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無能で有名な将軍キャラに憑依しました。  作者: 冬森レイ
第1章 第1部 士官学校編『王国歴298年(春)』
5/8

【出会い】と【入寮】

新章開幕


  アステリア王国 ―――――――― 王都アステロムク ―――――――――


  王国歴 298年 1月上旬 (聖暦1908年)


  アステリア王国の王都にある王国国立士官学校の校門の前に一人の男子生徒が

 片手には『王国風土記』と題名が書かれた本を持ちもう片方の手で肩に掛けて持

 ち歩くタイプの荷物袋を担いで立っていた。


  彼の名は『アスラン・ギュスタード』。今年からここ王国国立オフィシャルク

 士官学校に通うことになった士官候補生だ。


  そして『聖鬼士物語』の主人公キャラクターでもある。


「今日から僕も士官候補生か~・・・・ヤダな帰ろうかなぁ・・無理だよな~」


  実は彼、士官学校には出来れば行きたく無いと思っていた。彼本人は歴史好き

 で歴史の勉強が出来そうな学校に出来れば通いたかったが育ての親であるここの

 学園長に「君の親の遺言なので取り合えず入学試験だけでも受けてみなさい」と

 言われてしまい渋々受験した。


  結果から言ってしまえば彼は試験に合格した。それも主席での合格だ。


「入って直ぐに問題を起こして退学とかも出来ればしたくないよな~そんな事した

 らオジさんに迷惑が懸かるしなぁ~・・てか、僕も僕で何で主席で合格してんだ

 ろうこれじゃ悪目立ちだよ・・ハァ~」


  校門前で溜息を吐きながら小声でグチグチと言っていると後ろから背中を押さ

 れ校内に倒れ込む形で入ってしまい慌てて転ばない様に大勢を立て直す。


「入口のド真ん中で立ち止まらないでください通行の邪魔です。あと、そんな軽率

 な言動を堂々とそんなところでしていては入学と同時に生徒指導行きになってし

 まいますよ・・ってもしかして・・アスランですか?」


  後ろからアスランの背中を押し説教を始めた人物がアスランを見て驚いて目を

 見開いていたのでアスランもその人物の顔を改めて見てみた。


  そこには王国人特有の髪色である長い銀髪をツインテールにした女子の士官候

 補生が立っていた。


「んっ?・・もしかしてヴィスカ・・なの?」


  そこに立っていたのは彼の幼馴染で昔アスランが住んでいた近所に住んでいた

 少女に瓜二つの女子が立っていた。


  彼女の名は『ヴィスカ・エレード』。アスランと同い年の女子であり幼馴染で

 もある。原作の主人公であるアスランのヒロイン的立ち位置にいたキャラクター

 でもある。


  ヴィスカは自身が彼の幼馴染本人である事を「ええ」と言いながら頷くと軽い

 世間話を始めた。


「アスランも今日から入寮ですか?」


  ここオフィシャルク士官学校は基本的に寮生を義務付けられているので殆どの

 生徒は学園内にある生徒用の寮で卒業するまで生活する。


  入学式は毎年4月の初めにあるのだが入寮する手続きと入寮は1月中に終わら

 せなければならない決まりがある。


  要するに〝地方人も王都人も入学式前には学園に慣れておけ〟という学園から

 の無言の指示である。


  それに今年は帝国との間に結ばれた停戦条約の期限が切れる年でありその為4

 月にある入学式と授業が前倒しで3月に行われることとなっていて4月は今のと

 ころの予定では長期の休暇が予定されている。


「ああ。今日から入寮出来るって学園の事務所から連絡が来たんでさっさと入寮し

 て学園の授業が始まるまでの約2ヶ月間の間は図書館に籠るつもり」


  僕の言った事を聞くとヴィスカは手で口を覆い隠し軽く笑った。


「相変わらずの歴史好きのようですね」


  アスランは両手を掲げて喜びながら自身の今の希望をヴィスカに言い聞かせた


「この学園で唯一期待出来る場所だからね図書館はっ!何と言ってもその蔵書量が

 凄いんだなんせ国立図書館と同等と言うからもう笑うしかないよ。学園図書館は

 僕のこの学園に置ける本当に一つだけの希望と言っても過言ではないのさ」


