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無能で有名な将軍キャラに憑依しました。  作者: 冬森レイ
第1章 第1部 士官学校編『王国歴298年(春)』
6/8

【生徒会】と【戦略】


  ―――――――――――― オフィシャルク学園 ――――――――――――


  王国歴 298年 3月上旬


  アステリア王国の王都に在るオフィシャルク士官学校では三日後にある入学式

 の準備で学園中が慌しく動いていた。


  そんな慌しい学園の中で口々に生徒達は今年の新入生達いやもっと的確に言う

 のならば今年の新入生の中でも入学試験上位の5人が入学する事に対して嫌悪感

 を示していた。


  嫌悪感を示している人間の殆どは貴族の子弟達だが中には貴族で無い生徒も陰

 で悪口を叩いている。


  貴族子弟の者達が今年の入学者達に嫌悪している理由は、入学式で執り行われ

 る行事の一つである新入生総代の挨拶を平民出身であるアスランが行う事への不

 満の表れである。


  毎年の新入生総代挨拶はその年の入学試験の成績上位5人の中でも位が高い貴

 族の子弟が執り行うのが通例でその5人の中に貴族関係者が居なければ5位以下

 の成績を修める新入生の中でも成績上位に近しい成績を遺した者が選ばれる。


  だが、今年は違った。


  1位 アスラン・ギュスタード ―――――― 平民出身。歴史馬鹿

  2位 リィーナ・フォン・エグルディス ―― 貴族出身だが母親が元帝国人

  3位 アルジーク・ゼガルフ ――――――― 平民出身。親が平民出身なが

                        らも少将。

  4位 リロドス・ベレルドール ―――――― 平民出身。兄が平民出身なが

                        らも東方軍の司令長官の側近

                        の一人。

  5位 ヴィスカ・エレード ―――――――― 平民出身。

  6位 ????????? ―――――――― 平民出身。

  7位 オリヴィア・フォン・フリーゲル ―― 貴族出身。生家は男爵家。


  御覧の通り1位~5位を平民出身の彼彼女等が独占しているので通例で言えば

 男爵家と爵位こそ低いが7位の女子生徒が新入生総代として挨拶するのが普通な

 のだが今回の主席入学者であるアスランが学園長である『ローランド少将』の養

 い子であることと7位であるオリヴィア・フォン・フリーゲルが総代挨拶を辞任

 してアスランが総代挨拶をする事を推薦したためアスランが新入生総代を務める

 事が決まった。


  因みに貴族以外の者達が悪口を叩いているのは2位のリィーナに対してである

 出身が貴族な上にその母親が元帝国人とあって貴族と平民の両方の生徒から嫌わ

 れている。


  この所為でアスラン達5人はここ数日間の間除者の様に扱われていた。


  そんな5人は今日も放課後に集まっていた。


「・・僕も辞任したいな~新入生総代。何か面倒だし」


  溜息交じりにそんな事を呟くが周りはそれを許さなかった。


「いや、そんな事したら新入生総代を入学試験の成績が10位以下の貴族の人が行

 う事になって余計に煙たがられて面倒になるだけだと思うよ」


「僕もそう思うよ。それに先に辞任したフリーゲルさんに悪いよそれは」


  アスランの呟きに否定する意見を出すアルとリロそしてその言葉に反応して頷

 いているヴィスカとリィーナの二人を見て再び溜息を吐くアスランそれを見て四

 人はこう思った。


((((こんな歴史馬鹿を総代にするのは((僕))((私))もちょっと嫌と言

    うか賛成は出来かねるんだけどね))))


  四人がそんな思いを抱きながらアスランを説得したり励ましたりしていると5

 人が居る教室の扉が開いて二人の人物が入って来る。


  一人は長い金髪を両サイドでドリルにしている女子ともう一人は高身長で頭を

 スキンヘッドにしている男子だ。


「こんなところに居ましたの?探しましたわっ!」


「えっ?・・ああフリーゲルさんか」


  アスランは自身に若干の怒気を向けながら近付いて来る女子生徒の名前を呼び

 ながら呼ばれた方を向いた。


わたくしの事はオリヴィアとお呼びください。わたくしよりも成績が良い貴方には特別に

 許可致しますわ」


  まるで自分を打ち負かした事に誇りを持ちなさいとでも言いたそうな雰囲気を

 感じさせながら発言する彼女にアスランは何とも言えぬ敗北感を感じ取り合えず

 了承して自分を探していた理由を訊ねた。


「そうでしたしたわ。お姉様がアスランさんに入学式当日の新入生総代の役割につ

 いて詳しくご説明したいらしくてそれでわたくしも協力して貴方を探していたのです

 わ。と言うことなので生徒会室までご同行願いますわ」


  彼女の姉である2年生のエルシア・フォン・フリーゲルが今年のオフィシャル

 ク士官学校の生徒会長を務めている。


  3年生は軍事研修などで様々な部署や部隊へと出向かなければならないので学

 園に居る時間が極端に短い。そのため二年生が生徒会長や生徒会役員をするのが

 この学園での伝統と言う名の決まり事だ。

 

