初登校(2学期)
(今回のお話は亀井 雪彦の視点でお送りします)
2学期になってから一週間が経つ。
未だに彼は登校していない。
最初は原稿が貯まっているから登校出来ないと言っていた。
彼は作家を生業としている。
いわゆる学生作家だ。
それなりに売れている作家らしい。
僕は読んだことがないけど。
あ、そうそう僕は夏休み中にチャレンジしたことがあります。
姉貴に訳を言ってBL小説なるものを読むことにした。
それも夏休み中に100冊。
なんとか苦労したけれども制覇しました。
なぜ僕がそれに挑戦したのか訳が有ります。
それは僕がBLの世界を知らなさすぎたこと。
でもそのおかげでかなりディープな世界まで理解出来たと思う。
今の説明ではちょっとよく分からない人もいると思います。
詳しく説明します。
さっきから言っている彼とは鶴井 優歩のことです。
そして彼は僕の婚約者でもあります。
男同士で結婚する訳ではありませんが。
今日日、同性婚が珍しくない時代その関係性も珍しくありませんがそうではありません。
僕は彼曰く彼の妹と婚約しているのです。
彼は性転換症。
しかも二重人格。
僕は元々男には興味が無かった。
現実には今もだが。
だけど彼は違う。
彼は男でもあり女でもある。
そして幼なじみでもある。
僕は彼に一目惚れした。
厳密には性転換した姿にだが。
そして彼の世話をする度にその思いが強くなった。
そして今は男の姿も好きになろうと努力している。
彼には全く相手にされていないが。
ここで少し不満を言わせてもらう。
彼は同性に対しては冷たい。
クールを気取っているのかも知れないが。
一応婚約者なんだから僕には優しくして欲しい所なんだが。
話を戻します。
結構横道にそれたので。
とにかく2学期が1週間過ぎても男子校舎に彼は登校してこない。
姉貴に聞くと女子校舎には登校しているらしい。
彼の性転換はランダムでその日にならないと性が定まらない。
幸い今日は朝に電話があった。
もちろん、彼からの電話だ。
ここからはゆうあと呼ばしてもらうが。
ゆうあは
「今日登校するから悪いけれど1週間分のノートを持ってきてくれる?」
と電話越しに聞いてきた。
僕は喜んで用意すると答えた。
ゆうあは
「それは有り難いけど登校したらベタベタしないでよ。
いいか、今(男の時)の僕は君とは友人であって恋人ではない。
本当にうっといから頼むよ」
とりあえず返事をしたが僕はゆうあの意見を聞き流した。
到底その意見は聞き入れるつもりはない。
こっちとら男同士の恋愛を夏休み中に猛勉強したのだ。
それを無にする気も無かった。
彼が教室のドアを開けた時、僕は彼に抱きついた。
何せ久しぶりに会うのだから。
夏休み中は何かと理由を付けて遊んでくれなかった。
妹(彼のもう1つの人格)とは何度も会ったけれど。
彼の顔を見るのは本当に久しぶりだった。
彼は基本的にインドア派だ。
休みの間は漫画、小説、ゲーム三昧だそうだ。
そうすることで頭の中を物語でいっぱいにするそう。
対して妹はアウトドア派。
外で遊ぶのが大好きな女の子だ。
小説家なのに本を読んでいる所はほとんど見ない。
彼は
「妹は本当に本を読まない。
自分の専門分野でも。
それでたまに妹からBL小説を読めと急かしてくる。
自分が読書苦手だからって。
僕と妹は記憶を共有しているんだ。
僕の経験は妹の経験としても蓄積される。
だから嫌なことは全部僕に押しつけてくる」
こう愚痴っていた。
今日はゆうあとイチャイチャ出来る日。
もちろん教室内は節度を持ってやっている。
大体、クラス内で僕とゆうあの仲を知らない奴はいない。
ゆうあは結構嫌がるけど僕はお構いなくイチャイチャした。
ゆうあは天才だ。
僕は1週間分のノートを彼に差し出すと彼は黙々と作業し始めた。
このときのゆうあにはちょっかいをかけてはいけない。
彼の真面目モードはいつ観ても凜々しい。
と言っても彼は僕のノートを書き写すことはない。
ひたすらノートを見続ける。
僕自身は黒板に書かれていることをそのまま書き写しているのだがそれを彼はひたすら見続けるのだ。
彼は完全記憶能力者だと自称している。
そういえば授業中ノートを取った所を一度も見たことがない。
最初は不真面目なだけだとも思っていた。
でも彼が受験勉強をするように名手気づいた。
彼は一度見た問題を二度と間違えることはない。
それどころか気づけば全ての教科書を宙で言えるようになっていた。
もちろん、この学校でもトップクラスの成績だ。
中学校での成績がなんだったのかこっちが聞きたいぐらいに彼は高校生になって変わった。
もちろん、教科書は彼の頭の中に全てインプットされている。
問題集の問題と答えも全てインプットされているので彼がこの学校に入ってから勉強に困ることはなくなった。
ただ彼のインプットの仕方は独特だ。
非常に読むのが遅い。
僕が用意したノートは1日がかりで読むそうだ。
しかもなぜかニヤニヤしながら時には怒ったり泣いたりしている。
彼のインプットしている時の感情の起伏はとても激しい。
しかし、今数学のノート読んでいるのだがなぜそんなに感情を揺さぶられるのかかなり疑問だ。
彼はなんにでも感情移入出来るのが自慢だとよく言っている。
それは妹と唯一共通しているのだとか。
僕はそんな彼を今日も愛おしく思っています。