  アスランが入試の主席合格者である事を知っているヴィスカは主席で入学する

 アスランがこんな事を言ってしまって良いのだろうかと心の中で彼の今後の学園

 生活を若干心配する彼女。


  そんな彼女の心配を余所に歴史の話を熱弁し始めてしまった彼を周りにいる生

 徒や教員が不思議な物を見るかの様な目で見始めている事に気付いた彼女は慌て

 てアスランの脇腹に蹴りを入れて黙らせ寮のある方へと彼を引きずって移動をす

 る。アスランが蘇生したのは男子寮の入口に到着する少し前だった。


「ゴメン、ヴィスカ。僕昔から歴史の話となると周りが見えなくなっちゃって」


「いえ。(図書館の話から無理矢理歴史の話に繋げたのは貴方ですけどね・・)」


  男子寮と女子寮は別れているので男子寮の入口に着いたアスランは一度ヴィス

 カと別れた。


  そして自身が入寮する部屋である部屋番号を寮の管理者に確認をしたところ【

 510号室】が自分の部屋であることが分かったので同室の鍵を貰い移動する。


  移動する際に管理者に呼び止められ部屋に付いての話をされた。


「510号室は2人部屋だからね。もう一人は二日前に入寮してるから部屋に居る

 かもしれないよ」


「わかりました。行ってみます」


  管理者に軽く礼をして510号室へと向かった。


「え~と・・508号室・・509号室・・510号室・・あった510号室」


  部屋の扉に手を掛けてみると開いていたので部屋の中に入る。


  部屋の中にはベッドと机が二個ずつ置かれカーテンで仕切られていた。トイレ

 とシャワーが部屋には取り付けられていてそれ以外にも大浴場があるのでキチン

 と風呂に入りたい者は大浴場に行くのだが大浴場は殆ど貴族の生徒が独占してい

 るため平民の生徒は寄り付かない。


  食事は食堂が在りソコは男女共に共同で使われている。


  自身に当てが割れたベッドに座りこの学園の設備等を思い出していると目の前

 のカーテンが開き一人の男子生徒が出て来た。


  紫色の長い髪をしているその男子生徒はアスランを確認すると自己紹介をして

 握手を求めてくる。


「やあ。君が同室の人かい?僕の名はアルジーク・ゼガルフって言うんだよろしく

 ね同室君」


  アスランも握手に応じて自己紹介をする。


「アスラン・ギュスタードだよ。こちらこそよろしくゼガルフ君」


  お互いがお互いの名に共に驚いた表情をする。


「ギュスタードって言うと〝あの〟ギュスタードで間違いない?」


  王国の近年の歴史でも、ある一人の男性が物凄く有名だ。


  その者の名は『ジスラット・ギュスタード』。平民ながら王国軍の陸事大将と

 いう王国陸軍の最高権力者になり第一次と第二次の王国侵攻で唯一帝国軍に勝利

 した名将中の名将であったが数年前に病死したと言われている人物だ。


  噂では彼には息子が一人居て彼の死後は彼の元上司であるこの学園の学園長の

 後見の下で暮らしていると言われていたのでアルジークはその噂が本当なのかも

 含めてアスランに聞いている。


「そうだよ。そのギュスタードの子で同時に噂の子でもあるのが僕だよ。今度は僕

 が質問して良い?君って一年前に改革があった東方軍で今は副司令長官をされて

 いるリヒトール・ゼガルフ〝少将〟のご子息で合ってる?」


  アルジークの父もまた王国軍東方軍で去年あった軍事改革の後に平民として初

 めて副司令長官に抜擢された人物として有名だ。


「それで合ってるけどご子息ってのはヤメてくれよ。これから3年間は同じ学び舎

 で学ぶ仲間なんだしお互いタメ語で話そうよ」


  アルジークは自分が軽い揶揄いのつもりで話したつもりが直ぐに逆襲されたた

 めに開き直って普通に話す事を提案する。


「それもそうだね。じゃあ改めてよろしくアルジーク」


「こちらこそよろしくアスラン。それと僕の事はアルでいいよ」


  二人は再び握手をするとこの学園に関する事や王都の事を話合い盛り上がり丁

 度昼食時だったので二人で食堂へ行く事にした。


  510号室の扉から廊下に出ると隣の509号室からも人が出て来ているとこ