  アスランはそれを聞き了承するとオリヴィアと共に生徒会室へと行くために移

 動を始めようとするがそんな彼彼女等の前に立ちはだかる者がいた。


  185cmはある身長とスキンヘッドが印象的な男子生徒でオリヴィアと共に

 教室へと入って来た生徒だ。


「待てアスラン。俺を憶えているか?」


  そう聞かれアスランは暫く悩んでから


「ごめん分かん「そうだろう。そうだろう。この俺を忘れるわけ」ない「分かんな

 いのマジでっ!」」


「もしかしてアスロ君?」


  アスロと呼ばれた分かんないと即答されて床に両手を付き落ち込む男子生徒と

 アスランは同時に発言したヴィスカへと視線を向けた。


「良かった。ヴィスカは憶えていてくれたのか」


「ええ。昔みたいにアフロじゃ無いから一瞬分からなかったわ」


  アスロと言う名とアフロと聞いてアスランは何かを思い出したのかアスロと呼

 ばれた生徒の顔を凝視する。


「アフロ・・ってあのアフロ「アフロじゃ無いア・ス・ロっ!アフロを名前みたい

 に言うんじゃねえよ」了解。アフロ「お前ワザとやってるだろアスラン」」


  アスロは旧友に自分の名前を昔の髪型である〝アフロ〟と呼ばれた事に腹を立

 ててアスランに詰め寄る。


「三人は知合いなの?」


  今まで黙って見ていた三人を代表してリィーナが聞いた。


「アスロ君も私とアスランの幼馴染なの。昔は背も小さくて髪型もアフロだったか

 ら分からなかったの」


  ヴィスカはが皆に説明している間も二人は言い争い続けている。


「それでアフロ・・お前その頭如何したっ!禿げたのか?」


「チゲーよ剃ったんだよ。俺の髪は伸ばすと直ぐ天パでアフロに成るから・・って

 またアフロって呼びやがったなお前っ!」


  久しぶりに会った二人の言い争いは終わりが見えず周りが如何しようか考えて

 いるとオリヴィアが二人を諌めた。


「アフロでもアスロでも何方でもいいですからアスランさん行きますわよっ!」


「何方でもって酷いですよお嬢~」


「「お嬢?」」


  アスロの発言に疑問を持ったアスランとヴィスカは聞き返した。


「んっ?ああそうか、俺は今ここに居るお嬢の従者みたいなことをしてるんだ」


「〝みたいな〟では無く実際に貴方はわたくしの従者でしょうがまだ見習いですけれど

 それよりも行きますわよお姉様がお待ちですわ」


  そう言ってオリヴィアはアスランの手を掴んで歩き出す。


「ちょっと行くから手を放して・・って以外に掴む力が強いよこの子全然離れない

 んだけど」


「お嬢待ってください俺も行きますぜ。じゃあヴィスカ、悪いがアスランを暫く借

 りて行くぞ」


「うん。この際タップリと扱いてやって暫くの間は歴史の事を思い出せない様にし

 てあげて」


「?・・何だかよく分からんが取り合えず分かったぜ(未だにアイツの歴史好きは

 壮健なんだな)」


  アスラン達3人が教室を出て行くと4人は特にやる事も無いので取り合えず寮

 に戻る事にした。



  オフィシャルク学園 ――――――――― 生徒会室 ――――――――――


「失礼しますお姉様。一年、オリヴィア・フォン・フリーゲル只今新入生総代のア

 スラン・ギュスタードを連行して参りましたので入室致しますわ」


「失礼します会長。一年、アスロ・フオスク同じく新入生総代をお連れしたので入

 室致します」


  オリヴィアとアスロは生徒会室の入口で奥に座っている人物に対して報告をし

 ながら入室する旨を伝え入室する。


  出入口から廊下に出たところで逃げられないようにアスロに手を掴まれている

 ため室内が見えないアスランは急に引っ張られた為に危うく転びそうになりなが

 ら生徒会室へと入った。


「乱暴だな~。掴まえてなくても逃げないのに」


((嘘を吐け)吐かないでくださいな)


