8月31日
(今回の話は鶴井 優歩の視点でお送りします。
ついにこの日が来てしまった。
今日は8月31日。
そう、野菜の日だ。
ってそうじゃない。
野菜の日なんてどうだっていい。
改めて今日8月31日は夏休み最後の日だ。
昨日まで妹が散々遊びまくっていた。
しかも昨日までの一週間、プール行ったり遊園地行ったりカラオケ行ったり。
本当にいい気なもんだ。
ちなみに僕たちは二重人格。
日によって性別と共に人格も変わる。
一応、記憶は共有するが。
つまり昨日までの一週間は性別、人格共に女だった訳だ。
そして女だった時の人格を僕は妹と呼んでいる。
そして妹は極端に言うと遊び人。
勉強よりも常に遊びを優先する。
そして僕はそのとばっちりを受ける。
妹はとにかく勉強を嫌う。
つまり、夏休みの宿題を全くやっていないのだ。
そして妹の宿題を僕がやる羽目になる。
結局は僕らは一心同体。
妹のやることは僕の責任になる。
本当に毎年の尻拭いに憂鬱になる。
そしてもう1つ嫌なことがある。
それは編集の人が来ていると言うこと。
それも男女同時に。
僕はGL 、つまり百合作家だ。
この一週間、僕の人格は眠っていたのだから当然その期間は書けない。
僕の人格が眠っている間に締め切りはとうに過ぎたのだという。
当然、今日中に僕の小説を書かなければならない。
僕が書いているものは百合ハーレムもの。
夏休みの宿題に追われている僕はそっちの妄想にも張り巡らさなければならない。
ちょっと精神状態が不安定だ。
問題は女性の方の編集さん。
妹の人格の時の編集さんだ。
ある時、妹が編集さんに対してこう言ったのだそう。
「私って日によって性別が変わるじゃないですか。
私の場合、人格も変わっちゃうんだけど1つ利点があるの。
私たち(僕も含めて)っていわゆる二重人格でもあるんだけど普通の二重人格って人格ごとに記憶が決まっていて共有することがないらしいの。
でもね、私は弟(僕)の記憶をはっきりと受け継ぐことが出来るの。
弟もそうなんだけど。
確かに考え方とかはまるで違うけど私の頭の中で小説が出来上がっているとしたら弟にも私の小説が書ける訳。
ストックは大分先まであるから私の人格が眠っている時は弟によろしく言っといて」
そんな妹のせいで僕はBL 小説を書く羽目になっている。
とりあえず僕は夏休みの初めに自分の宿題は書き終えている。
小説は熟考する遅筆タイプでいつも締め切りギリギリだ。
妹は僕とは逆で宿題は後に残すタイプ。
そして小説はその場の雰囲気でインスピレーションで書くタイプ。
そのくせちゃんと設定が出来ているのだから凄いが。
そして、確かに頭の中にストックが何十話もある。
よくこれだけ思いつくなといつも感服している。
しかし、僕はあくまでもGLが好きでBLが苦手だ。
そんな僕がBL小説を書くなんて苦痛でしかない。
今、僕は精神的に非常に不安定だ。
宿題を1ページやり終えるごとに百合小説の原稿を一枚、BL小説の原稿を一枚仕上げなければならない。
とにかく切り替えが大変なのだ。
しかもBL小説に関しては女性の編集さんに
「妹さんはそういう言い方はしないと思うのですが」
とか
「もっとBLを愛して下さい。
でなければこんな書き方にはならないはずですが」
とか書く度に注意される。
だからBLの方が百合小説の倍時間がかかってしまう。
それに僕の遅筆のせいで男女2人の編集さんが喧嘩し出すし。
本当に辛い。
それにしてもBLはどういった気持ちで書いた方が良いのだろうか。
そもそも僕はBLには何の興味も無い。
さっきも言ったけどどちらかというと苦手な方だ。
大体、男を好きになるという気持ちが分からない。
そんな僕がどうしてBLを書かなければならないのか、本当に矛盾していると思う。
一応、妹が考えた小説のストックを忠実に再現しているつもりだがそれでも妹が書いているものとは大分違うのだそう。
小説を書いている人は分かる人がいるかも知れない。
僕の場合、頭の中で文章を組み立てているのではなく映像が展開されている。
それは妹も同じだ。
つまり、僕は妹の文章を読んでいる訳ではない。
妹が作ったわかりやすく言うと映画を1本見ている感じなのだ。
よく想像して欲しい。
興味の無い映画を無理矢理見させられてそれを文章に起こさせられるのだ。
それは苦痛以外の何物でも無い。
それに妹はいくらでも書けるくせに締め切りまで遊ぶ癖がある。
早めに書いてくれれば有り難いのだが妹は決してそうはしない。
妹はいざ書くとなれば1時間で超大作が書けるくせに。
そしてそのしわ寄せは僕に来る。
当然、これらのことは1日では終わらない。
でも僕ら性転換症にはある特徴がある。
ちょうど12時を過ぎると突然眠気が襲ってくる。
それは抗いようのない眠気。
そして眠っている間は性別が不安定になり起きた頃に確定する。
つまり何が言いたいのかというと僕は徹夜が出来ない。
残りの仕事は明日と言うことになる。
次の日、僕は目が覚めた。
どうやら性別は昨日と同じ男のようだった。
今日は始業式の日。
でも、原稿は出来上がっていない。
宿題も。
一応、仕事が出来ないと学費も支払えないのでこういうときは仕事優先になる。
学校に今日登校出来ないことを連絡しとりあえず原稿の完成を目指す。
今日も長い1日になりそう。
とにかく原稿地獄から抜け出したい!!