 ろだった。


  出て来たのは一人で眼鏡を掛けた少し童顔な生徒だった。


  アルジークは見知った相手だったのか近づいて少し会話をしてからアスランの

 元にその眼鏡を掛けた生徒も連れて戻って来た。


「アスラン紹介するよ。彼は僕の父と同じで東方軍に所属している兄を持つ『リロ

 ドス・ベレルドール』僕等と同じ1年だ」


「ベレルドールって君の父君と同じで『東将の七本刀』と称される方々の一人であ

 らせられる〝あの〟ベレルドール〝大佐〟のことだよね」


  アスランの父であるリヒトールもリロドスと呼ばれた少年の兄も両人共に去年

 東方軍であった改革の後に東方軍司令長官であるリグルドに側近として指名され

 た中で最もリグルドに信頼されそして実績を残している七人の者達。彼等を総称

 して『東将の七本刀』と呼ばれている。


「そのベレルドールで合ってますよアスラン君。改めてリロドス・ベレルドールで

 す呼びずらいのでリロと呼んでください」


  アスランはリロとも握手をするとリロも食堂に向かう途中だと言うので三人で

 食堂へと向かった。


  ――――――――――――――― 大食堂 ―――――――――――――――


  食堂には既に人が来ていて各々同じ部屋の生徒や知合いの生徒等と談笑しなが

 ら食事している。


  2年や3年は授業が始まるまで学園に居ないので今居るのは実質的に1年だけ

 となる。


  アスランはアルとリロの二人と共に食堂内を見渡した時に見つけたヴィスカの

 ところへと昼食が載ったトレイを持って近づいて行く。するとヴィスカも気付い

 たのかアスラン達の方へ手を振ってきた。


  三人は近づいて初めてヴィスカが座っている席の異常性に気付いた。ヴィスカ

 は六人程が座れる食卓で彼女を含めて二人だけで食事をしていた。


  それは良い。その周りが異常だった彼女達の周りの席には誰も座っておらずそ

 の場所だけ別空間の様に感じられた。


  その原因は三人共直ぐに分かった〝ヴィスカと一緒に座っている人物〟が原因

 だとその人物が赤髪だから余計にハッキリと分かった。


  アルとリロは若干如何しようか考えながら行動を停止しもう一人の連れ人を二

 人揃って見た。


  その連れの反応は・・・・


「やぁ君。赤い髪って事はご両親の何方かが帝国人かい?あっ僕はアスランってい

 うんだ君の隣に座っているヴィスカの幼馴染だよ、よろしくね」


  普通に会話していた。


  これには比較的帝国人への偏見等が少ない東方軍に身内が居る彼等二人ですら

 開いた口が塞がらない状態だった。


  ここは東方では無く王都つまり王国の中心だ。その中に在る士官学校の食堂に

 て馬鹿正直に「貴女のご両親の何方かは敵国の人間ですか?」と遠回しに聞いて

 いる知人の姿を見たら貴方は如何反応するだろうか?


((そんな真っ向から聞くかよ普通っ!しかも初対面の相手に))


  これが今の彼等二人の心情だ。


  長い赤い髪をポニーテールにしている少女の方も一瞬だけポカンとしてから笑

 い出した。


「そんなにハッキリ聞かれたのは初めてよ。私は『リィーナ・フォン・エグルディ

 ス』よ。よろしくねヴィスカの幼馴染さん」


  アルとリロもそんな二人の様子を見て半ば仕方なくその席に同席する事にした


  5人が席に座り終わると先ほど自己紹介をしたリィーナが話始めた。


「それで先ほどの質問の答えなのだけど答えはYESよ。私の亡くなった母が元帝

 国人で父は名前で分かると思うのだけれどこの国の貴族なの私はその父の庶子な

 のよ」


  食事を始めたいのに始める前からある種の爆弾を落とされ固まってしまうアル

 とリロの二人。一度聞いたのであろうヴィスカは我関せずを貫きスープを啜って

 いるが表情からするに「どうしようこの空気?」と思っていることが窺える。


  最後の一人であるアスランはと言うと・・


「なんで士官学校に入ったの君の身形じゃ居ずらくない?」


  さらにズカズカと聞いていた。


(私((僕達の方が今ここに居ずらいのだけれど))居ずらいわよ)