  生徒会室に移動する間に「トイレに行きたい」だの「持病の腹痛がぁ~医務室

 に行かせてくれぇ~」などと事あるごとに逃げ出そうとしたので最後の方ではア

 スロに担がれて移動をしていたアスランがそんな事を言うので二人は心の中でそ

 う思いながらも口には出さなかった。


「ご苦労様です二人とも。それと貴方は初めましてですね私は当代の生徒会長を務

 めさせて頂いておりますエルシア・フォン・フリーゲルと申します。私の横に居

 るのは副会長のクロア・ドルケシアです私と同じ2年生になります」


「・・・・クロア・・・・よろしくね新入り君」


  痛そうに腰を押さるフリをしながらアスランは自己紹介された二人を見た。


  オリヴィアの姉でありこの学園の今年度の生徒会長であるエルシア・フォン・

 フリーゲルはオリヴィアを少し大人っぽくした感じで妹と同じ長い金髪をウエー

 ブさせている。騎兵科に所属し卓越した騎乗スキルと指揮能力で騎兵科の教官だ

 けでなく他の兵科の教官達にまでその名を知られている優秀な士官候補生であり

 生徒からの信用も厚く去年の冬にあった生徒会長選挙では満場一致で彼女に決定

 した。


  戦場の機動力的主役が騎兵から戦車に替わってきている昨今に至っても我が王

 国はまだ戦車の数が圧倒的に足りていない状況なのでもう暫くは彼女の様な騎兵

 達が王国軍の主軸機動力となるだろう。


  因みに我が学院は、1年次を【作戦学さくせんがく】【情報学じょうほうがく】【人務学じんむがく】【兵站学へいたんがく】【戦務学せんむがく】から成る軍事基礎学と実技である王国式格闘術・剣術・銃火器の扱いを

