生になりはしない。なら今世は普通に生きてやろうと。そもそも結婚相手が全員人外とかなに?妖怪や幽霊とかこの世のならざる者が視えるってなに?あと今回だけ不思議な力が使える。こんなオプション要らない。
一度目も二度目も三度目も、物静かで控えめな女だったが、今回は男装して口調も男っぽく寄せて悲惨な運命を変えてやるわ!!と意気込んでいた時期もありました。
しかしこの決意がのちに最悪な形となって失敗する事を、僕は身を持って体験するのでした。