婚約者〜前編〜
(注意;この話は主人公 鶴井 優歩の幼なじみ亀井 雪彦の視点でお送りします。)
僕は鶴井 優歩(主人公)の幼なじみだ。
彼?とは物心ついた頃から姉貴と一緒に遊んでいた。
親友という奴だ。
彼?が性転換症ということで好奇な目で見られよくいじめられもしていた。
そして僕ら兄妹ははその度に助けていた。
そういったことが重なり僕ら兄妹は彼?の面倒を見ることになった。
僕ら兄妹は彼?の面倒を見ることが決して嫌ではなかった。
むしろ進んで面倒を見た。
彼?がとても良い人間だと知っていたから。
今では彼?が良き親友であり恋人である。
ここで1つ断っておくと僕は彼?の婚約者だ。
正式に言うと彼?が女の子の時の婚約者だ。
彼?は男の時は女の子を愛し、女の時は男の子を愛すいわゆる異性愛者だ。
だから男の時は僕に全く興味を示さない。
しかし、女の時は僕にベタ惚れなのだ。
僕もそんな彼女?が愛おしいのだ。
ていうか、僕は男の時の彼?も好きだ。
僕は彼?の人格に惚れている。
容姿などは関係ない。
もちろん性別もだ。
彼?が初めての男子校舎の登校日、僕は抱きつきたいほど喜んだ。
実際には抱きついてもいないのだけど。
こんな時に女子はうらやましいと思う。
女子は男子以上に同性にスキンシップをする。
恐らく抱きついても変な目で見られることはないだろう。
しかし、男子はそうはいかない。
同性同士抱きつこうものなら周囲から変な目で見られる。
しかも彼?もそういう態度を好まない。
ていうか、男のときの彼?は僕に非常に冷たい。
嫌われてはいないようだが。
どうやら彼?は男の時は友達以上の関係にはなりたくないようだ。
女の時はメチャクチャデレてくるくせに。
もちろん僕ら兄妹は彼?が二重人格なのは知っている。
男の時と女の時では全く人格が違うからだ。
始めはそういう風に演じているものだと思った。
幼い頃彼?に僕は
「男の子の時と女の子の時と性格を使い分けているのはしんどくないの?」
と聞いたことがある。
彼?は
「はぁ!?
使い分けてなんかないし。
だいたい女の子の時って何だよ。
僕は僕だし。
妹は妹だし。
ただ同じ体を共有しているだけだし。
そんなことも分かってなかったの?」
と彼?を怒らせてしまった。
今となっては理解できているけど彼?には申し訳ないことを聞いてしまったと今でも反省している。
だから、男の時の彼?は僕をなんとも思っていない。(恋愛的には)
しかし、心の通じ合った友という認識はあるようだ。
今でも彼?は困った時に相談に来てくれる。
僕はそのことが非常に嬉しかったりする。
彼?は非常に優秀だ。
男子校舎と女子校舎を行き来しながらも学力や運動能力が優秀ないわゆる文武両道だ。
女子校舎に通っている姉貴もそう言っていた。
彼?が男の時は自分が惚れているのをひいき目で見ても男が惚れる男だと思う。
最初は僕が男友達を紹介していたのだけど心配するのが杞憂なほどクラスに打ち解けている。
僕が寂しいぐらいに。
一応婚約者なのだからいろいろと親密になりたいのに。
前にも言ったが僕は彼?の性別には興味が無い。
彼が男の時も女の時も愛したいのだ。
彼?は特に男の時にそれを異常に嫌がる。
僕は彼?が女子校舎に行っている時は非常に寂しい思いをする。
授業中も上の空だ。
だから成績も非常に悪かったりする。
友達に言わせると彼?がいる時といない時では全然性格が違うらしい。
ていうかモチベーションが違うのだ。
彼?がいる時は僕は言い風に見てもらおうと張り切ってしまう。
大概は裏目に出るのだが
とにかく彼?がいないと面白くないのだ。
僕は彼?を本気で愛している。
男の時も女の時もだ。
幸い男の時の彼?も僕を家族として見ているみたいでいろいろとフォローしてくれる。
そこには婚約者としての愛はないけど。
そして周囲もそんな僕らを茶化してくる。
事情を知っているのだ。
しかし、その時の彼?の目は見れたものではない。
僕を殺意に満ちた目で睨んでくるからだ。
しかし、最近は半ば諦めたような目で見てくる。
そんな彼?に僕はいつも申し訳ない思いでやはり目が見れないのだ。
今週に入って今日は3日目、水曜日だ。
今週はまだ男子校舎で彼?を見ていない。
今日ぐらいにも登校してくるのだと思う。
彼?は性別はその日にならないと分からないと言っていた。
今日来るかどうかは1/2の確率と言うことになる。
僕は彼?が登校してきたらしなければいけないことがある。
それは彼?がいない間に男子校舎で何があったか逐一報告することだ。
みんなの話題についていくために。
そのためにいつもメモ帳を持ち歩いている。
そしてその時間は2人きりになれるとても大切な時間だ。
そして僕は彼に会えることを非常に楽しみに待っている。
今日がその日であることを切に願っている。
そして始業ベルの鳴る10分前に彼?が登校してきた。
僕は彼?に抱きつきたいぐらいに喜んだ。
そして僕は改めて彼?をかっこよくてかわいい存在だと再認識した。