 学び2年に進級すると今度は志願したい兵科の授業が執り行われる。


  2年次の兵科ごとの授業は個人の自由で選べるが選べるのは最高2つまでだが

 成績が悪いと1つに絞らされるので基本的に皆1つしか選ばず余裕がある生徒だ

 けが2つ目を選んでいる。


  選べる兵科は【歩兵ほへい】【騎兵きへい】【砲兵ほうへい】【戦車兵せんしゃへい】【工兵こうへい】【通捕兵つうほへい(通

 信・補給兵)】【衛生兵えいせいへい】の8つからとなっている。


  クロア・ドルケシア士官候補生は緑色の髪をおさげにしていて目が両目とも瞼

 が半分閉じていて眠そうにしている女子生徒だ。


  一見すると何故この人が士官学校の生徒会で副会長を務めているのか不思議で

 あるがそれはひとえに彼女が【聖鬼士】であるからだ。彼女の聖鬼士としての鬼

 士力は150と高く聖鬼士の中でも鬼士力が100を超えた者しか入れない王国

 近衛鬼士団からも誘いが来るぐらいだ。


  この学園の個としての最強が彼女クロア・ドルケシアだ。


  黙ってそんな事を考えていたので僕は自身がまだ自己紹介をしていない事に気

 付き慌てて自己紹介をする。


「ぼ・・自分は1年のアスラン・ギュスタードです。それでお話があるとオリヴィ

 ア士候生より伺いましたが」


「はい。一つは新入生総代の代表挨拶をする時の原稿が出来上がったのでソレをお

 渡しする事ともう一つは生徒会役員としての仕事をお教え「えっ何それ?」しよ

 うと・・はいっ?貴方にこの事は説明しておくようにとオリーには言っていたで

 しょう」


  アスランが「そんな話は聞いていない横暴だ~生徒会何か入るか~」と両手を

 上げて騒いでいるのを無視してエルシアはここまで彼を連れて来た二人を見る。


「「話をするしない以前の話で彼が逃げ出そうとしたのでそれを捕まえるのに忙し

  くて話を出来ませんでした」でしたの姉上」


「後輩君は・・・・問題児?」


  二人の直訴と同僚の呟きを聞いてエルシアは疲れた様に溜息を吐く。


「学園長が仰っていた通りの方なのですね。先が思いやられますね」


  その後、騒いでいたアスランはアスロの鉄拳を頭に喰らい悶絶すると気付いた

 時には椅子に縛り付けられていた。


「酷い目に遭った。アフロめ後で歴史語り3時間を喰らわせてやるっ!」


「・・・・起きたの・・・・問題児アスラン?」


  アスランが起きるのを見張っていたクロアはアスランに近寄り声を掛けた。


「なんか変な単語と併合されて呼ばれた気がしますがこの縄を解いてくれるなら先

 輩を許しま「・・・・皆を呼んで来るから・・・・待ってて問題児アスラン」・・最後ま

 で聞いてくれても良いじゃないですか」


  起きたアスランの第一声を途中から無視した彼女は隣の生徒会室に居る他の生

 徒会メンバーを呼びに行くと直ぐに呼びに行ったメンバーを連れて戻って来た。


  縛られているアスランが落ち着いている表情をしているのを確認すると生徒会

 長のエルシアが話始めた。


「それではアスラン君も落ち着いたので「強制的ですがね」・・オリー、この方の

 口をそこの縄で縛って「待ってください。黙りますし話も聞きますから」では改

 めてお話をしましょうか」


  自分の愛称を呼ばれたオリヴィアが姉の命令通りに少し痛そうな棘の付いた縄

 でアスランの口を縛ろうとしたのを見たアスランは文句や屁理屈を言うのを一旦

 止めると宣言してからこの場の主導権を握っているエルシアの話に黙って耳を傾

 けた。


  因みにオリヴィアはそれでも縄を所持したまま姉に笑顔で「何時でもご命令下

 さいお姉様」と言っていた。


「それでは気を取り直して、アスランさん貴方には生徒会に入って頂きます。拒否

 権は貴方には有りません」


  アスランが意見を言うことが出来ないと強く主張するエルシアにアスランは質

 問をすることを許して貰えたので質問をした。


「それは可笑しいのでは?この学園の歴史と生徒規約上では〝主席入学者は生徒会

 の役員末席に入る事が出来る権利と資格を与えられる〟としか書いてない筈では

 ないですか」


  それを聞いたエルシアはニッコリと微笑むと一枚の書類をアスランの目の前に

 出して見せる。


「この書類は貴方の後見人であるローランド学園長が発行した物です。これによる

 と・・〝以下の者を生徒会役員に任命する。以後の人事権をエルシア・フォン・

 フリーゲル生徒会長に一任する〟と書いています。つまり貴方に拒否権は無く貴

 方を生徒会に入れる入れないは私の独断で決める事だと言うことです」


  アスランは自身の育ての親が書いた書類と彼女の言葉を聞いて「もっと僕の意

 意思を尊重してくれてもいいじゃないかオジさんも生徒会長も・・」と呟きなが

 ら下を向いて俯いた。


「という事で貴方は今日より生徒会役員です歓迎しますよアスラン君」


  エルシアがそう言うと他の生徒会のメンバーも拍手をしながらアスランを迎え

 入れた。


「・・・・問題児君アスラン・・・・歓迎?」


(なぜ、疑問形・・)


「少し問題がある方だと分かりましたが歓迎致しますわアスランさん・・後で教育

 して差し上げますわ」


(教育は教官殿達の教えで間に合っております)


「また一緒だなアスランっ!何か分からない事があったら何でも聞けよ歓迎するぜ

 ・・それと、アフロって呼ぶなよな」


(・・・・アフロ~)


