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産廃部隊のワルキューレ  作者: おでん信用金庫
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#1 今日から亡命者!の巻

バニラシュガー歴99年(第3次暗黒融合炉産ナンキン略奪戦争の開戦より23年)、『大統治国家』の決定まで1年を切ったある時、先進技術の国『シナモン』で1人の部隊長が糾弾(きゅうだん)を受けていた。




シナモン共和国

中央管制塔 第一会議室



副将「この大事な局面で主力部隊の8割を失うとは・・・失態だな、エリス部隊長!」


エリス「はっ、面目次第もこざいません・・・!」


副将「大統治国家決定まで1年余り・・・少しの戦力すら惜しいという状況であることは、いくら頭の弱いお前でも理解できるよな?」


エリス「はい・・・処分はなんなりと受けるつもりです。ですが・・・我が国シナモンを大統治国家にするためならなんでもします!ですから、もう一度チャンスを・・・!」


副将「そうか、良い覚悟だ。しかし私はもうお前を使うつもりはない」


エリス「・・・ど、どういうことでしょう!?」


副将「使えない兵を軍に置いていてもこの国になんの利益をもたらさない。お前には今日をもって我が軍を抜けてもらう」


エリス「そ、そんな・・・!」


副将「代わりに、お前に辞令を言い渡す」


エリス「っ!・・・は、はい」


副将「エリス・マーレイ少佐、本日付で『ショコラ公国』の特殊部隊への転属を命ずる!」


エリス「え、ショコラ公国・・・?」


副将「そうだ。現在、ショコラ公国には人手が足りないらしいからな」


エリス「・・・敵国の部隊に転属、ですか?」


副将「言ったろう、使えない兵は軍に置いたところで無価値だと。だからお前の居場所はここにはないのだ」


エリス「はっ・・・もしかして、ショコラ公国の情勢を調査するスパイとしての役割を任されるということでしょうか?」


副将「何度も言わせるな。二度とお前に、この国の土地を踏ませるつもりはない。それに、ショコラ公国はこの戦争にほとんど参加していない。あんな国に潜入スパイを投入したところで得られる収穫なんて、酪農(らくのう)の技術くらいが関の山だ」


エリス「そ、そんな・・・」


副将「それに、悪い話だけじゃない。お前は転属する部隊の()()()に任命されている。よかったじゃあないか、国は違えどお前は依然変わりなく部隊長でいられるのだからな!はっはっは・・・」





副将「・・・エリスは去ったか?」


副将補佐「えぇ、先ほど荷物をまとめて国境の門を出て行きました」


副将「そうか、我が国からゴミは処理されたか」


副将補佐「よかったのですか、よりにもよって敵軍に亡命させるなんて」


副将「あんな酪農しか取り柄のない雑魚同然の国に我が軍の情報を漏らされたところで馬の耳に念仏。脅威になるはずもない」


副将補佐「お言葉ですが・・・この場で極刑を下すという選択肢はなかったのですか?」


副将「たしかに、エリスを殺せばそれで終わりだ。しかしだ、あいつのシナモン共和国に対する忠誠心は本物なのだ。そんな奴が愛する国から追い出され、他国・・・ましてや弱小国家に追いやられるなど、屈辱の極みだ。奴にとって死ぬよりも辛いことだろう」


