喧嘩
(注意;この話は主人公 鶴井 優歩の視点でお送りします。)
(注意;主人公はお互いの人格を妹、弟と呼びます。
幼なじみの雪彦、佳夏はお互いを姉貴、お兄ちゃんと呼びます)
(男子校舎にて)
今日は朝から幼なじみの雪彦の機嫌が悪い。
ずっとムスッとしているのだ。
聞くと双子の姉と喧嘩をしたらしい。
「いやぁさ、昨日姉貴と定期連絡したんだけどさぁ。
始めは優歩(主人公)のことで盛り上がったんだけどさ、次第に普段の生活態度のことになってきて、ちょっと頭に来てさ。
何であそこまで言われなきゃいけないわけ。
常日頃、俺を監視しているわけ?
今は一緒に暮らしてないくせに何であそこまで言われなきゃいけないのか訳わかんない」
僕がちょっと聞いただけで出るわ出るわ。
不満が爆発なのだ。
ちなみにこの双子の兄妹は僕を世話する係でもあるので定期的に連絡を入れている。
でないと僕は男子校舎、女子校舎共に把握など出来ない。
この兄妹がいてこそ僕の学園生活が成り立つのだ。
基本的にこの学校は男子、女子の交流はない。
校舎も別々だ。
寮も男子寮、女子寮と別れている。
校則で原則肉親以外は異性と電話をすることも禁止されている。
僕も男子の時は女子との接触は禁止されている。
だからこの兄妹は僕にとって女子校舎、男子校舎の情報を得る唯一の情報源だ。
この兄妹には感謝しきりだ。
話を戻すと雪彦はまだ双子の姉の文句を言っている
それを見て僕は思わず
「いいなぁ〜」
と呟いた。
雪彦は
「どうしていいんだよ?」
と聞いてきた。
僕は
「兄妹同士こうやって喧嘩できるのはうらやましいなと言うこと。
僕にはとうてい出来ないことだから」
雪彦は
「何がいいもんだよ。
しかも異性の兄妹は面倒くさいもんだよ。
電話をすれば喧嘩ばかりだし」
僕は
「それがうらやましいんだよ。
だって僕は妹と喧嘩が出来ないんだから。
知っての通り妹は僕の頭の中。
僕のもう1人の人格。
もちろん性格だって違う。
しかし妹の一挙手一投足、その時に考えた心の中まで僕は記憶している。
でも基本的に考え方が全然違う。
僕が納得できないことも多い。
それを妹にぶつけようとしても僕はそれが出来ないんだ。
確かに異性の兄妹は理解できないことも多い。
でも僕は議論することが出来ない。
なぜなら僕の人格が起きている時は妹は眠っているから。
妹が起きている時は僕は眠っている。
一生会うことの出来ない兄妹なんだ。
だからお前たちがうらやましいんだ」
(場面は女子校舎に移ります)
「私は弟のことが理解できない。
まぁ、基本的に男の子の思考が理解できないんだけど。
でも性転換するとはいえ同じ体を一生共有しなければならないの。
こればかりは運命だから。
だからあなたたち姉弟に出会えて本当に幸せなの。
私たちを理解してくれる唯一無二の存在だから。
あ、あなたたちは双子だから2人。
だから唯一無三の存在と言うべきね」
と言うと私は佳夏に微笑みかけた。
佳夏は少し照れたように見えた。
佳夏は
「確かにお兄ちゃんとは会うと喧嘩ばかりだけどそれでもお互いを信頼しているの。
もちろん優歩のことも信頼している。
信頼していると言っても心配も多いけど。
だからつい文句を言っちゃうの。
でもそれはお兄ちゃんも一緒だからお互い様。
しかし、優歩は私たちが喧嘩すること自体がうらやましいのか。
そんなことは思ってもみなかったわ。
でも今の話を聞くと優歩も苦労してきたのね。
それに優歩は弟さんとは今まで一度も会ったことはないのね。
弟さんの魅力は私はいっぱいしているからこれからは弟さんのこと一杯話してあげるね。
私の大好きな人だから」
私はそれを聞くと非常にこそばゆかった。
弟と話したことはないが佳夏が弟の一番大事な人であることは知っていたから。
ちなみに私は雪彦が大好きだ。
私たちと幼なじみの姉妹である佳夏、雪彦は婚約者同士である。
この学校を卒業したら結婚する約束をしている。
佳夏、雪彦はこの学校を卒業したら進学をするらしい。
私たち姉弟は進学をするつもりはない。
ある意味就職をするつもりだ。
この学校を卒業したら彼女たちを養わなければならない。
私は今までの恩返しを一杯しなければならないと思っている。
では何処に就職をするつもりなのか。
矛盾するようだが実はもう私たちは就職をしている。
性転換症である私たちにピッタリの職業だ。
ヒントを言うとある意味自営業みたいなもの。
私たちは会社に勤めているわけではない。
なんか矛盾しているように思うかもしれないが詳細は後日話したいと思う。
とにかく私たちはこの姉弟に感謝しっぱなしだ。
私たちのためにこの学校を選んでくれて今も私たちのサポートしてくれる。
だから私たちはこの姉弟を一生幸せにしなければならないと心に誓った。