  こうしてアスランは名誉ある生徒会の末席に加わる事になった。余談だが生徒

 会に入ったアスランの初仕事が校内にある図書館に保存されている普段は読むこ

 とを制限されている過去の王国軍の資料整理であったために彼は生徒会長である

 エルシアに「最高の職場ですっ!」と目をキラキラさせながら言ったらしい。



  同時刻 ―――――――――― 王都王城内の一室 ―――――――――――


  この日リグルドは3日後にあるオフィシャルク士官学園入学式に招かれている

 ため王都に居た。そして入学式参列とは別の目的である〝東方地域防衛作戦〟の

 作戦案を提出するために王城に登城してある人物に会っていた。


  リグルドが居る部屋のベッドで横になっている人物こそ王国軍陸軍の総大将で

 あり同時に王国軍総司令長官でもあるグラスト・フォン・ボルキュールド元帥で

 ある。


  彼はリグルドの兄であるギレラスと同い年であり同時に親友でもある人物でつ

 まりまだ35歳という若さで王国軍のトップに座っている傑物だ。ただし本人が

 病弱なのでたいていはこの部屋のベッドの上で仕事をし命令もここから出す。


  リグルドは修司が憑依する前の幼い時に兄と仲の良かった彼には何度も会って

 いてよく揶揄われて遊ばれたらしい。


  その為、リグルドは兄とは別の意味で彼を苦手としている。


  そのボルキュールド元帥がリグルドからの作戦案を見終ると軽く笑いながらリ

 グルドを褒めた。


「クスクス・・あの小さくて丸っこかった坊屋が立派な物を持ってきたじゃないか

 まさか去年君が行った〝東方軍革〟で取り潰した貴族の家の資産の殆どをこの要

 塞につぎ込むとは思わなかったがね・・これなら帝国軍も簡単には旧王都を奪え

 ないね」


 〝東方の軍革〟とは去年リグルドが行った事で帝国と繋がりを持っていた貴族達

 やその貴族と関係を持っていた者達を一斉処分した事件である。


「いや~予算が足りなかったモノで急遽やっちゃったでちゅ。それと丸っこいのは

 今もでちゅよ元帥閣下」


  リグルドは最初帝国と繋がりを持っていた貴族等を裁くのはもっと後でもいい

 だろうと思い貴族達が帝国と繋がっている証拠だけを調べてあとは自分が部下に

 任せて行っている要塞建城さえバレなければ良いと思っていた。


  だが、その思惑は思わぬ形で裏切られた。リグルドより要塞建城を任されてい

 たマインドルク准将がリグルドに対してこう言ったのが全ての始まりだった。


「要塞建城に使う資金が足りませんス」


  これにはリグルドも他の側近達も驚いた。彼には一般的な要塞建城に掛かる費

 用の数倍の額を軍資金として渡していたのにも関わらず何故足りなくなるのかと


  リグルド達は一瞬だけ彼の悪癖を疑ったが違った。


  彼曰く「その・・造り込みに凝り過ぎて足りなくなったス」とのこと。


  仕方なくリグルドは新たな軍資金を用意するために裏切り貴族達にバレないよ

 うに自身の身の回りの経費すらも削減しながらも用意をした。


  それでもまだ足りなかったので兄にお願いして軍資金を用意して貰った。


  兄は二つ返事で「我が弟が凄い事を成そうとしている協力せねばっ!」と言い

 ながら協力してくれた。


(どんだけブラコンなんでちゅか我が兄上はっ!でも助かるでちゅ)


  宰相である兄が秘密裏に協力してくれた為に軍資金不足は何とかなりそうだっ

 たのだがそこに横槍が入った。


  裏切り貴族達だ。彼らがまた横領をしたために要塞建城に使おうと思って貯め

 て置いた資金が無くなってしまったのだ。


  そこで完全に堪忍袋の尾が切れたリグルドは予定を変更して帝国と繋がってい

 た貴族将校の殆どを今まで溜めこんだ証拠を元に取り押さえて爵位と軍籍の剥奪

 を行い彼らが貯めこんだ金を接収して要塞建城につぎ込んだ。


  爵位と軍籍を剥奪された彼等は元東方軍副司令長官であるスローミッド元少将

 を旗本に集まり結集して暴動を起こそうと画策するもすでにリグルドにその事を

 知られていた彼等は遭えなく鎮圧にやって来た部隊により根絶やしになった。


  そしてリグルドは自身が見出していた人材を次々と要職に就けて東方軍内を完

 全に手中に治めた。この事件の事が〝東方軍革〟と呼ばれている。


  因みにバーリット少佐だけはリグルドを怒らせる前に投降していたので偽の情

 報を帝国に流し続けるという役割の為に生かされた。彼の父親も捕縛はされたも

 ののこれまでの王国軍内での功績を配慮して爵位剥奪の上で永久投獄の刑に処さ

 れた。


  その後も他愛無い話をボルキュールド元帥と暫くした後にリグルドは作戦案に

 書かれている作戦内容を正式に認められて部屋を出た。


  部屋を出る際にボルキュールド元帥に「兄に会わずに往くのか?」と聞かれた

 のでリグルドは暫し考えた後にこう言って出て行った。


「兄に会うのは帝国との戦いで僕が勝利した後の論功行賞等の時でちゅよ」


  それを聞いたボルキュールド元帥は愉快な余り笑いが止まらなかったという。


(・・・・まだ兄上に会うには心の準備が・・でも確実に会う時は確実に迫ってい

 るでちゅ~)


  このリグルドの本音をもし彼が知っていたのであればもっと笑い転げていたで

 あろう。


  第1章 第1部 【生徒会】と【戦略】(完)


  




  


  


  


  







  




  


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