副将補佐「・・・彼の罪を、生きながらに噛みしめろということでしょうか?」


副将「そういうことだ。それが分かったら、もうこの話は終わりだ。パークス補佐官、第2ブロックの戦況はどうか?」


副将補佐「はっ、現在『メイプル帝国』からの激しい猛襲を受けておりまして・・・」





ショコラ公国

入国管理ゲート



管理官「よし、次の者!」


エリス「はい。シナモン共和国軍の辞令を受け、ショコラ公国特殊部隊への転属を命じられたエリス・マーレイです!」


管理官「特殊部隊・・・エリス・マーレイ・・・、あぁアレか。おい、ブローディア曹長!」


曹長「はっ、了解しました。エリス隊長、俺についてこい」


エリス「はい!」




中央倉庫 B-11



曹長「エリス隊長は、どうして国から追い出されたんだ?」


エリス「・・・戦争で部下のほとんどを死なせてしまったんだ。それの尻ぬぐいさ」


曹長「ふん、そいつは悲しいことだな。しかし・・・そんなお前がこっちでも隊長に任命されるなんて、オチは見えているようなものだな」


エリス「こっちの部隊でもまた部下を死なせてしまうと?」


曹長「それ以外にどんな捉え方がある?」


エリス「・・・同じ過ちは繰り返さない。見事隊長として手柄をあげてみせる。そうすれば、シナモン共和国は俺のことを見直し、温かく迎えてくれるはずだ・・・」


曹長「はっはっは、こいつは傑作だな!まだ故郷に帰れるとでも思ってやがるのか!軍隊が一度捨てた兵を迎えてくれるわけないだろうが!」


エリス「・・・くっ、ロクな軍隊も持たない貴様らに何がわかる!?」


曹長「ロクな軍隊も持たない・・・ふっ、もしお前が我が国を、酪農しか取り柄のない国とでも思ってるんなら、そいつは大きな間違いだ」


エリス「なんだと、戦争に介入してこない貴様らに軍隊があるとでもいうのか?」


曹長「戦争しなきゃあ軍隊がないのか?随分とスケールの小さい隊長さんだな」


エリス「ど、どういうことだ?」


曹長「今に分かる。ほら、ついたぞ」


エリス「・・・な、なんだこれ、魔方陣?」


曹長「エリス隊長、その魔方陣の中心に立て」


エリス「な、なんなんだこの魔方陣は!いったい何をする気だ!?」


曹長「『転送陣』だよ。今からお前を人間界に転送する」


エリス「に、人間界だと!?なぜ人間界なんかに・・・」


曹長「今のうちに教えておこう。我々ショコラ公国は魔界での戦争に参加しない代わりに、人間界への介入を始めた。人間界を征服すれば、それだけで大統治国家への大きな一歩となる。そしてお前にはショコラ公国特殊部隊の隊長・・・もとい教育係になってもらう」


エリス「ま、まさか・・・シナモンの先進技術を伝授しろと?」


曹長「話が早くて助かるよ。特殊部隊の隊員はいかんせん弱い、せいぜい強くしてやってくれ」


エリス「何を馬鹿なことを・・・この俺が敵国に情報を漏らすなんてするわけがないだろう!」


曹長「だったら、今ここで殺されるだけだが?」


エリス「刃向かえば殺されるということか。しかし素直に従ってもそれはシナモンへの脅威にもなる・・・くそっ、どうして副将は俺にこんな転属を命じたんだ・・・!」


曹長「副将も、まさかショコラ公国が人間界に進出しているなど想像すらしていなかったのだろう。単純に酪農の人手を送りつけたつもりなんだろうな。馬鹿正直に亡命者を送り込み、自分たちの国を脅威に晒すことになっていることも知らずに・・・」


エリス「俺はどうすれば・・・」


曹長「お前に残された道は2つ・・・ショコラ公国に刃向かい無残にも殺されるか、忠誠を誓った自分の国を危険に晒して特殊部隊に技術を授けて戦果をあげるか・・・お前がもし故郷に戻りたいと思っているなら、少なくともここで死ぬわけにはいかないよなぁ・・・」


エリス「・・・ちぃっ」


エリス(痛いところをついてきやがる。しかし、戦果をあげさえすりゃあいいんだ。別に技術を授ける必要は無い・・・シナモンに戻るためなら仕方が無い。一時的に我が忠誠心、貴様らにくれてやる・・・!!)


エリス「・・・いいだろう、連れて行け」


曹長「懸命な判断だよ、エリス隊長。よし、転送準備!!」


転送係「はぁい!!!!(元気な返事)」


エリス「・・・」


転送係「エビバデセイ!ピーチクパーチクプチョヘンザッ!」


エリス「!?」


曹長「アユレディゴー!エッチラオッチラヨーイヨイ!」


エリス(なにやってんのこいつら・・・)


曹長「はい、次お前!!!」


エリス「え、なに。なにすればいいの?」


曹長「なんか言え!!!」


エリス「なんかって・・・」


曹長「なんでもいいから言えって!コンボが途切れる!」


エリス「エビピラフチャーハン!!!!!」


曹長「ちげーよそんなんじゃない!!」


エリス「お前がなんでもいいって言うたんやろがボケがっ!!!」


曹長「もっと呪文っぽいやつだよ!!!」


エリス「スーアンコー!リーチイッパツトイトイホー!!」


転送係「・・・きたっ、転送します!!!」


曹長「よし、健闘を祈るぞ!エリス隊長!!!」


エリス「あぅっ」



謎の儀式の最中、麻雀の役を適当に叫んだ俺は、謎の光に包まれた。人間界へと転送されるのだろう。これから俺の、シナモン共和国に帰還するための長い戦いが幕を開ける・・・!


こんなノリでいきます

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