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第二章:パズル合わせ【I】

 

 鈴音はあの夜から3日ほど地下室に閉じ籠っていた。今日から仕事にも戻るという。

 秋也にとっては「よくあること」ですむ話だったが、汐里は地下室に閉じこもりきりの鈴音を心配している。

 そんな二人のかみ合わない時間は秋也を苛立たせるばかりだ。

 

 

「おれは今から出かける。お前はどうする?」

「さあな。気分次第で」

「そうか」

 

 

 そんな会話をしながら鈴音は薄い上着を羽織り、腰につけた銀色のチェーンを鳴らして素っ気なく出て行ってしまった。

 それを見送った後、秋也は暇を持て余して汐里に視線を移す。それに気づいた汐里は少し気まずそうに視線を返す。

 溝が、埋まったわけではなかった。

 秋也にとって汐里の存在は、ただの邪魔であってそれ以上でも以下にも変化はない。

 だが、そんな心境とは裏腹に鈴音というクッションがない状態で3日過ごし、ある程度の会話なら感情を押し殺して話すこともできた。

 鈴音がそれを狙って閉じこもったのかは分からないが。

 

 

「いよいよ、明日か」

「そうですね。秋也と鈴音はこれからも一緒に暮らすんでしょう?」

 

 

 黙って頷いた。 

 明日、汐里はここを出ていかなくてはいけない。明日で約束の日を迎えるのだ。

 しかし、秋也は鈴音がこのまま汐里を外へ出す気はないように思えて仕方がないのが本音である。

 籠っていた3日間の間も鈴音は頑なに汐里を外に出すことを拒んだ。軽い監禁のようだが、本人は自覚がないだろう。

 そんなことを何をするともなく考えながら、半開きの窓から吹き込んでくる風に髪の毛をなびかせた。

 

 

 

 *****

 

 

 鈴音の普段の職場はSIDでも有数の酒場だった。本業は何でも屋だが、毎日依頼があるわけではないので依頼がない日は副業としてここのバーテンダー兼パフォーマーをしている。

 ここでは顔の良い男を目当てにした外野夫人や大酒飲みのSIDの住民が集まるのだ。

 鈴音はそこでは「レン」と名乗り、結構な顧客をつかむこともできた。

 

 

「おい、レン。ご無沙汰してたじゃねえか。本業の方が忙しいみてえだな」

「そこそこな」

「ちっ。ここ以外に働くところがあるやつは羨ましいね」

 

 

 親しげに憎まれ口を叩いたのは、仕事仲間のコータ。酒場では鈴音の次に顧客が多い店員でもある。

 金髪に緑色の瞳。金髪は生まれつきだろうが、緑の瞳はカラーコンタクトを付けているようだ。

 普段はおちゃらけているところが目立つが、裏の噂では政府に目を付けられる程の“悪ふざけ”をしているという。

 

 

「あ、そうそう。お前のこと待ってたご夫人、いっぱいいたぜー?もう煩い、煩い」

「ああ……」

 

 

 客が待っているようだ。若干、どうしても気だるい気分になる。“約一名”を除けば、大抵の女はキスをせがんできて鬱陶しい。

 キスだけで金をもぎ取ることもできるから、それはそれでいいのだが。

 店に出るとカウンター席が疎らに埋まっていた。顔見知りの常連客もいる。

 その中の綾子(あやこ)に鈴音はすぐに声をかけた。綾子は付き合いが一番長く、他の客にはない親密なやりとりもしている。

 有名な電気会社の社長秘書をやっているようだ。ついでに愛人でもある。それを利用して鈴音はよく綾子にはノートパソコンなどを安く譲ってもらったりもしていた。

 そして、先ほど話した“約一名”でもある。

 

 

「あら、随分と遅い出勤じゃない。頼まれてたもの、持ってきたのに」

 

 

 綾子が差し出したのは、3つの携帯電話だった。秋也、汐里との綿密な連絡情報のための代物である。

 本人自動探索機能と暗視機能がついた最新のものを鈴音が綾子に無理を言って手に入れてきてもらったのだ。

 

 

「感謝しなさいよ?社長におねだりして手にいれたんだから。メインはその黒い携帯よ。アプリを仕込んであるから、そこで他の二人の居場所を確認することができるわ。その後の使用料は私の会社のほうで引き落とすように手続きしておいたわよ」

「ありがとうございます。代金はおれが払うと言いましたのに」

「いいのよ。どうせあの社長は有り余るくらいの財産あるんだから。そのかわりに今日のカクテルは無料(タダ)飲みさせてね」

「もちろんです」

 

 

 秀麗な笑みを浮かべて頷く。3つの携帯を大事に受け取って、入れ替わりに2枚の写真を取り出した。

 それを綾子の前に置く。

 

 

「こいつらの情報を手に入れてきてほしいんですが……」

「嫌よ。人探しは私の得意分野じゃないの。そういうのなら情報屋に頼んでちょうだい」

 

 

 写真を見ようともせずに鈴音につき返す。

 

 

「情報屋?」

「あら、レンは知らなかったのね。情報屋って言うのは表向きはただの新聞社よ。けれど裏の世界では情報屋と呼ばれて彼の驚異的な情報収集能力を信頼して多くの外野たち

 が情報を売ってもらってる。彼の名前は大悟。地図をあげるから行ってみるといいわ。言っておくけど、彼の情報ほど確実なものはない。腕だけは保障するわよ」

「……大悟、ですか。じゃあ今からでも訪ねてみます」

「そう。それじゃ、地図をメールで送っておくわ」

 

 

 綾子が店を出たあと、他の客から金だけをせしめて店をでた。綾子からメールできた地図を確認する。

 地図がさすところを見るとあのやけに大きいビルのようだ。

 情報屋。

 稼業にしているくらいだから腕はなかなかいいだろう。これは、思わぬ収穫が入った。

 プロならきっと内部のほうまで詳しく知っていそうだしな。

 鈴音は地図を眺めて、わずかに口元を緩めた。

 

 



第二章突入です。

新キャラも今回だけで2人も出てきました。


ああ、軽いスランプなもので、いつもよりも酷い

文になってしまって申し訳ないっ…



感想など、ご気軽にくださいな(^ω^)

めちゃくちゃ喜びます!

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