囮作戦
さて、見事に魔王の呼び出しを食らったエレーナ。
「はっ! これは国璽を取りに行くチャンス」
そう、囮作戦である。概要はこう。先ずエレーナが魔王トルーフのところへ行く。そして、庭園で魔王を引き留めている間に、従者に国璽を取りに行ってもらう。
「…という作戦なのだけれど」
「イヤイヤイヤ、無理です! まだ死にたくない」
エレーナはそこらにいた従者に片っ端から声をかけたが、誰一人「行きます」と言う者は居なかった。
「仕方ない。この手段は避けたかったが…」
一人、筆頭執事という強者がいる。
「…と言う訳なのだけれど」
「エレーナ様、いえ、女王」
「はい」
「国璽を忘れた…とおっしゃいましたか?」
「はい」
「女王の今後の御予定が決定いたしました」
「はい」
クラネットは従者の中で最も恐い。口喧嘩で一度も勝てた試しがない。命の危険が無い分、魔王よりはマシだが、マシなだけ。
「それに、エレーナ様以外の人間は、収納庫に入れません」
「あぐぅ」
「よって、その案は実行不可能です」
「ノォォォォン!」
「王女たるもの、そのような奇声を挙げてはなりません」
「はい」
クラネット、マジ恐い。と、後に日記に記したそうな。
その時、窓がミシミシと音を立てた。魔王が不機嫌な証拠だ。
「エレーナ様、大気が震えはじめました」
「わかっているわ」
そうして、囮作戦でも何でもない、魔王へのカウントダウンが始まるのだった。
「…クラネット、リドー国をよろしくね」
「収納庫に国璽をお忘れになった時点で、この国は魔王に支配されているようなものです。それに、魔王の機嫌によりこの国、いや、この世界の安全が大きく変化致します。エレーナ様こそ、この世界をよろしくお願いいたします」
「おぅ、特大ブーメラン…」
エレーナは従者に急かされ、魔王の元へと行くのだった…。
今日の空です。
お付き合いして下さり、ありがとうございます!
クラネット、マジ恐い
従者とは何ぞや…
というお話でした。
次話予告…
残念魔王トルーフ登場!
精進します。