海
(北沖 和陽の視点でお送りします)
ようやく、夏休み。
僕の初めての高校生活にやっと一区切りついた。
これから大型の休みだ。
僕は性転換症であることを中学まで周囲に隠してきた。
だから僕の同級生は僕がそれであることを知らない。
実際、僕がこの学校に通っていることを内緒にしているし。
この学校では何もかもが初体験だ。
この学校は男子校と女子校とで別れている。
僕が男子の時は男子校だし、女子の時は女子校に。
特に女子校での初体験は刺激的なことばかりだ。
女子の制服はもちろん、下着ですら僕は着たことがなかった。
この学校に入るまでは。
だから女子校にいる僕はとても場違いな気がして本当に僕がいて良いのだろうかと言う気もしていた。
でも慣れというのは怖いもので今では近くで女子が着替えても何も思わなくなってしまった。
最初はあんなに慌てていたのに。
でも今日からはしばらく女子とも会わない、引きこもり生活だ。
貯まっていたラノベやマンガ、小説を読み漁りテレビゲームをしまくるぞと意気込んでいる。。
僕は少年向きのそれらを好んでいたが最近は少女向けのものまで手を伸ばしている。
今日は午前中は乙ゲーに勤しみ、午後はギャルゲーに勤しむ予定だ。
乙ゲーに関しては女子の友達の影響も多分にありはまっている。
でもリアルの男子を好きになることは絶対にない。
あくまでも僕は女子が好きだ。
と言い聞かせて乙ゲーをするつもりだ。
沼にはまっているかも知れないが。
僕がテレビゲームのセッティングをし終えた時、女子校の友達が僕を訪ねに来た。
僕が慌ててドアを開けると
「よかった。
本当に女の子だ」
と言ってきた。
今日の僕の体は女子。
友達はなぜかそれを確かめに来たのだ。
そして
「今日は遊びに誘ったの。
かず(僕)は高校生になって初めて女子として生活していると聞いたわ。
だったら女子高生として夏休みを満喫しなきゃ」
と言ってきた。
僕が戸惑っていると別の女子が
「やっぱりと思ったけど私服ダサいわね。
ていうかもしかしたら男子の服着てる?」
僕が頷くと
「体が女子の時は女子として楽しまなきゃ。
今日、女子の服も買ってあげる」
と勝手に話が進んでくる。
あっという間に僕が遊びに行くことが決まった。
僕の同意もなしに。
最初に行ったのが海だった。
まさかと思ったが僕も水着に着替えることに。
「無理、無理!!
水着に着替えるなんて絶対に無理。
大体、布地が少なすぎるよ。
こんなの着れないよ」
と僕が叫ぶと
「男子の水着の方がよっぽど(布地が)少ないじゃない。
水着ぐらいで騒がないでよ」
と僕を説得する。
「更衣室に入るのが怖いのなら私たちが着いててあげるから心配しないで」
と言われ無理矢理着替えさせられた。
実は僕はカナヅチ。
だから海に入る時は浮き輪が必要。
僕の背丈も相まって小学生によく間違われる。
ていうか今、浜辺で迷子に間違われてちょっと困っている。
「お嬢ちゃん、ママは何処かな?
一緒に迷子センターに行こうか」
何か係員の人によく勘違いされる。
その度に一緒に来た女友達が
「すいません、この娘は私の妹なの」
と言って助けに来てくれる。
それにしても妹って。
同級生だろう。
と心に思いながら感謝していた。
と言うのもこれで3回目。
いい加減疲れる。
「大丈夫、背は低いけれど胸は成人並に大きいから。
ていうか、胸だけなら私たちより大きいよ」
と謎のフォローを入れられた。
午後は僕の服選び。
最近流行のショップへと行った。
ここの店は背が低い人専門のお店だそう。
決して小学生用のお店ではないと行く時何度も言われた。
中に入るとなるほど僕と同じような背丈の人がいっぱいいる。
ていうか、小学生ではないだろうか。
そういう疑念を抱きつつ僕は品物を見た。
洋服はめちゃくちゃカワイイものばかり。
ファンシーというのだろうか。
とても僕が着るものとは思えない。
それにしてもピンクい。
上も下もピンクい。
これを普段着とすればめちゃくちゃ落ち着かない。
もちろんピンクばかりではないがなんか女の子って感じの服ばかり。
もちろん、僕の意見は通ることなく周りの女子たちが勝手に決めていく。
そしていつしか僕のファッションショーが始まっていた。
僕は友達に言われるがまま服を着ていく。
そして着替える度に
「カワイイ!!」
と言う黄色い声が。
なぜかギャラリーも増えているような。
とにかく余計なことは考えずに僕はひたすら着せかえ人形と化した。
洋服を一通り買い終えると次は下着だった。
「下着も同じのしか見たことないしこの際可愛いのを買おうよ」
と女子だけで話がまとまり僕の意見はもはや通らない。
そして下着も彼女たちの好みのものが揃えられた。
良かったのは水着も服も下着も彼女たちが出してくれたこと。
つまり、僕の懐は全く痛んでいない。
女子におごられる事なんて今まで一度もなかった。
ていうか男にもおごられたこともないけど。
多分、クラスメートたちは僕を心配してくれたのだろう。
女子の世界をたっぷり堪能出来た。
思えばクラスで話すことがあっても放課後、女子と遊びに行くことは今までなかった。
初めて女子と遊ぶことが出来た。
もちろん、僕も女子として。
また1つ女子として成長出来たと思う。
明日はどっちの性別になるか分からないがとりあえず家に引きこもろうと思う。