  三人はもう如何にでもなれと思い二人の会話を食事をしながら黙って聞いて

 いた。


「家に居る方が居ずらいわよ。兄弟姉妹達には庶子の中でも母が元帝国人という

 事で何時も虐められていたし家に私の居場所なんて無かったわ。だから士官学

 校に来たのよ。元帝国人だろうが何だろうが共に戦える共に生きられると周り

 の人々に示し自分の居場所を創るためにね」


「成る程ね。そう言えばアルの父君とリロの兄君が居る東方軍には元帝国の軍人

 だった人が一部隊の指揮を執っていると噂で聞いたけど」


  そう言いながらアスランはアルとリロの二人を見てくる。ヴィスカも話され

 た内容に驚き二人を見た。


  アスランは噂の真意を確かめるためにヴィスカはただ不思議そうにそしてな

 ぜかリィーナも凝視された二人は深い溜息を吐くと聞かれた事に答えた。


「その噂は本当だよ。〝東将の七本刀の一人に元帝国軍人の者が居る〟って噂な

 んだけどよく知ってたねアスラン。一様この噂はまだあんまり広がってないと

 思っていたのだけれどね」


「名前は『スカール・ビルディリゴン』。階級は確か中佐だよアスラン君。ただ

 し中佐は王国軍の軍人というよりリグルド中将個人に雇われている傭兵のよう

 な立場だったかな確か・・どっちにしろ東将の七本刀に選ばれている時点で中

 将の信頼は厚いのだろうけど」


  アスランは二人の話を聞きながら「フムフム」と唸りながらも何処から出し

 たのかノートの様な物に何かを書き込んでいる。


  アスランの異様な行動に周りの四人が唖然としているにも関わらず彼は質問

 を続けた。


「因みにそのビルディリゴン中佐には君達は会った事は有るのかい?」


「僕は無いけどアル君は面識があると思うよ」


「ああ。去年の冬って言ってもそんなに月日が経っていないが親父に連れられて

 東方軍の改革で新しくなった要職人同士の親睦会みたいなパーティーに参加し

 た時に少しだけ話したなそう言えば・・リロは風邪で休んでたんだっけあの時

 のパーティー?」


「うん。本当は僕も兄さん以外の東将の七本刀に会って見たかったんだけどね」


「家の親父には一回会ってるだろ」


  士官候補生達の間で噂される今代の偉人とも言える軍人達も彼等からしたら

 身内なので何とも気安く話しやすい話題となっている。


  そんな二人もある意味この場に座っている他の三人と同等か或いはそれ以上

 に異常視されているのだが本人達はまるで気付いていない。


「最後の質問なんだけど、君達が先ほどから話ている東将の七本刀と呼ばれてい

 る存在を見出しその彼等を従えている東方軍司令長官リグルドとはどんな人物

 かな?」


  その質問をすると二人は黙って考え始め少し時間が過ぎてからアルが話始め

 た。


「僕は会った事が無いから親父から聞いた話や噂を基準に考えての評価だけどあ

 の御方は〝化物〟だと僕は思う」


「僕は兎に角〝強欲〟の一言に尽きるかなあの御方への評価は・・僕も会った事

 が無いのだけれどね」


「二人の評価を聞くと〝魔王〟って言葉がしっくりしそうな御人だね」


  男子三人の話を聞きながら同室の女子二人はただ漠然とこう思った。


((貴方達、一様士官学校内ですよココ・・入学と同時に不敬罪で捕まりたいの

  かなこの人達))


  そんな呆れられた様な視線を二人から向けられながらも三人は今軍に居る名

 将と言える将軍等の話で盛り上がっていた。


  昼食が終わってみれば異常な目で見られているのがリィーナだけではなく自

 分達全員である事に気付いた5人はそそくさと食堂を後にした。


  若干一名歴史好きの馬鹿が自分達に向けられている視線を勘違いをして食堂

 の真中で講演を始めようとしていたがそれは他の四人により無事阻止された。


  余談ではあるがアスランが途中から書いていたノートは自身が体験した事で

 後世の歴史に残りそうな事等を簡素に記録するためのノートだと後に四人は聞

 かされた。


  この5人の経歴や集まりを見て学園関係者の多くが彼彼女等の存在があるた

 めに今年の新士官候補生達を『異端の世代』と呼ぶようになる。これはこの世

 代の呼び名であると同時に彼等5人を総称する言葉でもある。


  この食堂での出会いから彼彼女等はちょくちょく関わりを持つ様になりそれ

 は彼彼女等が思っているよりも永く続く事になるとはこの時の彼彼女等はまだ

 知らない。


  第1章 第1部 【出会い】と【入寮】(完)


 


  



  





  



 


  

第1章の第1部は原作に登場した主人公達の学園生活を書くつもりです。

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